2020年1月6日、バンコクのタイ伝統代替医療開発局(DTAM: Department for Development of Thai Traditional and Alternative Medicine)に開院した大麻クリニックで展示されていた、カンナビジオール(CBD)オイル製品が陳列されたショーケース。PHOTO CREDIT: MLADEN ANTONOV / AFP
タイ全国農業者協議会(The National Farmers Council of Thailand)のプラパット・パンヤチャートラック(Prapat Panyachartrak)議長は、2018年のAFPの取材で、「大麻の栽培と原料の販売」により、国家として年間1000億バーツ(約3400億円)もの歳入が見込まれると述べていた。タイ保健省のアヌティン・チャーンウィーラクーン(Anutin Charnvirakul)長官は今月頭の取材で、新法による医療用大麻の製造増大と、大麻を主原料とした医薬品の主要製造国になることへの期待を述べた。「この法案は製薬業界の活動を振興し、競争力を高めることになるだろう。タイが医療用大麻先進国となるためには非常に重要だ」大麻業界専門のマーケティング・調査会社のProhibition Partnersによる2019年のレポートでは、タイの大麻業界は2024年までに210億バーツ(約630億円)規模に成長すると予測されており、タイの医療用大麻推進派の大物たちの期待を裏付けている。バンコク、チュラロンコーン大学の生薬学・薬用植物学助教授、ソーンカノック・ヴィモルマンカン(Sornkanok Vimolmangkang)博士によると、現在医療用大麻は、タイ国内の「いちばんイケてる」薬用植物となっており、だからこそ医療、製薬業界がこぞって大麻を使用した医薬品の製造に乗り出しているそうだ。新法が施行されればタイ国内の大麻業界の動きが加速し、その結果、特に大麻生産が巨大農家ネットワークを囲い込むほどに拡大したならば、大麻の供給過多となる可能性もあるとソーンカノック博士は説明する。カナダ、ゲルフ大学の環境科学教授で大麻製造の専門家、ヨウビン・ジェン(Youbin Zheng)博士は、この新法により間違いなくタイの農業における主要作物である大麻の生産は伸びるだろうと述べる。ジェン博士によれば、大麻は非常に価値の高い作物で、栽培を成功させるためには先進技術を用いた高性能設備を必要とするという。博士は、その複雑な栽培に対応していくことで国内の農業インフラ全体の進歩につながって、結果的に医療用大麻業界が他の作物の生産にもメリットを与えることになるだろう、と予測している。
「何を育てているのか、それがどういう形になるのか、そのあとどこへ行くのか。そういった質問にさえも答えられない程度の大麻の知識しか、彼らにはありません」とチョパカはいう。彼女によれば、今のタイの大麻業界は未成熟だ。「そういった質問に答えが与えられることはほぼありません。政府は輸出を増加させたいと言いますが、どの国に輸出するのでしょう? どういった形状で? 規制や基準は?」さらに、大麻にまつわるスティグマや犯罪と関連付いたイメージを払拭できるのか否かも議論の的となっている。タイの一般市民にとって、大麻の使用は「悪いこと」であり、「ひとを怠惰にさせるもの」とみなされているとチョパカは語る。彼女によれば、怠惰な人間はタイの社会でひんしゅくを買う存在だそうだ。さらに、タイ社会ではいまだに、大麻の使用は他の薬物の使用につながると思われている。これは誤解だ。米国政府の研究機関である米国国立薬物乱用研究所(National Institute on Drug Abuse)の調査によれば、大麻使用者の大半は、より習慣性のあるドラッグには移行しないという事実が明らかになっている。ニューヨーク州立大学バッファロー校のヘルスアウトカム・創薬インフォマティクス・疫学センター(Center for Health Outcomes, Pharmacoinformatics and Epidemiology)のエドワード・ベドナーチク(Edward Bednarczyk)所長は、タイで大麻に注目が集まるのは、犯罪のイメージと結びついているからこそだと指摘する。「私たちは逆ですね」と所長はVICE Newsの取材に語った。「患者が大麻による治療法に惹かれるのは、大麻が違法だったからこそだと考えています」「〈禁断の果実〉がついに味わえるようになった、といったところでしょうか」