中国で拡大し続ける希少生物の部位取引市場

現在、中華人民共和国では数千頭のトラが飼育下にあり、その数は野生のトラ数を上回る。トラたちは檻の中で、骨が酒に、毛皮が絨毯に加工されるのを待っている。中国でのトラ飼育産業は、ここ20年間で急激に拡大し、さらには合法化されようとしている。

2016年1月29日付ワシントンポストによると、中国の野生生物保護法修正法案が承認されると、絶滅危惧種の捕獲と飼育が合法になる可能性がある。これまで中国では、飼育は規制されておらず、法の埒外で平然と行われてきた。新たな政策は、政府による飼育の実態把握を可能にするが、絶滅危惧種の畜産を合法化、正当化してしまう恐れがある。

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2016年1月1日に公表されたこの法案は、現在、審議中である。法案が認可されれば、捕獲されたトラは見世物にされ、高価な部位の取引を目論んだ飼育がまかり通ってしまう。

さらに、法案の認可は、野生生物保護活動に深刻な打撃を与え、ここ数年続く、希少野生生物の部位を取引する市場の拡大を促進する可能性も孕んでいる。

当初、法改正への動きは野生動物保護法をアップデートする好機だ、と野生動物保護団体CEOのピーター・ナイツ(Peter Knights)は期待していた。しかし、彼は、われわれの取材に対して、「法改正は捕獲した野生動物を不当な環境で飼育下繁殖する小規模業者を潤す」と懸念する。「トラとクマの飼育下繁殖は、中国の国際的な評価を高め、悪習を奨励するのではなく段階的に撤廃する好機だった」

米国魚類野生生物局に押収されたトラ商品 Image: USFWS Mountain-Prairie/Flickr

1986年、中国内の捕獲されたトラは約20頭にすぎなかったが、今日では5,000頭にも上り、同国内におけるトラの部位取引は「産業」規模である、と評されている。NPO団体「Environmental Investigation Agency」による2013年の報告では、約200件のトラ収容施設が正式に登録されているらしい。

トラの眼球、性器、歯、頬髭には薬効があると信じられているので、アルコール中毒から癲癇まで多岐にわたって処方されるが、金銭的に最も価値があるのは骨だ。高価なトラの骨は、さまざまな生薬とともに酒に浸されて虎骨酒になり、薬膳酒として、関節炎などの慢性的な疾患に対する効能がある、と信じられている。また、ステイタス・シンボルとして宴や催事でも振舞われる。

MUNCHIESによると、何年ものかによるが、虎骨酒はボトル1本80ドル(約9,000円)〜290ドル(約32,700円)で取引されるらしい。

動物の足と毛皮も世界中の取引市場で人気が高いので、中国内で標的になる大型動物はトラだけではない。生きたクマの肝臓から抽出される胆汁、乾燥させれば簡単に輸送できるクマのツメは高額で取引される。これらの製品は、漢方薬の素材として重宝されるが、効能の医学的根拠は薄い。

新たな法案を「野生動物保護法」でなく「野生動物活用法」と揶揄する自然保護活動家もいる。絶滅の危機に瀕する野生生物の価値は、畜産システムの中でより高まりそうだ。