語学学習のプロが語る、オススメの外国語習得法

語学学習アプリに効果はあるのか?
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translated by Ai Nakayama
Tokyo, JP
語学学習のプロが語る、オススメの外国語習得法
Photo: Getty / PeopleImages. Collage: VICE.

外出自粛の期間中、せっかくだから新しく言語を学んでみようかな、と思ったひとは少なくないだろう。

もちろん、このアイデアはすぐにボツになったはずだ。なぜなら、誰もが知っているとおり、新しい言語の習得は実に難しいから。でも、何年も学校でフランス語を学んで、今は「Lady Marmalade」の歌詞がちょっとわかるくらいしかその片鱗が残っていなくても、フランス語の知識がきれいさっぱり失われたわけではない。学術誌『Cognition』に掲載された最近の研究では、18歳までに外国語を習得することのアドバンテージは確かにあるが、大人だってネイティブのように流暢に新しい言語を喋ることは可能だという。

とはいえ、今すぐ飛行機に乗って外国語漬けになることは不可能だ。そんなとき選択肢に上がるのは言語学習アプリだろう。そういったアプリは、言語学習のプロセスも楽しく簡単になる、と吹聴しているが、実際のところ、効果はいかほどなのだろう。

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言語学習アプリのなかでも人気が高いDuolingoは、最近30以上の言語の無料コースを提供し、パンデミックが始まって以来、新規登録者が急増している。英語を第一言語としないひとには選択肢は限られてしまうものの、ブロガー/ウェブサイト〈Actual Fluency〉のポッドキャスト担当、クリス・ブロホームは「Duolingoは世界最高の言語学習アプリだと思います」と太鼓判を押す。しかし、確かにアプリで言語学習は簡単、便利になるものの、新しい言語を習得するにはそれだけじゃ足りない。

「言語学習アプリだと、本来の実力よりも自分は喋れるんじゃないか、と思ってしまう傾向にあります」と語るのはリチャード・シムコット。50以上の言語をマスターした世界随一の多言語話者だ。「言語学習は過剰学習です。何かを学ぶときは、それが自分の一部になるくらいまで学ぶ。そうすると、必要なときに自然と思い浮かべることができるんです」

言語学習アプリは、反復をゲーム化することで、単語や表現を覚えやすくする。しかし、そのエクササイズに収録されている語彙にしか触れられない。「それは必ずしも悪いことではありませんけどね」とシムコットはいう。「本来の実力以上に自分は優れていると思い込めた方がいい。そうしたら自信がついて、続けるモチベーションにもなりますから」

まずモチベーションとなるような自信を得るためは、自分自身のこと、自分の生活のことを説明するのに必要な単語やフレーズに集中するのがいい、とブロホームは学習初心者にアドバイスする。「最初の会話に必要な情報って、突き詰めるといつも同じものが多いんですよね」と彼はいう。シムコットもそれに同意する。「もし、ある言語を喋りたいと思うなら、自分の生活にとって実質的な意義がないと」。学習を始めるときは、多くの人が、比較的無駄な情報、学習が進むにつれて得られるような情報(例えば国名や職業など)を頭に詰め込もうとする、という過ちを犯しがちだ。しかし、もし初期の段階で自分について少しでも喋れるようになったら、自信もつくし、スキルを伸ばしていくための揺るぎない基盤もできる。

ただ、この不安定な現状で、外国語学習のような長期にわたる計画へのモチベーションを保ち続けるのは難しい。無理めなタスクと向き合うための良い方法といえば、達成できそうな小さい目標を決めていくことだ。「流暢に喋れるようになる、という目標しかなかった場合、何ヶ月ものあいだ、自分にがっかりしながら過ごさなくてはなりません。でも、例えば自己紹介できるようになりたい、という目標があれば、1回のレッスンで達成感を得られます」とブロホームは語る。さらに試してみてほしいのは、学習プロセスをルーティン化すること。シムコットは、カレンダーの通知機能を毎日同じ時間にセットして、勉強の時間を報せるようにするといいという。「そうやって繰り返しているうちに、いつしか慣れて、習慣づけすることができます」

もちろんインターネットには、言語学習者向けの無料のリソースが溢れている。シムコット自身も、週1で無料のライブチャットを行なっている。外国語の映画や動画、子供向けストーリー、さらにニュース記事なども、自分の外国語スキルを磨くための有用なツールとなりうる。ただ、家事をしながら、あるいは通勤時間などに自分が勉強したことを振り返る、というような小さなことからでも勉強は始められる、とシムコットはいう。「学習できるひととできないひとでは何が違うかというと、できないひとは次のレッスンまで、その言語のことを全然考えないんです」

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重要なのは、これまで学んだことを1日中練習できるような方法を見つけることだ。その方法はひとによって異なる。例えば、声に出して覚えるタイプの学習者なら、学んだボキャブラリーを大声で叫んだり、自分がしていることを外国語で説明したり、という練習法が役に立つだろう。目で見て覚えるタイプには、LingQという無料アプリをシムコットは薦めている。これを使えば、物語を読みながら簡単に新しいボキャブラリーを増やしていける。従来の参考書ももちろん有効だし、参考書をKindleで購入しても大した額にはならない。そして耳で聞いて覚えるタイプなら、学んでいる言語の音楽やポッドキャストを集中して聴くといい。

しかし、外出も自由にできない状況で言語を学習する上でいちばん難しいのは、スピーキングのスキルを磨くことだろう。今は、実際にネイティブスピーカーと会っておしゃべりしたり、交流することは不可能だ。「一対一の対面学習の代わりになるものは、実質的にはないと思います」とブロホームは語る。残念ながら、特にちゃんとした語学学校に通おうとすると対面学習は高額になる。収入も不安定な今、趣味に大金を投じられるひとはなかなかいないだろう。

そんな中で選択肢のひとつとして挙げられるのは、FacebookやConversation Exchangeのようなウェブサイトでランゲージエクスチェンジ(言語交換)グループを探すことだ。自分の母語のネイティブスピーカーとして登録をすれば、自分が学びたい言語のネイティブスピーカーとマッチングできる。ただブロホームは、無料のプラットフォームにおいて、双方向のバランスが取れた言語交流を保つのはなかなか難しい、と指摘する。そんな彼が「本当に素晴らしい」と薦めるのは、ITalkiというウェブサイトだ。ここでは、様々な言語のネイティブスピーカー(資格不要)と、1時間数ユーロで会話レッスンができる。

最後に、計画は現実的に立てること。たとえ一生懸命勉強しても、本当に流暢に喋れるようになりたいなら、ロックダウンが明けたあとも何ヶ月も学習を継続する必要がある。この自粛期間を自分磨きのために使うべき、というプレッシャーは大きいが、毎日無理やり勉強を続けているようでは上達できない。

「社会人の良いところのは、僕らは自分が学びたいと思う言語を選ぶ権利があり、しかも楽しく学べる、ということです」とブロホームは語る。学生時代、何年も同じ外国語を学んだにも関わらず、まったく頭に残っていないのはそういうわけだ。「結局、言語の面白さを伝えるのは簡単だけど、学習者が歩み続けるためには、本人が目標のために必死になることが必要なんですよね」

This article originally appeared on VICE UK.