信頼性の高い避妊法の〈1%の例外〉が我が身に起きたら?

経口避妊薬や子宮内避妊器具などは、妊娠を防ぐための効果的な避妊法とされている。しかし、避妊失敗率は極めて低いとはいえ、100%確実な方法は存在しない。その〈極めて低い〉可能性が我が身に起きたら、あなたはどうする?
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translated by Ai Nakayama
Tokyo, JP
信頼性の高い避妊法の〈1%の例外〉が我が身に起きたら?
Eleanor with her child. Photo: courtesy of subject

16歳のときのエレノア・ワトキンス(仮名)は、一般的な16歳らしい人生を送っていた。初めての彼氏ができて、GCSE(英国の全国学力試験)に悩み、週末にはパーティー。しかし生理が1ヶ月こず、放課後に妊娠検査薬を使ってみたところ、結果は陽性。友人のジョージアの家で、彼女は床に突っ伏して泣いた。彼女はVICEの取材にこう答えた。「ジョージアがこう言ったのを覚えてます。『エル、赤ちゃんが生まれるんだよ』って」

エレノアはおびえた。「私はあまりに若かったし、輝かしい未来が私を待っていた。これまでの人生が走馬灯のようによみがえりました」。彼女の恋人は、彼女が妊娠したと知ったすぐあとに浮気をしたが、彼女は赤ん坊を堕ろさないと決めた。同級生が大学準備のためのシックス・フォーム(Sixth Form、大学進学準備のための教育課程)に進むなか、彼女は十代でシングルマザーとなった。

しかし、彼女の物語はよくある十代の妊娠、ではない。エレノアは妊娠時、経口避妊薬を2年間服用していた。彼女は、避妊をしていながらも妊娠してしまう、数少ない事例を体験したひとりなのだ。

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女性の避妊方法は11通り以上あるが、パッチ型避妊薬、IUD(子宮内避妊用具)、低容量ピルなど、長期にわたる避妊法は、医師による処方で正しく装着・服用すれば、99%以上の避妊効果を得られる。

しかし残りの1%になってしまったひとたちにとって、避妊の失敗率は受け入れがたい。

「検査の結果を見たときは崩れ落ちました。完全に打ちのめされました」と語るのはソフィア・ロレンツォ(仮名)。彼女は1年近く銅付加IUDを装着していたが、妊娠した。「妊娠の可能性もある、なんて全く思っていませんでした。ただ不安を解消するために検査をしたんです。IUDは99.999%の避妊効果があると言われていますが、まさか自分が避妊に失敗するなんて」

ロンドンで科学研究の助手を務めているソフィアがIUDを選んだのは、長期間の効果がある避妊法として信用できると思ったからだった。IUDは一度装着されたら5〜10年は効果が持続する。

23歳のソフィアは、エレノアと違い中絶を選んだが、自分がそんな選択をすることになるとは考えてもいなかったという。「昔から、もし自分が望まぬ妊娠をしてしまったら決断に苦しむことになるだろうとわかっていました」とソフィアは語る。「私が避妊することにしたのは、安心のため、そして私の人生で中絶という選択肢をとることがないようにしたかったからです」

IUDを装着している女性は、経口妊娠中絶薬を飲む前に器具を取り外す必要がある。さもなくば、出血を招く可能性があるからだ。「医者に起きたことを説明したら、『あなたは1000人にひとりだ』といわれました。その言葉を聞いて、違和感を覚えました」

「1000人にひとり、というと少ないように聞こえます。でもロンドンに暮らす、妊娠可能な女性が何人いるか考えると、そこまで少なくはないんですよね」

ロンドンの産婦人科クリニック〈London Gynaecology〉の顧問産婦人科医のひとり、ナレンドラ・パイザルはこう説明する。「全ての避妊法には失敗する確率があり、実生活で使用されるもので、100%避妊効果がある方法はありません」

IUDを装着していた状態で妊娠することは「一般的ではない」ものの、絶対に確実な避妊法はない、と彼はいう。

ワシントンDCに暮らすデイケアのスタッフ、マリッサ・トスティは、避妊パッチを1年近く使い続けるなかで、抜け毛、気分のむら、体重増加などといったマイナスの副作用に耐えなければならなかったという。しかもその避妊効果は確実ではなかった。不審な症状が現れはじめ、妊娠検査薬を試すと結果は陽性。彼女の不安は的中していた。

妊娠しないよう、できる限り用心していた彼女は、その結果に混乱した。「もともと避妊なんてしたくなかった。ホルモン剤はイヤだったんです。それでも避妊を決めました」と彼女は振り返る。「するはずじゃなかった妊娠をして、すごく動揺しました」

マリッサは16歳で初めての子どもを産んだ。高校でできた彼氏、マットとの子どもだ。マリッサの母親は中絶を望んだが、彼女は出産を選んだ。そして19歳で再びマットとの子どもを妊娠し、マリッサたちはその子も産むことに決めた。

しかし、第二子妊娠をお互いの家族に告げた12時間後、マリッサは流産を知った。6週目だった。「心が痛みました。準備ができる前に奪われてしまったような気がして。あんなことに耐えられるひとがいるとは思えません」

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自分が選択したこと、あるいは選択ができなかったということが、女性の精神やセックスへの姿勢に長期的な影響を及ぼす。現在27歳になり、ノーサンプトンシャー州で支援員として働くエレノアは、「ずっと怒りを感じていました」と吐露する。「あのときの私の年齢がもっと上だったら、選択ができる立場にあれば、って。なんだか騙されたような気がして」

妊娠から10年経ち、彼女の人生はうまく収まっているが、当時はとてもつらかった、と彼女はいう。「かなり批判されました。学校のみんなは私がピルを飲んでいたことを信じてくれず、もともと妊娠を計画してたと思われてましたね」

さらにエレノアはこう語る。「もちろん、私の息子に対しては、憤りや怒りなどは感じません。彼が生まれてきたいと望んだわけじゃないし。だけど、どうしてあんなに気をつけていた私が妊娠してしまったのか、それが理解できなくて」

エレノアは現在、望まぬ妊娠の可能性を少しでも減らそうと、コンドームとIUDを並行して使用している。「用心しすぎなくらい用心したいと思ってます」

中絶後、避妊法を信用できなくなったソフィアは、ピルを飲んでいる今も、セックスのあとで妊娠の心配をしてしまう、と語る。「あまりに怖くて、次の日にモーニングアフターピル(緊急避妊薬)を飲んだこともあります。用心しすぎなくらい用心しないと、と思って」

彼女は、避妊が失敗したことに怒りを覚えているという。「私は、妊娠しないようにできることは全部やりました。もっと信頼できる方法があるといいんですけど」

あらゆる避妊法に失敗の可能性があることは理解はしているとはいえ、それでも時折、自分の身体がおかしいから避妊に失敗したのではと感じてしまう、とソフィアはいう。「ひとりきりのときは、自分が何かいけないことをしてしまったのかも、という考えが頭から拭えないんです。絶対にそんなことしてないんですけど」とソフィア。「科学の世界に身を置いているので、私個人に不具合があったわけじゃないとはわかってます。失敗したのは器具のほう。器具への身体の反応がおかしかったわけじゃない」

マリッサが3人目の子どもを出産したあと、マットは、これ以上自分のパートナーを妊娠させないために精管結紮(パイプカット)をすることに決めた。彼はそのとき26歳だった。

しかしマリッサは、その効果について懐疑的だ。「心の奥では、妊娠の可能性はある、という思いが消えないし、怖いですね。特に、もうこれ以上子どもはいいや、と思っているので、万一もうひとりできてしまったら、と考えると恐ろしくなります」

パイプカットは男性が行える唯一の避妊手段で、男性の精管を切断・結紮して精子が外に出ないようにする。その効果は永久に続くとされているが、女性の避妊法同様、避妊に失敗する可能性も1%ある。

But, as Sofia says, categorising people into statistics is reductive and can make people forget just how intensely personal an experience it is. “To everyone else you're just a number – but that ‘one’ is still an individual who is going to think about it.”

She pauses. “I will think about it, most likely, forever.”

* Name has been changed

@Maighna_N

This article originally appeared on VICE UK.