サル痘に感染するとどうなるのか?経験者が解説

「最初に発疹ができたのは尻。これが一番痛くて、座ることもできませんでした」
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Photo by Marina Demidiuk via Getty Images

サル痘の診断や治療に関する詳しい情報については、厚生労働省国立感染症研究所のサイトを参照してください。

今、世界で感染が拡大しているサル痘。米国疾病対策予防センター(CDC)によれば、2022年7月14日時点で、これまでに症例の報告がなかった59ヶ国・地域で1万人以上の感染が確認されているという。サル痘が空気感染するかどうかはいまだに科学者の間でも意見が分かれるが、ひとつ確かなのは、皮膚病変に触れた衣服や寝具などとの接触を含め、体液や典型的な症状である発疹に直接触れることで感染するということだ。初期のデータでは男性と性的関係をもつ男性の感染率が高いことが示されたが、サル痘はあらゆる密接な接触を介して誰もが感染する可能性があり、非性的な接触によっても感染するため、性感染症に分類されていないことは注目に値する。

サル痘の感染拡大は懸念すべき事態だが、幸いなことに、感染者の大多数にとっては命に関わる疾患ではない。今年6月の世界保健機関(WHO)の報告によれば、上半期の全世界2103の症例のうち、死亡例は1件のみだった。サル痘の症状は発熱、頭痛、筋肉痛、腰痛、リンパ節の腫れ、寒気、倦怠感、そしてご存知のように、ニキビや水膨れのような小さな発疹だ。もちろん、全員にこれら全ての症状が現れるとは限らず、他のウイルス感染症と同様、サル痘ウイルスに対する反応は人によって大きく異なる。

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しかし、データや症状の羅列からは、実際に感染するとどうなるのかはわからない。あるサル痘経験者は、精神的苦痛は言うまでもなく、この疾患は激痛と孤独感を引き起こすと語る。具体的な症状を探るため、VICEはサル痘からようやく回復し、隔離期間を終えたばかりのロンドン在住の31歳のクルーズ船ダンサー、スコット・マクドナルド(Scott McDonald)にインタビューを敢行した。

──最初にサル痘について知ったのは?

最初に話を聞いたのは5月か6月頃。まだ船で仕事をしていたときでした。ニュース記事を読んで、「うわ、やめてくれよ……」と思いました。ずっと夏の休暇を心待ちにしていたので。6ヶ月も船上にいて、プライドのためにバルセロナから30分ほどのところにあるシッチェスに行くのが本当に楽しみだったんです。ゲイバーやゲイビーチがたくさんあるゴージャスな海辺の町です。「サル痘のせいで台無しになったら最悪だ。ずっとこれだけを楽しみにしてきたのに」と思っていました。僕は病院の集中治療室でコロナの患者さんを相手に看護助手としても働いていたので、「普通に楽しめばいいだろ?」という友だちよりももう少し真剣に受け止めていたと思います。意識はしていましたが、計画を変えるほどではありませんでした。結局シッチェスに行って、最高の時間を過ごしました。

──症状の経過について教えてください。

6月9日から16日までシッチェスに滞在しました。その翌週の確か木曜日ごろ、少し体に不調を感じました。普段はしないんですが、ちょっと昼寝をしたくなって。微熱もありました。ネットで情報を探して、足の付け根のリンパ節の腫れについての記事を見つけました。そのときに「これは絶対何かある」と思ったんです。でも、友だちとはYouTubeで見たスクワットを初めてやったから足がつったのかも、なんてふざけて話していました。こういう時はとにかくこれは違う、って自分に言い聞かせるんです。コロナと同じですよ。コロナかもしれないとわかっていても、「違う、これはただの風邪だ」って。サル痘の症状が現れ始めるのは平均で6〜16日前後で、(保健当局は)発疹のことばかり強調していたのですが、僕は発疹は出なかったので「これは違う、大丈夫だ」と思っていました。長い間誰にも会えていなかったので、今日ある友だちに会って、翌日には別の友だちに会って、という感じで過ごしていたんですが、このとき大勢に会ったせいで、接触確認が本当に大変でした。

──サル痘の検査を受けようと決めたのはいつですか?

肛門の小さなしこりに気づいたとき、よし、性的健康サービス(Sexual Health Services)の検査を受けよう、と決めました。いろんな可能性が考えられるし、大きなパーティーに行ってきたばかりだったので。でも、この検査はかなり混み合っていて、水曜まで電話がつながりませんでした。6月24日の金曜日に急遽予約を取ったといわれましたが、それでも2日後でした。

検査ではあらゆるものをチェックし、発疹から直接体液を綿棒で採取したあと、ロンドンではこういう症例が急増しているため、ヘルペスや梅毒などの似たような症状に関しては、検査結果が出るまですべてサル痘として扱うよう指導されているといわれました。結果が出るまで自主隔離するようにいわれましたが、3〜4営業日はかかるとのことでした。結局結果が出たのは4〜5営業日後だったので、かなり時間がかかりましたね。

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──症状はどのように進行しましたか?

その頃には顔、手、足、それから足の裏や甲など、普通は吹き出物ができないような場所にまで吹き出物ができました。なので、もっと慎重に自主隔離するようにしました。結果は陽性でした。なんとか乗り切りましたが、その頃にはもう最悪のときは過ぎていました。こんなに高い熱やひどい倦怠感は生まれて初めてでした。

僕にとって最悪の症状は、発疹でした。最初に発疹ができたのは尻。これが一番痛くて、座ることもできませんでした。ひどい痛みが数日続きました。1日中鎮痛剤をのんでいましたが、効き目が切れると夜中に目が覚めるんです。それが徐々に治まると、他の場所にできた発疹は大して痛くありませんでした。ただじれったくて、退屈なだけです。発疹が治ってかさぶたになり、それが剥がれ落ちて新しい皮膚ができて、もう感染しないとみなされるまで待たなければいけません。最初はニキビのようなただの小さな赤い吹き出物ですが、その後写真で見るような特徴的な発疹、真ん中に白い膿が溜まるドーナツ型のものへと変化します。シリアルのチーリオとかフルーツループの小さい版みたいな感じで、直径は約5ミリほどです。

──自主隔離が解除されたのはいつですか? それまでにどれくらいかかりましたか?

まだ発疹は完全には消えていなくて、それが完治するまでは12歳以下の子どもや妊娠した女性とは接触しないようにといわれました。でも(保健当局によれば)僕の場合は体を覆えばもう隔離期間を終えていいみたいです。送られてきたガイダンスによれば、48時間以内の発疹や72時間以内の発熱がなく、残っている発疹にすべてかさぶたができていれば、隔離を終えてもいいとのことでした。痛みがあるのは7日か8日だけで、今日で症状が出始めて2週間になります。

──予想していなかった症状はありましたか?

体が良くなっても、精神的な症状、つまり当たり障りないことに対するフラストレーションが残ったことです。これは本当に厄介です。あのせいで誰かにうつったかもしれない、そしたらそのひとも僕みたいな痛い思いをするんだ、と。母に電話して、孫娘の誕生日パーティーに行かないように伝えなければなりませんでした。サル痘は子どものほうが重症化リスクが高いので。精神的な影響は想像以上でした。性感染症のような恥ずかしさや偏見を伴うものですが、うつしてしまうかもしれないので友だちや家族に公表する義務があります。

──サル痘に感染する恐れのある人びとやLGBTQコミュニティに伝えたいことは?

情報はどんどん変わっていくので、みんなが常に最新の情報を把握しておく必要があります。それから、変な場所にひとつ吹き出物ができただけでもサル痘の可能性があるということも知っておくべきです。みんながすごく慎重になり、しっかりチェックしておかないと。エイズの起源や偏見がもたらした被害から何か学んだことがあるとすれば、その歴史を重く受け止めるためにはひとりひとりが責任をもち、注意するべきことを自分なりに調べるべきだということです。

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