わずか10歳にしてタトゥーアーティストとしてデビューしたNOKO。日本のタトゥーカルチャーは異常なまでの抑圧に苛まれているが、そんな環境は意に介さず、タトゥーをただ単純に心の底から楽しんでいる彼女に話を聞いた。
Fixer By Yurina Ishibashi

10歳のタトゥーアーティスト〈NOKO〉。「大人になってもタトゥーをやってたいな」

わずか10歳にしてタトゥーアーティストとしてデビューしたNOKO。日本のタトゥーカルチャーは異常なまでの抑圧に苛まれているが、そんな環境は意に介さず、タトゥーをただ単純に心の底から楽しんでいる彼女に話を聞いた。

日本におけるタトゥーカルチャーを取り巻く環境は、『ヤクザ、ダイバシティー、インバウンド!! タトゥーと温泉問題の行方』で紹介した通り。

そんな日本のタトゥー事情にも関わらず、世界最年少だろう日本人タトゥーアーティストがいる。その名はNOKO。彼女の父親は世界的にも著名なタトゥーアーティスト、ガッキン(GAKKIN)。3年前、大阪からオランダのアムステルダムに移住したのを機に、わずか10歳にして、タトゥーアーティストとしてデビューした。

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アムステルダム時間の、日曜日の午前中。お団子ヘアに前髪パッツン。大振りのイヤリングに、総柄のニットを着たNOKOちゃんにスカイプで話を聞かせてもらった。

父親がタトゥーアーティストであるため、タトゥーが身近な環境で育ったことは容易に想像できる。「父さんがタトゥーを入れてるのを、はじめて見た記憶はないけど、多分赤ちゃんのころ(笑)」

タトゥーをはじめたのも両親の勧めから。「ママと父さんが、NOKOの描いた絵が上手いって褒めてくれて、タトゥーもしてみたらって。それではじめたら楽しくて。確か8歳くらいのときかな。オランダに住みはじめたころです」

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はじめてタトゥーをした日のことを聞くと「それまでは鳥の絵とかネコの絵とかを描いていて。鳥は日本に住んでいるときに〈こまじろう〉って文鳥を飼っていたから、こまじろうを描いてて。はじめてのタトゥーもこまじろう」と答えてくれた。ちなみに、こまじろうは、オランダに連れてこれず、今は祖父母の家で飼っている。

「はじめてタトゥーをしたのは、父さんだったから、あんまり緊張しなかったけど、はじめてお客さんにタトゥーをしたときは、ちょっとだけ怖かったし緊張した。NOKOはラインを引くのが遅いし、ガタガタになったりするときがあるから。あとで残るし、間違えたらやり直せないし、今でも緊張してます。でも色塗るのは間違ってもやり直せるし、ごまかせるから楽しい(笑)」

タトゥーアーティストのエスター(Esther)から貰ったジョン・ジェームズ・オーディボン(John James Audubon)の画集『MASTERPIECES』を参考に描くことも多い。「いっぱいポーズとかが入ってるから好き。いろんな種類の鳥を描いてあるからすごいなーと思って」

彼女のタトゥー作品のもうひとつの特徴がネコ。この日のインタビュー中には、隣に住むクッキーが姿を現した。「ネコは飼ってないけど、描きやすいし、可愛いから。なんか、最初にNOKOがネコを描いたときに、お客さんがそのネコのタトゥーを入れて欲しいって言ってくれて、そしたら、みんなNOKOのネコが欲しいってどんどんなってきて、それからネコを描くのが楽しくなった」

リボンや花などは、彼女が描きたいものとは少し異なる。8歳まで過ごした日本で観ていたプリキュアなどのアニメの特徴である薄紫、淡い黄色、ピンクなどの色も好きだったそうだが、父親の影響で、黒が主体の絵が好きになっていったという。

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こちらのタトゥーはNOKOが8歳のときに手がけた作品

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こちらのタトゥーはNOKOが10歳のときに手がけた作品

彼女の作品からは、日本の伝統や色彩が感じられる。「ママと父さんの影響が混ざってるかも。ママも色々手伝ってくれるから」。尊敬するタトゥーアーティストを尋ねると、父親以外にもサーシャ・ユニセックス(Sasha Unisex)ニッサコ(Nissaco)を挙げてくれた。「父さんは、お客さんの背中に大きいのを入れててすごいと思う。NOKOは小さいのでも、すごく疲れるから。サーシャは絵も可愛いし、色とかいっぱい使ってるから、すごいなーって思う。ニッサコさんは、細かい線とかキレイにまっすぐに引けるからすごいと思う」

普段はオランダの学校に通っているため、彼女のタトゥーアーティストとしての活動は、主に土曜日がメイン。家から自転車で10分ほどの場所にあるガッキンのスタジオが仕事場だ。オランダ人以外にもイギリス人のお客さんも多く、英語でコミュニケーションをとって仕事をしている。

タトゥーを入れているひとについては、どう思うのだろう。「顔とかにタトゥーが入ってるひとは、ちょっと怖いけど、話しかけたら優しいひとが多いなとは思う。日本やったらタトゥーが入ってると、ちょっと悪いひとみたいに思われるけど、オランダやったらタトゥー入ってても、変なひとだと思われないから。学校の先生とかお医者さんとかも普通にタトゥーが入ってたりするから。NOKOは、まだタトゥーが入ってないけど、ちょっとは入れたいけど、そんなにめちゃくちゃいっぱい入れたいとは思わへん。温泉とかプールとかNOKO好きやから、日本だとタトゥー入ってるひとが、なんで入ったらあかんのかなって思う。NOKOが大人になったら、温泉とか入れるようになったらいいのになーって」

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NOKOちゃんは、他にもいろいろ答えてくれた。「学校の友達がK-POPを好きだから、最近好き」「学校の授業では、何かつくってるときが楽しい」「フィリピンとイランとオランダのこと友達になった」「〈せなけいこ〉の絵本が好きだったの忘れてた」「お寿司、特にサーモンが好き」「狐とか狼とか動物が描きたいなって思う」「NOKOが大人になってもタトゥーをやってたいな」

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