AI搭載レーザーがゴキブリを自動駆除

技術はオープンソースで安価に製作することができるが、開発者は「少々危険」だと語る。
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translated by Ai Nakayama
Tokyo, JP
Untitled design - 2022-09-27T165344
スクリーンショット:YOUTUBE

誰もが害虫を撃ち殺したいと願っているが、機械学習やエンジニアリングを専門とするヘリオット・ワット大学の研究助手、イルダー・ラフマトゥリン(Ildar Rakhmatulin)が開発した最新のシステムのおかげでそれが現実になった。

本研究は昨年実施され、今年9月21日に学術誌『Oriental Insects』に掲載された。ラフマトゥリンのチームは、マシンビジョンで自動化されたレーザーによる昆虫コントロールデバイスを使用して、室内に生息するゴキブリを対象に一連の実験を行なった。結果彼らは、高精度にゴキブリを検出するだけでなく、最大1.2メートルの距離からゴキブリを1匹ずつ無力化し、抑止することができた。

本実験は、Raspberry Piとレーザーを使って蚊を退治する先行プロジェクトのフォローアップとなる。しかし今回ラフマトゥリンは、ゴキブリ検出の正確性をより高めるべく、異なる種類のコンピューターを選んだ。

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「今回使いはじめたのはJetson Nanoです。これにより、より高い精度で対象を検出できるディープラーニングの技術を使用することができました」とラフマトゥリン。Jetson Nanoは小型コンピューターだが、機械学習アルゴリズムを設定できる。まず、2台のカメラからのデジタル信号をコンピューターが処理してゴキブリの位置を特定。そのデータをガルバノメーター(検流計)へ転送し、レーザーの向きを制御してターゲットに照射するという流れだ。

The cockroach-killing laser turret design

ゴキブリ駆除用レーザーマシンの設計図。IMAGE: RAKHMATULIN ET. AL./ORIENTAL INSECTS

本論文によると、ラフマトゥリンはこのシステムで異なるレーザー出力レベルを試したという。低出力レーザーでは、逃走反応を引き起こしゴキブリの行動に影響を与えることができた。この方法を使えば、暗所に隠れないようにゴキブリを調教することができそうだ。一方、高出力レーザーではゴキブリは、論文の言葉をそのまま使うと「無力化」、すなわち殺傷された。

ラフマトゥリンは全データや説明書を無料で一般公開しており、正しい注意に従えば誰でも試すことができる、と述べている。

「ハードウェアもテクノロジーも安価なものを使っていますし、オープンソースにしています」とラフマトゥリン。「ソースはすべて私のGitHubに公開しているので、どのようにつくり、使用するかも確認していただけます」。彼によれば、すでにこのデータをスズメバチなど他の害虫に応用しているひともいて、それは理にかなっているという。「ゴキブリを退治できるなら、農業害虫も退治できるはずです」

プロジェクトのオープンソース化のみならず、広く応用できる可能性があることもこの技術が注目に値する点だ。機械式の捕獲器や、環境や益虫にも悪影響を与えてしまう殺虫剤に代わる妥当な方法となりうる。しかも現行の害虫駆除技術よりも安価であり(論文によると装置全体で250ドル(約3万6000円)しないそうだ)、より小型だ。

ただ、このプロトタイプは研究には適しているとはいえ、より広範に展開するためには乗り越えるべき数々のハードルがある。たとえば論文では、レーザーポイントが小さいほどより効果的にゴキブリを殺すことができるが、実験的に行うことは難しいと書かれている。また同論文は、ゴキブリのどの部位に照射するかを正確に制御できるようになると有益だと述べている。

また残念なことに、家庭で使用するには今はまだ早い。「少々危険なので、おすすめはできません」とラフマトゥリン。「レーザーはゴキブリだけでなく、人間の目にダメージを与えてしまう可能性があります」

まだブラックキャップ(ゴキブリ対策グッズ)を手放さないほうがよさそうだ。