「評判の良い施設でも、問題発生率が30%に及ぶことはあまり知られていません。しかも、そのうち多くが海外での施術です」と説明するのは、ロンドンのアングリア・ラスキン大学美容外科教授で、英国美容外科協会(Association of Plastic Surgeons)会長のジム・フレイム(Jim Frame)博士。美容外科の専門家であるフレイム博士も、SNSの流行や若い女性への影響、メディカルツーリズムへの影響を認識している。とはいえフレイム博士は、美容整形をネガティブに扱う報道には懐疑的だ。「私の実感としても、若い女性の間で隆鼻術は流行しており、メディアの力を感じています」と博士。「私は、英国のリアリティ番組『The Only Way Is Essex』に出演していた女性の施術を担当しました。わずか数週間後、彼女はもう国営テレビに出演していました。テレビに映る彼女からは、手術で得られたよろこびがにじみ出ていましたね。多くのひとが同じように感じていると思います」若い女性たちへの影響力を有しているすべてのひとにそれなりの責任があるし、闇に包まれたInstagramマーケティングにも大きな責任があるはずだが、実際は責任感のかけらもないのが現状だ。「Instagramで、身体醜形障害を患っていると思われる女性たちを目撃しました。彼女たちは手術を重ね、私からすれば〈普通〉とはほど遠い容貌になってしまっている」とラム博士。「彼女たちはこれからも手術をしていくのでしょうが、そのさいのリスクをまったく考慮していません。美容整形のプロモーションとしては完全に間違っていますし、弱い人間が犠牲になっているんです」ただ、悪いことばかりではない。モラルを飛び越えた世界から生まれた美しいストーリーもある。たとえば、2016年に逝去したイヴォ・ピタンギ(Ivo Pitanguy)医師はブラジルの美容整形の権威で、数々の著名人の施術を担当し、ブラジルを美容整形大国へと押し上げたことで知られる。彼の神がかった施術を求め、アングラ・ドス・レイスにあるプライベートアイランドを訪ねたとされるのは、ジャクリーン・ケネデイ(Jacqueline Kennedy)、エリザベス・テイラー(Elizabeth Taylor)、ソフィア・ローレン(Sophia Loren)をはじめとする超セレブたち。しかしピタンギ医師はセレブだけではなく、大きな火傷や奇形を患う何千人にも及ぶ女性たちの施術を無料で引き受けた。完璧な容姿へのこだわりから、素敵なストーリーが生まれることもある。