外出禁止のイタリアから世界へ送るアドバイス──「バカはやめて家にこもろう」

英国人の友人が人の多いバーで撮る写真を投稿しているたびに私はこう思う。「僕もかつては君だった」
Giacomo Stefanini
Milan, IT
AN
translated by Ai Nakayama
Tokyo, JP
Giacomo Stefanini in quarantine
Giacomo Stefanini.

WHOが新型コロナウイルスを「パンデミックとみなせる」と宣言し、英国でも3月中旬から一気に日常生活が変貌した。16日にはボリス・ジョンソン首相がコロナ対策を発表し、不要不急の他者との接触を避けること、パブやレストランなど公共の場に近づかないことなどを国民に呼びかけた。それでもハーフパイントのビールを一杯飲みにいくくらいならいいだろう、と思っているあなたに、VICE Italyの記者、ジャコモ・ステファニーニが警告する。

コロナの騒動が始まった当初、私は慎重に行動していたものの、冷静さは失っていなかった。初めてミラノが封鎖された2月23日には、DIYの会場で行う予定だった私たちのバンドのライブ最終日がキャンセルになった。その数日後、私はバンド練へ向かった。雰囲気はいつもと違い、メンバー内でビールの瓶を回し飲みすることもなかった。それでも私たちはそんな空気を笑い飛ばしていた。ちゃんと外出した、と言えるのは、2週間以上前の土曜のことだ。ディナーで集まりお酒を飲み、だけどお互いの距離を保って、一晩中ウイルスのことについて話していた。

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私は姉に電話した。私の姉は看護師で、ロンバルディア州(現在イタリアでもっとも新型コロナの感染者数が多い州だ)の小さな病院の緊急治療室で勤務している。昔から、健康に関して私が何か気に病んでいると、彼女がいつだってその心配を吹き飛ばしてくれた。「私は症状を知ってるから。あんたのそれは、ただあんたの身体が弱っちいことを示してるだけ」(姉というのはみんなこういう感じだろう)

しかし今回電話で話した姉は、実に深刻だった。「(状況は)良くない。人工呼吸器も充分じゃないし」と姉はいった。「今日はふたりの患者のどちらを優先するか、選ぶ必要に迫られた」。病院で治療を受けているのは高齢者だけではない。イタリア各地のICUで、30代の患者も収容されている。

私たちの両親は70代と80代。だから私たち姉弟は、両親には会っていない。いつになったら安心して会えるのかもわからない。ここまではっきりした状況においては、個人個人が判断していいことでもない。とにかく私たちは、できる限り家にこもっているほかないのだ。もちろん私も週に一度は食料品を買いに出かけるが、レジは長蛇の列で、店の従業員たちも大きなプレッシャーに晒されていることがわかるのでストレスフルだ。しかも、スーパーマーケットに近づいても、人と人との距離がかなり開いているので行列ができているとわからない。マスクや手袋を着けたひとたちが、ただおもむろに立っているだけのように見えるのだ。

今のところ、外出時に警察に質問されたりしたことはない。先週末引っ越しをしなくてはならなかった私は、レンタカーで国を移動しているかのように見えたはずなので、警察に捕まらなかったのは幸運だった。イタリア全土で2万人を超えるひとびとが、適切な理由もなく外出していたとして違反切符を切られている。私の友人も、何人かは私服警官に怒鳴られたり、質問されたり、身体検査されたりしている。もし他人との接触や、人混みを避けるよう訴えるひとたちの声を早めに聞いていたら、きっとそんな面倒なことにはならなかっただろう。

私は実に幸運だと思う。パートナーといっしょに暮らしているから、少なくとも彼女には毎日会える。友人には、突然恋人と遠距離になってしまったひとも多い。それに、私は在宅勤務ができる。この4週間も在宅で働いてきたし、給料も全額もらえる。たとえばタトゥーアーティスト、ミュージシャン、バーテンダー、コンサートのプロモーターなど、在宅勤務ができない友人たちには、仕事もセーフティーネットもない。また、ガソリンスタンドや工場で働く友人たちは、職場に行かなくてはならず、そこでウイルスに晒されている(若者の死亡率は低いというが、それでも重篤な症状が出る場合がある)。

COVID-19に関していえば、イタリアは英国よりも3週間早かった。変な気分だ。新型コロナに関する英国のミームやジョーク、報道などを見て、私たちは自らを省みることができる。英国人の友人が人の多いバーで撮る写真を投稿しているたびに私はこう思う。「僕もかつては君だった。でも今は、毎晩時間を潰すための新しい方法を探して、仲間たちを恋しく思っている。携帯電話が鳴るたびに、家族や友人たちの『コロナに感染した』という連絡じゃないことを祈っているんだ」と。

This article originally appeared on VICE UK.