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政府よりも信頼されるインドの無免許医師

公共医療サービスの欠陥により、無認可の個人病院が増加しているインドでは、〈クアック〉と呼ばれる無免許医師の増加が深刻な問題だ。ある地域調査によると、インド農村部の医療従事者のうち、推定7割が正規の医療研修を受けていないという。

2017年11月某日、インド、ウッタル・プラデシュ州プリムガンジで、住民13人が〈HIV陽性〉と診断された。同国内最大の人口を誇る同州の医療従事者たちは、何かがおかしい、と感じていた。

同州ウナオでもHIV陽性者が確認されると、ウェブメディア〈Scroll.in〉の記者、カンチャン・スリヴァスタヴァ(Kanchan Srivastava)は、13人のうち、少なくとも8人の感染の原因が〈あるひとりの医師〉にある可能性が高い、と発表した。この〈医師〉は、軽い疾患を罹った患者に、HIVウイルス感染リスクの高い注射を打ったという。プリムガンジ、ウナオの事例は、インドのエイズ管理局の年次報告書に掲載される予定だ。

「ほとんどは、HIVウイルスへの曝露事故によって感染します」と非営利の保健ネットワーク〈Jan Swasthya Abhiyan〉の代表アミット・セングプタ(Amit Sengupta)。感染者の大半は、子どもや高齢者で、決して〈ハイリスク集団〉ではない。

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公共医療サービスの欠陥により、無認可の個人病院が増加しているインドでは、〈クアック〉(Quack)と呼ばれる無免許医師の増加が深刻な問題だ。〈>span class="s6">〉が引用したある地域調査によると、インド農村部の医療従事者のうち、推定7割が正規の医療研修を受けていないという。なかには、ホメオパシー、アーユルヴェーダを学んだ医療従事者もいるが、そういった治療法は、法律で認可された医療法〈アロパシー〉ではない。

しかし、それが唯一の治療法なので、コミュニティは〈医師〉たちの処方や診断を信じるほかない。数年前、私がインドでマラリアについて調査したさい、多くの地元住民が政府より〈クアック〉を信頼している、と話していた。その理由は、クアックたちが薬の処方だけでなく、注射も打つからだ。住民は、薬よりも注射の効果を信じていた。

地元メディアも現状を懸念するウナオでは、住民のHIV感染が判明する数ヶ月前、地域の病院関係者が問題の〈クアック〉の調査を命じていた。しかし、セングプタは、このような調査にはなんの意味もないという。「通常であれば、行政が〈クアック〉の開業を阻止するべきですが、そうなることは稀です」。インドでは、これ以外に、無免許医が患者の生命を危険に晒す避妊手術を施した前例もある。2017年には、ある無免許医が19ヶ月の子どもの命を奪った咎で告訴された。

このような事例からもわかるとおり、10億人以上が暮らすインドでは、HIV感染者、エイズ患者の増加に歯止めをかけるのが困難になっている。過去20年で、両者とも減少傾向にあるが、2016年のHIV陽性者は約210万人と、人口の約0.3>#/span###を占める。住民が信頼性に欠ける個人病院を頼るかぎり、治療介入や公的医療プログラムは、効果的ではない。

いっぽう、インド政府は、安全な医療水準を定め、無防備な患者を危険に晒さぬよう、公的な立場から〈クアック〉の研修を始めた。しかし、セングプタによると、政府の戦略は、散発的で緩慢なため、より良い公共、民間医療実現への近道ではないという。

「問題は、HIVの感染拡大ではなく、公民問わず、正規の医療施設が不足していることです」とセングプタ。「そんな状況は、到底受け入れられません」