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ジカ熱についてわかっていること

ジカ熱は、発熱、発疹、結膜炎などの症状を引き起こすウイルス性の感染症。頭痛や筋肉痛を発症する患者もいる。アメリカ疾病予防管理センターによれば、感染した5人に1人が発症するらしい。1週間程度で症状は治まる。ジカウイルスに感染した場合、入院する必要はなく、死亡例もほとんどない。

世界保健機関(以下、WHO)は、南北アメリカ大陸で爆発的に感染が拡大しているジカ熱への対応を協議するため、緊急委員会を開いた。

ジカ熱は、インフルエンザのような症状を引き起こすとして知られていたが、新生児の脳が先天的に小さく、脳の発達に遅れが見られる「小頭症」との関わりが指摘されている。WHOのチャン事務局長によれば、「最近疑われ始めた小頭症との関連性により、ジカ熱の危険性について認識を改めざるを得ない」「小頭症の事例が増加している事態を懸念している。家族やコミュニティも胸を痛めているに違いない」

以下、ジカ熱についての基礎知識。

ジカ熱とは。

ジカ熱は、発熱、発疹、結膜炎などの症状を引き起こすウイルス性の感染症。頭痛や筋肉痛を発症する患者もいる。

アメリカ疾病予防管理センターによれば、感染した5人に1人が発症するらしい。1週間程度で症状は治まる。

ジカウイルスに感染した場合、入院する必要はなく、死亡例もほとんどない。

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治療法は。

休息と鎮痛剤(アスピリンやイブプロフェンなどではなく、アスタミノフェン)で、症状を和らげられる。

新しい病気なのか。

そうでもない。南米に上陸したのが初めて、というだけ。

ジカ熱は、1947年、ウガンダ、ジカの森に生息するアカゲザルから初めて発見された。ヒトへの感染が確認されたのは、1952年、ウガンダとタンザニア。2007年には、ミクロネシア連邦のヤップ島で小さな流行が見られたが、南米・北米には上陸しなかった。

なぜこんなに話題なのか。

ブラジルで初めて感染が確認されたのは、2015年5月。そして11月、ブラジル保健省は、小頭症の新生児が10倍増加した事態に関して、ジカ熱感染拡大と関連性があるかもしれない、と発表した。

WHOによれば、現在24カ国に感染が拡大。

2016年1月15日、小頭症の新生児を産んだ母親が、2015年5月、ブラジル滞在中にジカ熱に感染していた、とハワイ保健省が発表。

小頭症とは。

胎児の時点で脳が完全に発達せず、同じ年齢や性別の小児と比較して、頭の大きさが小さい症状。

小頭症は病気ではなく症状。原因は様々で、遺伝による影響も考えられる。また妊娠中の母親が水痘などのウイルスに感染していた場合、胎児に感染し、小頭症を引き起こす可能性がある。母親が薬物や毒性のある化学物質を摂取した場合にも、小頭症を発症する恐れがある。

小頭症が原因で死ぬことはほとんどないが、可能性はゼロではない。無事生まれた場合にも、発達障害などを抱える場合があるが、問題なく日常生活を送る患者もいる。

本当にジカ熱が小頭症を引き起こすのか。

証明はされていないが、WHOのチャン事務局長は、その関連性について「強く疑われる」と発表した。今のところ、関連性を示す事例しかない。

どうなると、ジカ熱に感染するのか。

ジカウイルスは、ヤブカ属ネッタイシマカを媒介に感染する。デング熱やチクングニア熱を引き起こすのも、この蚊。

バンダービルト大学の医療センターで予防医学局長を務めるウィリアム・シャフナー氏によれば、「通常ヤブカ属ネッタイシマカは、アメリカのジョージア州のような北部に生息している」。同センターは、北米ではより一般的なヤブカ属のヒトスジシマカも、ジカウイルスを媒介し感染を引き起こす可能性があるのか否か、現在検証している。

さまざまな地域で感染が拡大しているのは、感染した旅行者が地元に戻り、そこで蚊に刺されるためだろう。感染した蚊がまた別の人間を刺し、感染が広まっていく。今回の場合、ブラジルで行われたワールドカップが原因では、と指摘する声もある。

アメリカでも感染事例があるのか。

今のところアメリカでは確認されていないが、アメリカ疾病予防管理センターの主席次長アン・シュチャットが、電話による記者会見で明らかにしたところによれば、首都ワシントンD.C.を含めた11の州で、海外から帰国した31名が、ジカ熱に感染していたという。

ワクチンはあるのか。

今のところ、ジカウイルスを予防するワクチンはない。アメリカ保健局員によれば、完成にはまだ時間がかかるそうだ。

ただ、カナダ人の研究者がロイターの取材に対して、8月にはヒトに対する治験を始められる、と語ったそうだ。2016年内には、緊急用ワクチンが入手できるようになるだろう。

ジカ熱にかからないようにするには。

アメリカ国立衛生研究所のフランシス・コリンズ所長は、旅行者、特に妊婦や妊娠する予定のある人に対して、感染しないよう用心すべきだ、と自身のブログで勧告した。

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「感染の恐れが有る地域に渡航する予定のある人は、肌を保護する服を着用する、虫除けの塗布、寝るときには網戸を閉める、エアコンを消すなどして、蚊に刺されないよう細心の注意を払うべきだ」

しかし、アメリカ疾病予防管理センターは渡航警戒を発令し、妊婦に対して、感染が広がる地域への渡航自粛を促した。いまだ関連性は証明されていないが、ジカ熱に感染した母親から小頭症の子供が生まれる恐れがある、というのが理由だ。

「深刻に受け止めている。女性にとっては、聞きたくない話だろう」アメリカ疾病予防管理センターの主席次長アン・シュチャットは懸念する。「(小頭症は)感染が広がる地域への渡航を自粛するよう呼びかけている理由のひとつだ。疑いがあるだけで、発症率やリスクに関して、決定的な証拠はない」

蚊を駆除すればいいのでは。

蚊の個体数を管理する努力は続けているが、シュチャット主席次長の言葉を借りれば、ヤブカ属ネッタイシマカを管理するのは「どうにも難しい」。なぜなら、彼らが活発になるのは日中だからだ。駆除のためには、繁殖地で蚊の生態系を殲滅、日中に屋外での殺虫スプレー散布、といった努力をしなければならない。

政府機関は何をしているのか。

WHOは、ジカ熱の対応について協議するため、2月1日にスイスのジュネーブで緊急委員会を開いた。そこで、ジカ熱の感染拡大について「緊急事態」だと宣言した。米国立アレルギー・感染研究所の所長アントニー・ファウチによれば、今後数カ月の間に、多くの政府機関が委員会を開く予定だという。

「国際的な協力を仰ぎながら、研究目標を共有し、共同で研究を進めていく」そうだ。「その成果は、すぐにみんなの耳にも届くはずだ」