なぜTikTokでアナル日光浴が流行っているのか

〈会陰日光浴〉の提唱者たちは、「穴を日光にあてる」ことで、コーヒー1杯と同等のエネルギーを生み出す、と主張している。
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translated by Ai Nakayama
Tokyo, JP
Jafia with his pants dwnlegs raised up towards the sun
すべての写真は取材相手より提供

お食事中の方には申し訳ないのだが、会陰(えいん)とは恥骨とアナルの間のエリアのことだ。そのエリアに1回あたり少なくとも3分間日光を浴びせること、すなわち会陰日光浴により、「一日中太陽の下を散歩する」、あるいは「充電する」「コーヒーを1杯飲む」のと同等のエネルギーが湧き上がると主張するひとたちがいる。ハッシュタグ#perinuemsunningは、10月25日現在、TikTokで290万回の再生回数を達成している。ウェルネス分野のトレンドとして小さくはない。

しかしその理由はなぜか。一体何が起きているのだろう。なぜこんなにも多くのひとが脚を開き、お尻の中に直接紫外線を注ぎ込んでいるのだろうか。インターネットの最新トレンドの〈穴〉の中に迫ってみたい。

「単純に、あそこに暖かい太陽の光をあてるとすごく気持ちがいいんです」と語るのはニューヨーク在住のTikTokユーザーで、定期的に会陰日光浴を行うAbushadyだ。「実際に体験してみないと説明できないような感覚です。太陽の光が自分という存在を、下から上へと満たしてくれているような」。Abushadyは、インドでヨガをしながら太陽の下で何時間も過ごすなかで、身体と心が会陰日光浴の喜びを知ったと語る。

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「帰国してペンシルベニアに滞在しているときも、よくヨガマットを持って全裸で外に出て、太陽を浴びながら2〜3時間ヨガをしていました」とAbushady。「シルシャーサナやアーナンダバラーサナなど、いくつかのポーズをとると全身くまなく日光を浴びることになる。お尻の穴に日光をあてるために外に出ているわけではありません。ただ自由であるだけです」

しかし日焼けをしないだろうか? 肛門がやけどする危険性は?「日焼けについては心配していません。なぜなら僕は、内側から肌を守るようなライフスタイル、食生活を送っているから」とAbushadyは述べる。

「バカにするひともいるかもしれないけど、僕はこう考えています。『日光でやけどするのは、自分自身の罪のせいだ』と。日焼けをするのは、a) 普段から太陽に充分あたってないからシンプルに日光への耐性がついていないから、 あるいは b) 有毒なライフスタイルを送っているから血液に毒がまわり、自然とも調和していないから。だからこそ日光への反応がやけどというかたちで表れてしまうんです。僕はそういうのを避ける生活を送っています。日焼け止めを塗らずに何時間も日光を浴びていても、やけどするようなことはないんです」

Abushadyの発言は疑わしい、というか普通にかなり危険だろう、と思うひとは、絶対にあなただけではない(筆者注:日焼けの原因が「有毒なライフスタイル」であるという証拠はない)。多くのひとにとって、身体のなかでもひときわ小さくデリケートなエリアを巨大な火の玉に向けない確かな理由はたくさんある。

カラン・ラジ(Karan Raj)博士は最近TikTokで、この薄い肌を日光に向けることの危険性を説明した動画を公開した。「お尻の穴で太陽エネルギーを受けないように」と動画内で彼は訴える。「会陰は肛門と性器の間にある、肌が薄いエリアのことです。ここが英語で『太陽があたらない場所(where the sun don't shine)』と呼ばれるのは、生物学的に、進化の過程で隠すようにつくられたからです。太陽光はやけどや炎症、皮膚がんのリスクを高める可能性があります」

さらに博士はインタビューでこう語る。「日焼けは、特に適切な日焼け止めの塗布がない場合、安全な習慣とはいえない、ということは特に覚えておいてほしいですね。会陰の日焼けは絶対ダメです。この場所に日光をあてるのは健康に良い、といえるエビデンスはひとつもありません」

このように非常に大きなリスクがあるにもかかわらず、多くの愛好家たちは会陰日光浴をやめようとはしない。カナダ人カップルのジェームズとチェルシーは、車で旅をするなかで、少なくとも週1回は会陰日光浴を行なっているそうだ。彼らはふたりの共同Instagramアカウントでハッシュタグ#perinuemsunningを使ってその様子を尻込みすることなく記録しており、DMで喜んで詳細を語ってくれた。彼らの説明によれば、「性的な悟りについてのポッドキャストを聴いて、会陰日光浴について知りました。できるときはズボンを下ろしてベッドに横たわり、両足を高くあげて太陽光線をキャッチします。30秒〜5分ほど日光を浴びるのがお気に入り」だそうだ。

しかし一体なぜ?「効果は絶大ですよ。朝、コーヒー1杯を飲むような感じ」とふたりはいう。「エネルギーが湧き上がって、充電された感覚。1日の準備が整うし、ふたりでいっしょに日光を浴びることでセックスの面でもメリットがあります。性欲が高まるし、いっしょに裸になることでより親密度が増します。ふたりでいることが心地よいし、自分たちの身体が自由になり、互いにオープンになっていることにリラックス感を覚えるんです」

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会陰日光浴愛好家の多くが、会陰日光浴で得られる自由の感覚に言及する。彼らがいう「エネルギー」効果だけでなく、内面的に湧き上がる感覚においてもメリットがあるようだ。同じくInstagramに会陰日光浴の様子を投稿するのが好きな22歳の米国人、ジャフィアもそれに共感する。「外でヨガをするとき、太陽が出てたらやるね。大きなメリットは、自分のこの肌のなかがとても心地よく感じられるということ。自分の身体のなかでも恥ずかしいパーツを見て、それを凌駕するんだ。太陽の光は、身体のどの部分にあたっても気持ちいい。それなら自分の力の根源にもあててあげないと」

とはいえ、ジャフィアも証明されていない〈健康効果〉に興味がないわけではない。「日光には殺菌効果があるから、理にかなっているような気もする」とジャフィア。「体内の〈老廃物〉が排出される場所だから、太陽に殺菌してもらえばいい。それに男性の場合、睾丸に日光を浴びせることでテストステロンが増えるという話も聞いたし(編集者注:決定的な科学的証明がされているわけではない)。自分をはっきりと認識できるし、より自分らしくいられる。本能が喜んでるんだ。自分がやりたいことをやるべきだよ」

会陰日光浴は健康へのリスクだ、と指摘するひとには何と言うか尋ねてみると、彼はこう答えた。「どうして健康に悪いと信じているのか、その理由を聞いてみる。もし相手が興味をもっているなら、しばらく話してみて、あらゆるものにリスクはつきものだって言うよ。太陽の下で長時間過ごしたらやけどするのは誰でも知ってる。それなら気をつけて、短時間だけやればいい」

James and chelsea on their backs, legs open towards the sun

仰向けになり、太陽に向けて脚を開くジェームズとチェルシー。

大勢の会陰日光浴愛好者と話してみると、このトレンドを推奨するひとたちの多くがヨガを実践していることがすぐに明らかになった。たとえば全裸でヨガをしたり、歩き回るのが好きだったりするひとたちが、他の習慣に加えるかたちで会陰日光浴を取り入れているようだ。会陰日光浴に科学的な裏付けはないものの、今回私が取材した相手の多くが、会陰日光浴はヨガの一連の動きのグランドフィナーレだと語る。

「素肌に太陽の光を浴びるべき。下着や水着を着けると、目的を達成できないと思うんです」と語るのはジェームズとチェルシーだ。「習得すべきベストなポーズは、仰向けになって足を上げるアーナンダバラーサナか、うつ伏せになってするダウンドッグ。その瞬間に心地よいと思うポーズ、自分が好きな、しっかり太陽の光を浴びることのできるポーズなら何でもいいんです」

医療関係者は絶対にやめたほうがいいと言い切る一方、愛好者たちは〈太陽があたらない場所〉に頻繁に日光を当てることをやめる気配はない。

しかし都市生活者が肛門に日光をあてて充電をしようとすると、逮捕される可能性が極めて高い。そこでおすすめしたいのがコーヒーだ。むしろコーヒーこそがベストだと思う。

@elizabethmccaf