2015年、エルサルバドル共和国での殺人発生件数は6,657人。人口10万人あたりの殺人発生率は104.2人で世界1位。2014年に比べ、殺人発生件数は67%増加し、2016年の正月三賀日だけでも72件の殺人が発生した。
ギャング・グループ「M-13」と「バリオ18」の抗争激化、ギャングと警察の衝突亢進。三つ巴の騒乱は未だ続き、エルサルバドル国民は戦戦兢兢と日々を過ごしている。
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2012年、「M-13」と「『バリオ18』内のふた派閥(レボリューショナリオス、スレーニョス)」の手打ちにより、殺人発生件数も低下し、近い将来平和が訪れるだろう、と皆が期待した。当然のごとく、その後、手打ちはいつの間にか反故になる。再混乱を恐れたエルサルバドル当局は、収監されているギャング団幹部と市井の中堅ギャングたちを分断すべく、幹部たちを最高警備レベルの刑務所へ移動させた。しかし、その目論見は外れ、指揮系統を絶たれたギャングたちは無軌道な暴虐の徒と化してしまった。
バリオ18は、あまりの傍若無人さから、2015年8月、エルサルバドル最高裁によりテロ組織に指定された。M-13は国際的なドラッグビジネスで勢力を拡大し続けている。エルサルバドル共和国は、今後どうなるのか。ギャング、一般市民、元左翼ゲリラ、暴力に巻き込まれたエルサルバドル国民の心情、現状を探るシリーズ、全5回。
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最終回。休戦協定による平穏化への目論見が外れた警察は、ギャングの掃討作戦により力を入れ始めた。ギャングが200人死ねば、同じ数だけの犯罪が失くなると思っている国民。そんな世論の多数意見を背に受け、作戦による死亡者が増加しようとも、2016年いっぱい続けると政府は公言している。しかし、警察による過度な武力行使は常軌を逸しており、それが無差別の大量虐殺に繋がると異を唱える者も出てきた。果たして、政府によるこの強硬策は、エルサルバドルに平和をもたらすことができるのだろうか。そしてギャングたちの頭の中にあるものは。
原題:GANGS OF EL SALVADOR – PART 5 OF 5 (2015)
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