標高3210mの地点に、うつ伏せで倒れていたところを、アルプス登山をしていた年配のドイツ人夫婦に発見された。身体は茶褐色に変色しており、ずいぶん前に死亡したのはあきらかであった。この年は記録的な猛暑日が続き、行方不明になっていた数十年前の山岳遭難者が、溶け出した氷河の中から多数発見される非常に珍しい年だった。このミイラも過去の登山者だろうと誰もが思い込んでいた。身体のいたるところから149点のサンプルを採取した結果、アイスマンの謎が次々と解き明かされた。DNA鑑定によると、アイスマンは身長157.5㎝、体重50㎏、年齢は45歳前後で筋肉質。髪は黒っぽく、瞳は茶色、肌は典型的なヨーロッパ系の白色。血液型はO型。死因は、後ろから矢で射られた他殺。殺害の動機は不明。
CTスキャンの画像でも、膝と臀部の関節は軟骨がかなりすり減っており、腰と膝に痛みをともなう関節炎の症状がでていたのは間違いないとされた。ところが肩や肘、指の関節には異常が見当たらない。そこから導きだされた生前のアイスマンの生活は、狩猟採集民族ではなく、農耕牧畜社会の一員で、ときに重いものを運びながら絶えず移動する〈交易・行商〉に携わっていた可能性が浮上した。
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アイスマンのタトゥー研究に貢献するため誰でも無料で閲覧できるウェブサイト、Iceman Photo Scan