スポーツ調停裁判所は、19歳のインド人スプリンター、デュティ・チャンドが、通常より高いテストステロンのレベルに関係なく競技に参加できる、と裁定した。女性としての競技資格を証明するために様々な性別テストを受けてきたチャンドのような女性アスリートにとっては、重要な判断が下されたことになる。
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チャンドは2012年、16歳の時に100メートル走の18歳以下部門で優勝し、インド最速のスプリンターとなった。しかしその後2014年に、女性の体内で自然発生的に高レベルのテストステロンを生み出す高アンドロゲン症のために競技参加を禁止された。
高アンドロゲン症によりテストステロンのレベルが高過ぎると、アスリートは参加資格を失ってしまう。国際陸上競技連盟(IAAF)の基準では、1リットルあたり10ナノモルとなっている。その理由として、テストステロンが多い女性は、ステロイドを摂取したときと同様に優位に立ち、不公平だと思われているからだ。問題は、高アンドロゲン症が多嚢胞性卵巣症候群のような状態から自然に発症する点にある。これは女性のホルモンバランスを歪めるもので、10人に1人という高い割合で女性が影響を受けている。
このような問題を受けて、男性と女性のアスリートの間に明確な境界を設定するという考えを中心に、アスリートの性ホルモンに関する議論が巻き起こった。オリンピックにも参加したキャスター・セメンヤが2009年に性別テストを受けたのは有名な話だ。その結果、彼女は男性と女性の生殖器を有していることが判明した(彼女はその後アンドロゲンレベルを「正常化」するためにホルモンサプリメントを摂取し、IAAFは競技への参加を認めた)。2012年のロンドンオリンピックでは、4人の女性が競技に参加するために体内の睾丸の除去を余儀なくされた(彼女たちは遺伝子学的には女性だったが、男性の生殖器を持っていた)。
しかしチャンドは、ホルモンサプリメントの摂取や手術で体を変えることに興味を示さず、資格剥奪について申し立てを行っていた。
この判決後、ニューヨーク・タイムスは、専門家パネルが「高アンドロゲン症の女性に、女性のカテゴリーから締め出すほどの大きな能力上の優位点があるかどうか結論に達しなかった」と報じている。調停裁判所は、高アンドロゲン症がアスリートの能力に影響を及ぼす、という説得力のある証拠を2年以内に提示するよう国際陸上競技連盟に求め、もし証拠が提出されなければ今回の判決がそのまま有効となる。
チャンドや同じような症状のアスリートにとって、今回の判決は大きな勝利である。チャンドは本日発表された声明の中で、「私は自分に責任のないことで屈辱的な経験をしました。今回の判決のおかげで、他の女性アスリートが私のような経験をしないで済むことを喜ばしく思っています」と述べている。