30歳を迎える前に始めておくべき30のこと

30年は長い。この歳になってしくじらないための30のアドバイスを伝授する。
Daisy Jones
London, GB
NO
translated by Nozomi Otaki
A person celebrating their 30th birthday by diving into a pool
来年30代に飛び込むひと。PHOTO: BOB FOSTER.

30歳になるのは恐ろしい。私自身今年30になるので、その恐怖は骨身に沁みている。もし『Xファクター』に出たら、オーバー25歳部門で足首までのロングドレスを着てピアノの前でバラードを歌うことになるだろう。『Xファクター』の話をしたら、親がTikTokを〈Tick Tock〉と書いたときのように、改めて歳を感じた。別の日には、自分が90年代、つまりブロードバンドインターネットが存在する前の本物の90年代を生きていたことを思い出した。誰か共感してくれるひとはいるだろうか。

とにかく、誰でも30歳になる前にさまざまなことを学び、メディア企業に勤めているなら、リストを作ることになる。それがルールだ。〈日焼け止めを塗る!〉とか〈二日酔いには〇〇〉などのリストを作らずに30歳にはなれない。

これがVICE的〈30歳になる前にやること〉リストだ。事前に複数の友人やネット上の知らないひとに質問し、情報を集めた。そんな集合知の賜物を公開する。

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30歳を迎えるあなたに必要な唯一無二のリストだ。

1) ちゃんとしたスキンケアをする

27歳のときは、シャワー中に顔にセントアイブスのアプリコットスクラブを塗りたくったあと、クレアラシルの保湿ローションを叩き込んでいたかもしれない。それは毎朝洗面器いっぱいの液体洗剤に頭を突っ込んでいるも同然だ。それがあなたのスキンケアだった。

成人してからずっとニキビに悩んできた経験者として、ひとつ学んだことがある。大抵のスキンケア製品は、もともとの肌が綺麗でなければ効果がない。もし美肌の持ち主でないなら、とにかくシンプルに、できるだけ成分の少ない、アルコールフリーでノンコメドジェニックの製品を使うべきだ。レチノールにお金をかけよう。しつこいニキビがあるなら、皮膚科で薬を処方してもらって治療しよう。それからもちろん、日焼け止めは必須だ。

2) 基本的な料理スキルを学ぶ

これは25歳までにやるべきことだが、遅すぎるということはない。基本的なスキルとは、例えばパスタソースにはパスタのゆで汁を使う、米1カップは2カップの水で調理する、チキン、魚、豆腐に合った味付けをする、半熟卵のゆで時間(6〜7分)を知っておく、などだ。

それから、大学時代のように玉ねぎとニンニクをフライパンに同時に放り込まないこと。ニンニクが焦げてしまう。玉ねぎが柔らかくなるまで待って。

3) セラピーに行く

毒のある小悪魔は、6年生からドラマ『ユーフォリア/EUPHORIA』の年頃まではキュートに思えたかもしれないが、三十路になったらそういうわけにはいかない。その頃には〈衝動的〉で〈優柔不断〉なのではない。根深い愛着やコミュニケーションの問題の影響を受けやすいだけだ。

4) ドラッグ

ただし、良いものだけだ。悪いドラッグとはクリスタルメスやコカイン、MDMAなどだ。良いものはマジックマッシュルーム、DMT、LSDなど。こんなことは言いたくないが、30歳は見知らぬ誰かのリビングで監視資本主義について朝6時まで議論できるような年ではない。〈旅〉に出ることや悟りを開くことを大切にするべきだ。少なくとも、それが皆がずっと言い続けてきたことだ。

5) 二日酔いを克服する

他のリストには、飲酒量を減らすべきだと書いてあるだろう。20代を通して、飲みすぎて翌日体調を崩すことへの反応は「アハハ、レジェンドだね」から「本当にあなたの健康が心配だから、この番号に電話してみて」へと変化していった。そもそも最悪の二日酔い(と他の心配事)を避ける最も簡単な方法は、アルコールを控えることだ。

それでも、年をとったからといって完全に断酒しなければいけないわけではない。しかし、気ままな生活を続けたいなら、二日酔いにうまく対処する方法を学んだほうがいい。個人的には、糖分控えめのカクテルや夜遊び後の経口補水液タブレット、夜寝る前に必ずコップ1杯の水を飲む、などが効果的だった。

6) 裁縫道具にお金をかける

そんなこと気にしていられない、と思うひとも多いかもしれない。だが、クロッチに大きな穴が空いているせいでお尻が際どい感じに見えるからといって、リーバイスのジーンズを捨てる必要はない。穴を縫い合わせさえすればいいのだから。穴を縫って、世界にあなたのお尻を讃えてもらおう。そして、破れている服を全部補修しよう!

7) 正しい服の扱いや洗い方を学ぶ

これも服の話題だが、手洗いするべきアイテムの手洗いの方法を学んでみるのもいいかもしれない。古臭いおばあさんみたいに、たらいで毛糸の何かを絞る自分が想像できなくて、ずっと先延ばしにしてきた。でも、実際にやってみたら全部で15分ほどで済み、洗濯機に放り込んだときのようにニットがぽぽちゃん人形サイズに縮まずにすんだ。

8) フィラー&ボトックスの施術を受ける

これは冗談だ。美の基準なんてクソくらえ。でも、誰しもいつかは年を重ねたロックスター(パティ・スミス、リアム・ギャラガー)になるか、それともアイコニックなビッチ(パメラ・アンダーソン、アマンダ・ルポール)になるか、選択を迫られる時が来る。それが今……かもしれない。もしくはあなたがコートニー・ラブや生前のピート・バーンズなら、その両方になれる。

9) 知らない人と出会う予定をつくる

ティーンのときは、〈仲間〉とは同じ授業やハウスパーティーに出たり、グレンズ・ウォッカを割り勘で買ったり、好きな人のうわさ話をする相手を指していた。20代になると新しい知り合いをつくるのがどんどん難しくなり、28歳にもなれば高校や大学からの知り合い5人に囲まれ、しかもその全員が結婚している、ということも少なくない。

付き合いが長い仲間がいるというのは楽しいし良いことだが、新しい人と知り合うには自分のコンフォートゾーンから一歩踏み出す必要がある。誰かと会う計画を立て、それを実行に移そう。私もつい先日ほとんど面識のない相手から散歩に誘われ、了承した。ふたりで楽しい時間を過ごしたので、また一緒に出かけるかもしれない。

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10) 工具一式を買う

私は持っていないが、みんなが買うべきだというので、買ったほうがいい。

11) もっと写真を撮る

18歳のときのことを覚えているだろうか。当時は自分のことをセルフタンニングローションを塗りたくったベイクドポテトみたいだと思っていたが、後になって写真を見返してみると、ハリのある丸い胸や胸筋を備えたまばゆいばかりの若々しい姿が写っている。おそらく40代になったときも同じように感じるはずなので、今はそうは思えなくても、元気いっぱいの姿を写真に残しておくべきだ。

12) セックスの話題を恥ずかしがるのをやめる

むやみに恥ずかしがること以上に恥ずかしいことはない。セックスの話題に関しては特にそうだ。しかも30歳になればなおさらそうだ。〈ママ〉と呼ばれながらオモチャでしてもらうのが好きだからって、それが何か?

Person in a sunshine t-shirt showing off his diablo skills

Photo: Chris Bethell

13) 巻きタバコの巻き方を覚える

これは20代そこそこの喫煙者、ソーシャルスモーカー(※独りでは吸わないが他人と一緒のときにだけ喫煙する人)、きっかり3杯飲んだ後に誰かにタバコを巻いてほしいとせがむ自称〈非喫煙者〉に向けたものだ。言い方を変えれば、自分のタバコは自分で買うこと。

14) 植物の世話をちゃんとする

植物の世話とは、思い出したときに水をあげることだけではない。壁をツタで覆われた緑豊かなジャングルのようなアパートに住んでいるひとは、霧吹きや肥料を使い、定期的に植木鉢や土を変えている。

30代に差し掛かり、〈植物愛好家〉を目指すなら──誰しも30歳になると植物愛好家になるようだが──少し勉強をするべきだ。さもないとベッドルームが『リトル・ショップ・オブ・ホラーズ』みたいになるだろう。

15) 突然連絡を断つのをやめる

これはマッチングアプリの返信を忘れるとか、そういう話ではない。それはただの日常だ。ここで言いたいのは、3〜6ヶ月間関係を持ったりデートをした相手に対し、そのひとが一度だけ道を渡る前に靴ヒモを結ぶところを見かけて幻滅したからといって、死んだフリをするのはやめよう、ということだ。32歳にもなってこんなことをするのはやめよう。せめてメールは送って。

16) 税金をきちんと把握する

あるとき、自分の税金を理解していなくて国税庁から1万ポンド(約160万円)請求されたことがあった。当時の私は大学生で、小売店で最低賃金のバイトをしていたにもかかわらず、1万ポンド払いなさいという通知が続々と届くようになったのだ。それ以降、遊んだり、笑ったり、少し羽を伸ばしたりするたびに、1万ポンドという真っ赤な文字が頭に浮かび、ふと我に帰るようになった。1万ポンド!

これを読んでいるあなたには、私の二の舞にならないでほしい。自分の税金をきちんと把握し、専門用語の意味を知ろう。発生主義という言葉が目に入るたびに意識を失いかけるなら、プロに時間をとって解説してもらおう。フリーランスの場合は、可能なら税理士に確定申告を手伝ってもらおう。

17) 壁を掃除する

ちょっと変化球だが、壁がどれほど汚れているか意識したことはあるだろうか。汚れているなら掃除しよう。

18) 気楽な恋愛をする

人生で最も溌剌とした時期を、大学時代からの〈ソウルメイト〉と付き合ったり別れたりを繰り返し、猛烈な口げんかをしながら過ごしているあなたへ。恋愛とは75%の時間はハッピーに過ごせるものであるべきだ。本来は自分のパートナーを見たら、ミルクをもらったばかりの赤ちゃんのように、オキシトシンで満たされて幸せな気分になるはず。苦しみのポエムを書いたり、復讐の手段を探す対象ではないのだ。もしくは……

19) 楽しい恋愛をする

30歳でパートナーがいるからといって、毎晩Netflixの殺人ドキュメンタリーを観て「晩ご飯は何にする?」と訊くのを死ぬまで繰り返さなければいけないわけではない。ひと味違うことに挑戦してみよう。パーティーに行こう。行き先のわからないバスに乗ってみよう。Uberの中でイチャイチャしてみてもいい(人生は一度きり!ピース)。何事も変化が大切だ。それもダメなら……

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20) まったく恋愛しない

フォレストヒルのワンベッドルームのアパートに毎月1100ポンド(約178,000円)払ってまで、毎晩今日のご飯は何か訊いてくる、絶対にオーラルセックスをしてくれない29歳のスケーターと同棲する価値はない。

21) ジャンキーな食生活を卒業する

三十路の身体で7歳の男の子のような味覚を持つひとには不公平に思えるかもしれない。私だってスマイルポテトとバーガーキングばかり食べていたいが、それが3日以上続くとダメ人間のようで気分が落ち込んでくる。

ジャンクフードに道徳的に間違っていることはひとつもない。むしろ、ジャンクフードは道徳的に正しい。しかし年をとるにつれて、身体を気遣う必要性が増していく。要はエントロピーの問題だ。だからマルチビタミン剤を摂取し、コンブチャを飲み、薬膳スープのレシピをマスターしよう。そうすれば少し体調がマシになるはずだ。

22) 付き合っている相手を〈恋人〉と呼ぶ

ボーイフレンドやガールフレンドは幼稚すぎる。パートナーは真面目すぎるし、配偶者はぎこちない。恋人ならセクシーだしどこか謎めいている。

23) 十分な睡眠をとる

慢性疾患やうつ病をのぞき、睡眠によって改善しないものはひとつもない。ランチ休憩に短い仮眠をとろう。家までの帰り道でも少し眠ろう。2〜3日続けて夜10時に就寝し、睡眠アプリで自分が朝4時に悪霊に取り憑かれたかのように不気味なうなり音を上げるのを録音しよう。

21歳のときなら、二次会のあと朝日とともに這うように帰宅しても問題はなかったかもしれない。それでも30近くなると、全身が腐っていくような気分になるだろう。ある意味、〈腐っていく〉のは本当だ。

24) きちんとした服を3着は持っておく

年をとるということは、結婚式や仕事の面接、葬式に行く機会が増えるということだ。ダウンジャケットや、ファストファッションやフリマアプリの寄せ集めのワードローブ以外の服を持とう。個人的には、黒のタートルネックは、ジェンダーにかかわらず、あらゆるひとを真面目でスマートに見せる万能アイテムだと思う。誰かが亡くなったり、結婚を決めたり、解雇されたときのために、最低3着は持っておきたい。

25) 精神的な不安定さを受け入れる

30歳間近になっても誰も教えてくれないのは、結局20代と同じような情緒不安定な状態が続くが、それもだんだん気にならなくなっていく、ということだ。時間とともに羞恥心は薄れ、最終的には〈恥知らず〉になれる。おめでとう、あなたはもう自由だ。

Two Mr Blobbys rolling in the mud

26) オーラルセックスの技術を磨く

20代が終わるのに口でするのが下手くそなんてことは、一切セックスをしないか顔がない場合をのぞいてあってはならない。指使いについても同じことが言える。もしあなたがどちらも自信と思いやりを持ってできるというなら、この項目は気にしなくていい。

27) 大きな赤ちゃんでいるのをやめる

VICE UKのソーシャルエディター、ハッティ・レックスに30歳になる前に必要だと思うことを尋ねたら、彼女はこれしか思いつかないと答えた。ちなみに3歳、12歳、15歳になったときにも同じことが言える。

28) もっと水を飲む

ここまで読み終わって、ちょっと頭痛がしてきたというひともいるだろう。頭にモヤがかかっているように感じているひともいるかもしれない。戸惑いや倦怠感もある? ちなみに今日は何を飲んだ? え? コーヒー7杯???

水を飲むことは──最後まで聞いてほしい──実は慣れてしまえばかなり楽しいことだ。脳が滑らかに動く機械のように活性化し、肌が露に濡れたように輝き、白目が明るくなる。最近ではYouTubeに水を飲む映像(本当にただ水を飲むだけ)を投稿するひとも多い。この水分補給は少しやりすぎだと思うが、彼らの主張はなんとなく理解できる。

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29) 新しい音楽に追いつく

私が恐れているのは、「最近はTHE STONE ROSESみたいなバンドはいないなあ」と物憂げに語るX世代のお父さんのように、30代や40代になっても自分の青春時代の音楽しか聴かなくなることだ。立派な大人になるというのは、趣味が凝り固まっていくということではない。

でも、これから死ぬまでMY CHEMICAL ROMANCEしか聴きたくないというなら、それはそれでかまわない。

30) 30歳という年齢を楽しむ

年をとるということは、逆戻りできず、ひたすら前に進むしかないので恐ろしい。前に進むことはすなわち死、存在の消滅に近づくことを意味するからだ。

それでも、20代の終わりに楽しむべきことはたくさんある。年を重ねれば、周りを気にせずに自分が好きなことを満喫できるようになる。同調圧力はもう大した問題ではない。顎のラインがくっきりして、メイクの腕も上がる。もっと感じのいい、もしくは少なくとも落ち着いたひとになれる。ファッションセンスも少しは洗練されるかもしれない。外出するべき時と家にいるべき時の区別もつく。それに年をとったといっても、30歳はまだまだ若い。それでは、あちら側で会おう!

@daisythejones