なぜ人はビデオ会議で大声になってしまうのか

「妹の部屋に行って、さっきの会議最悪だったよ、と愚痴ってたら、『うん知ってる、全部聞こえるから。お兄ちゃんの発言全部』って言われて」
Hannah Smothers
Brooklyn, US
AN
translated by Ai Nakayama
Tokyo, JP
12.5.20
なぜ人はビデオ会議で大声になってしまうのか
Shutterstock/WAYHOME studio

「会議ではいつも大声になってしまうクセがあるんですけど、ビデオ会議ではさらにそのクセが悪化するみたいです」と語るのは27歳のコナー・スナイダー、自称〈会議の叫び屋〉だ。「ある日、僕とルームメイトみんなで話してて、家のどこにいてもビデオ会議のときの僕の発言が全部聞こえる、って言われたんですよね」

スナイダー同様、28歳のセバスチャン・メザも、他人に指摘されるまで自分の叫びグセには気づかなかった、という。「ちょうど昨日、妹に言われたばかりなんです。1日5回くらいZoom会議してるんですけど」とメザ。「妹の部屋に行って、さっきの会議最悪だったよ、と愚痴ってたら、『うん知ってる、全部聞こえるから。お兄ちゃんの発言全部』って言われて。あと、同僚には僕が怒ってるといつも誤解されるので、つまりかなり大声を出してるんだと思います」

ここで疑問が生まれる。ビデオ会議で大声を出す必要はあるのか?

同居人みんなが同じ空間で過ごすようになった今、多くのひとが、パートナーやルームメイト、あるいは自分自身の新たな一面を発見しているだろう。その〈新たな一面〉のひとつが、ビデオ会議でパソコンやスマホに向かってやたら叫ぶ(叫ぶ理由なんてないのに!)ことだ。

今回インタビューした叫び屋たちにも、ビデオチャットでは友人や同僚に向かって大声を出さないといけない、という強迫観念について論理的な説明ができるひとは誰もいなかった。ただ、自分の叫びグセに悩んでいるひとはいるようだ。

「ちょうど昨日の夜、何で僕はビデオ会議で大声を出すんだろう、と自問していたところです」

「ちょうど昨日の夜、何で僕はビデオ会議で大声を出すんだろう、と自問していたところです」と吐露するのは24歳のライアン・クイン。「僕の考えですが、普通の電話のときは機械を耳に当てて話すけど、ビデオ通話のときは画面が顔から離れているからかな、と。そうなると大声を出すのも自然に思えますよね」。クインは、ビデオ会議を主に自分の家の庭でやっているそうで、ついこのあいだ、隣人に声のボリュームについて注意を受けたという。隣人は壁の向こうから頭を突き出し、「声が大きすぎる」といったそうだ。

内蔵型マイクの多くはそこまで性能が高くないが、MacBookのマイクが環境音を拾えることは確かだ(例えば隣の部屋でルームメイトが食器を盛大にぶちまけた音とか、自分では控えめだと思っていたけど実際はしっかり鳴っていたオナラの音など)。人間工学的に理想のワークスペースを構築しているひとだったら、パソコン、すなわちマイクと自分との距離は、腕の長さぶんだけだ。大声を出す必要はまったくない。

しかし、ソフトウェアによっては大声を出す原因となっているものもある。Google ハングアウト(現Google Meet)のヘルプデスクに何度も寄せられている質問によれば、会議中のサウンドを統制するため、マイクの入力ボリュームを勝手に調節するプラットフォームもあるようだ。つまり、大声を出すひとがいても、音量が自動調整されてそのひとの入力ボリュームは絞られるということだが、おそらくそれよりも、個々人が自分のパソコンの音量を下げるほうが早いだろう。そうなると、普通の音量で話すひとの声は小さく聞こえるようになってしまい、他の参加者に、もっと大声で喋ってくれ、といわれる可能性が高くなる。結果として、何人もの参加者が画面に向かって大声で叫ぶことになる。テクノロジー系ニュースサイトの〈The Verge〉でも、グループに叫び屋がひとりいると、そのひとの声にかき消されまいとして、ドミノのように参加者全員の声のボリュームが大きくなってしまうので、Zoom会議で大声を出すことは推奨されない、という記事が最近掲載された。

おそらく、今回の取材でもっとも納得できる理由を答えてくれたのは、26歳のアレック・ラフェーバーだ(彼が答えてくれた理由は、論理的というよりは心持ちの問題だが)。

「静かに喋るように努力してるんだけど、ずっと意識してないとすぐに大声になってしまいますね」と彼はいう。「僕が大声で喋るのは、多分、通話相手と物理的に近くにいない、という状況を穴埋めしようという気持ちからだと思います。バーチャルで顔を合わせていると、どうしても距離感が生まれてしまう。きっと僕は、その距離感をどうにか埋めようとしてるんです。大声を出すことで、その距離が縮まると思ってるのかも」

This article originally appeared on VICE US.