ギュウギュウの通勤電車。そのつもりはないんですけど、前の人のスマホが目に入ってしまいます。先日は毛髪企業を熱心に調べていた若いスーツ姿の方。うーん、フサフサなのになぁ。〈育毛〉→〈発毛〉→〈植毛〉とサーフィンしたのち、かつら企業に至ったところで下車されました。上北沢だったら最高でしたね。「髪キタ! ザワーッッと!!」なんてね!! すいません。日々の生活の中で、私たちはたくさんの人たちとすれ違います。でもそんなすれ違った人たちの人生や生活を知る術なんて到底ありません。でも私も、あなたも、すれ違った人たちも、毎日を毎日過ごしています。これまでの毎日、そしてこれからの毎日。なにがあったのかな。なにが起るのかな。なにをしようとしているのかな。…気になりません?そんなすれ違った人たちにお話を聞いて参ります。※キム・シハン(きむ しはん)さん 24歳:留学生キムさんは、韓国のお方。日本語、めちゃくちゃ上手ですね!
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ありがとうございます(笑)。どちらの大学に留学しているんですか?東京外国語大学です。まぁ、優秀! 何学部ですか?国際社会学部の日本語科で、文化人類学を専攻しています。現在、何年生ですか?4年生です。ただ、兵役があったので、2年間休学していました。この4月から復学したんです。ああ、そうでしたか。キムさんは、今どちらにお住まいなんですか?西武多摩川線の新小金井です。大学は隣の多磨駅にあるので、ほぼ歩いて通っていますよ。おひとり暮らしですか?はい。ゴハンとか、どうされているんですか?なるべく自炊しています。なにをつくるんですか?普通にお米を炊いたり、麺を茹でたり。最近は、釜バターうどんばかりです。あれは簡単ですね。あれは美味いですよね! でも韓国料理が恋しくなりませんか?冷蔵庫にはキムチとコチュジャンがありますけど、すげえ食いたくなることは、そんなにありません。まぁ、食えればなんでもいいです(笑)。今4年生ですから、来年は卒業ですね。はい。卒論もやらなければなりません。今年の目標は卒業することです。卒業後のことは、考えてらっしゃいます?研究生になろうと考えています。それで留学ビザを延長して、そのあいだに就職活動をするつもりです。就職は考えているんですね。それは日本ですか? それとも韓国ですか?韓国に戻る気はないので、日本で就活します。ただ、どうしようか迷っていまして。あら。なにを迷っているんですか?どんな仕事がしたいのかわかりませんし、そもそも会社員になりたくありません、私。はい(笑)。スーツも着たくないです(笑)。ただ、冷静に考えてみたら、これからの人生において、会社員という経験は無視できないし、大事だとも思うので、1度はスーツを着てみるつもりです。エライですね! でも腕のタトゥーどうします? 夏でもスーツ着なくちゃなりませんよ。そうなんです。スーツを着ない覚悟で入れたハズなんですけど(笑)。そこはなんとかクールビズの技で隠します。
それにしても、たった4年間ですよね。こんなに日本語がペラペラになるなんて、やっぱりスゴイ。実は私、国立生まれなんです。国立って、東京の国立市ですか?はい、そうです。5歳くらいまで、国立にいたんです。ですから、最初に覚えたのが日本語なんです。ああ、そうだったんですね。ご両親のお仕事関係で日本に?父が一橋大学に留学していたんです。母も一緒に来日していまして、その時期に私は生まれました。さすがに5歳じゃ、当時のことをあまり覚えていませんよね?そうですね。ただ、ひとつ強く残っているのは、ウルトラマンですね。〈ウルトラマンティガ〉です。ティガは、誰が変身するヤツですか?ええと…あのひとです、あのひと。ジャニーズの…(カメラマン:宮本さん)V6の長野くんですね。ああ、そうです! そのひと! 私は本当にティガが大好きで、近くのおもちゃ屋に連れていってもらった記憶があります。あとは全然覚えていないですね。保育園の友達とか、国立の街とか。あらー、以前の国立駅も? 木造で可愛かったんですよ。〈関東の駅百選〉なんですから。そうでしたか(笑)。吉祥寺から先は、中央線も下を走っていてねぇ。はあ。そうですか。じゃあ、5歳で韓国に戻られて?はい。そこからハングルを覚えたので、ちゃんと喋れるようになるまでは大変でした。韓国のご自宅はどちらだったんですか?ソウルです。漢江(ハンガン)という大きな川があるんですけど、小2くらいまでは、その近くに住んでいました。とても静かで、公園もあって、ゆったりした地域だったんですけど、最近は再開発もあり、とても変わりました。高層マンションだらけになって、私はちょっと悲しいです。
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韓国の小学校も6年制ですか?はい。全部日本と同じです。小・中・高は、6・3・3です。小学校に入った頃は、もうハングルもマスターされていました?まぁ、なんとか。私のなかでは、自己主張できるまでにはなっていたと思います。ただ、〈日本生まれ〉ってことだけで、すごくイジメられていました。ああ。「オマエ、日本人だろ」「外国人だろ」って。小学生の段階で?はい。まぁ、みんな幼いですから、思ったことを口に出しちゃうんですね。ある意味、純粋なのかもしれないですけど、私にとっては残酷でした。でも、キムさんは日本人じゃないですよね。お父さんもお母さんも韓国人だし、ただ日本生まれってことだけなのに。はい。両親にも「おまえは韓国人だ。ただ日本で生まれただけ。その真実をちゃんと主張していきなさい」って、幼い頃からいわれてきました。小さい頃からそんな経験をしていたら、韓国のことが嫌になりませんでした?なんていうか、私にとっては、国という概念がなくなってきていましたね。韓国と日本のどちらにも所属しているんだけど、逆にいうと、どちらにもきちんと所属できないわけです。国籍は韓国なのに、他の韓国人とは違う目で見られる。〈日本に住んでいた〉だけではなく、〈日本で生まれた〉という事実が、更に訳のわからないことになっているんですね。在日韓国人のほうが、まだわかりやすいんです。なるほど。そうですね。ですから、自分のアイデンティティについては、強く考えるようになりました。〈ディアスポラ〉の本などを読んで、自分もそうなのかな、なんて考えています。
小学校でのイジメは長く続いたのですか?いえ、両親のいうとおりに主張していたら、小2くらいで終わりました。あとは普通に友達と遊んでいましたよ。よかったです! どんなことをして遊んでいました?日本と同じですよ。友達と一緒にポケットモンスターのゴールドとシル…あ、金と銀をやったり。いい直してくださって、ありがとうございます(笑)。スポーツとかは、やっていました?水泳をやっていました。ああ、今もステキな肉体をお持ちですものね!いえ、これは最近のモノですよ(笑)。軍隊が暇だったので、筋トレをやっていたんです。失礼しました。塾とかには通っていました? やはり韓国というと、熾烈な受験戦争のイメージがあるのですが。英会話とか、ピアノ教室には行ってましたけど、いわゆる受験用の塾には通っていませんでした。じゃあ、中学校は普通の公立に?はい。中学時代はよかったですよ。お! 楽しかったと?まぁ、平和でした。いい感じだったと(笑)。なにがいい感じだったんですか? やっぱり女の子関係ですか?女の子とかはなかったですよ。そんな意識は、まだなかったですよ。でもK-POPのお姉ちゃんとかスゴイじゃないですか?あれは、K-POPのお姉ちゃんだからですよ。まあ、そうですけど。でも、あんなお姉ちゃんがまわりにたくさんいたらねぇ。いません(笑)。日本人のみなさん、幻ですよ。そんなイメージを持っているんでしょうが、そんなにいませんよ。特に男子はいない。韓国に行ったら、しようもない男ばっかりですよ。私を見ればわかりますよね?そうなんですか(笑)。超新星みたいな男子はいないんですか?いません。しようもない男ばかりですよ。じゃあ、キムさんがいうところのしようもない男を教えてください。うーん…容姿とは離れますが、思想的にマッチョな男が多いんです。私は彼らが大嫌い。やっぱりみんな軍隊に行くから、そうなっちゃうのもわかるんですけど、韓国は、軍隊から帰ってきてからこそが1人前、行かないヤツらはなんなんだ? っていう風潮が多いんです。そして、軍隊で覚えた階級社会が、そのまま実社会に持ち込まれている気がします。そんな社会が韓国には蔓延している。だから、私は韓国に戻りたくないんですね。
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でも、中学生なら、まだ兵役前じゃないですか。そんな意識も少ないのでは?いえ、どうしても意識はしてしまいます。というのも、小さい頃から大人には「そんな様子じゃ、軍隊で通用しない」とか「軍隊では耐えられないぞ」なんて、いわれ続けるんです。「まだ、入隊まで時間があるのに、中学生なのに、なんでそんなこといわれなきゃならないんだ」って、いつも思っていました。他のみんなは、どうだったかわかりませんが。でも中学生活は、いい感じだったんですよね? どんなことをしていたんですか?お酒を飲んだり…あら、キムさん、グレちゃったんですか?いえいえ(笑)。そういうちょっとやんちゃな友達とはお酒飲んだりしましたが、真面目に勉強もしていましたよ。真面目とやんちゃの真ん中にいました。趣味とかはありました?小学校の頃から音楽ですね。父親が好きで、たくさんCDがあったんです。日本のCDもたくさんありましたよ。ドリカム、BEGIN、井上陽水、サザンとか。あとレッド・ツェッペリンや、もちろん韓国の音楽もありましたね。キムさんは、どんな音楽が好きだったんですか?メタルとかハードコアです。〈デスノート〉のアニメから、マキシマム ザ ホルモンにハマりましたね。あとは、ちょっとV系も。NIGHTMAREとか。日本のバンドがお好きだったんですね。ちなみに韓国のメタル〜ハードコア・シーンは、どんな感じなのですか?シーンはあるんですけど、やはり日本に比べると小さいですね。でも奥が深いですよ。VASSLINEという、20年以上やっているバンドがいるんですけど、このバンドも大好きでした。でも中学生だから、ライブには、なかなか行けません。ですから、ライブハウスには入らず、店頭にあるフライヤーを集めるのが私の趣味でした。ひとりで行っていたのですか? まわりにホルモンのファンはいなかった?ホルモンどころか、メタルを聴いている同級生は、まったくいませんでしたね。じゃあ、みんななにを聴いていたのかしら? やっぱりK-POP?わかりません。K-POPにはまったく興味がありませんでしたから。でもK-POPのお姉ちゃんとかスゴイじゃないですか?またですか(笑)。ですから、興味ありません。
いい感じだった中学に続いて、高校時代に参りましょう。やはり受験は大変でしたか?いえ、韓国に高校受験はないんです。外国語とか、科学などを専門に学ぶ〈特別目的高校〉に入学するためには、それなりの試験があるんですけど、一般的な普通高校は、中学校と同じように、住んでいる地域で振り分けられるんです。知らなかった! では、私たちがニュースで観る韓国の受験戦争というのは…あれは全部大学受験です。じゃあ、韓国の小学生や中学生が塾で猛烈に勉強しているシーンは…はい、大学のためなんです。ですから、受験は1回しかないんです。そうだったのかー。小・中・高で12年間勉強しますけど、それは大学に入るためだけの勉強なんです。だから理不尽なんですよ。そういった世論からの声もたくさんあります。キムさんは、日本の大学を選びました。どうしてですか?小学校5年のとき、父が北海道大学の客員教授になったので、1年間だけ北海道に住んでいたことがあるんです。それを機に日本語の勉強を続けていたので、留学への意識が高くなっていたんですね。最初は、韓国の大学にある日本語学科も考えたのですが、やはり韓国の受験制度に対して、疑問を持っていました。この受験のための勉強は、今後の私にとって意味のないことでは? 時間の無駄では? そう思ったので、日本への留学を決めたんです。
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中学生活は、いい感じだったとおっしゃいましたが、高校生活はどうでしたか?ここでまたイジメが始まりました。ああ。〈日本で生まれた〉からですか?はい。その他にも色々なことが重なりました。耐えられなかったですし、日本への留学のための勉強もきちんとしたかったので、2年のときに転校したんです。でも、住んでいる地域で振り分けられるんですよね?はい。ですから引越もしたんですよ。そうなんですね。新しい高校はどうでしたか?とても自由な校風だったのでよかったです。いい感じでした(笑)。でも日本への留学を目指しているなら、高校の勉強だけではなく、日本の大学への受験勉強もしなくてはなりませんよね?そうですね。でも高校2年くらいまでは、共通する部分もあるんです。ですから、それまではちゃんと授業を聞いていましたが、高3になってからは、授業中も留学用の勉強ばかりしていましたね。どうして東京外国語大学を選んだのですか?父からの薦めです。というのも、父の母校でもあるんです。ああ、そうなんですね。ちなみに入学試験は、来日しないと受けられないのですか?はい、その通りです。まず書類選考があるんですけど、それに受かったら、入試を受けられるんです。入試の問題は何語なんですか?もちろん日本語ですよ。ええ! これから勉強するのに?留学を準備している段階で、ある程度は日本語の読み書きができなくてはダメなんです。私より上手い人なんて、たくさんいましたよ。そして合格! おめでとうございます!!はい。結局は受かったからよかったんですけど、合格発表のときは、私の名前、無かったんです。んん? どういうことですか?インターネットで発表されたんですけど、名前が無かったんです。ですから、落ちたと思っていたわけです。「もう、軍隊入ろうかなぁ」なんて(笑)。はい(笑)。そしたら入学式の1週間前くらいに、いきなり大学から電話がありまして、追加合格だと。おおー。どうやら定員割れになったようで、ギリギリで合格したんです。おめでとうございます! でも入学式の1週間前ですよね? もろもろ準備はできたんですか? ビザも取らなきゃいけませんよね?留学ビザは、間に合わなかったので、最初は観光ビザで入国して、あとで取りました。住まいもなかったので、父の知り合いにお願いして、東村山の寮になんとか。合格したのは嬉しかったですけど、「ふざけんな、急過ぎる! 時間くれ!!」なんて(笑)。本当にお疲れさまでした(笑)。あたらためて日本での生活が始まりましたが、大学はどうでしたか? なにか新しいことを始めました?髪を伸ばし始めました。アハハ! さすがメタルヘッズ! でも今は短いですよね? もう飽きた?いえ、兵役があったので切りました。ああ、そうか。女の子関係は、どうでした? さすがにもう興味がないなんて無いでしょ。まぁ、おつきあいもありました。よく彼女ができたと思います(笑)。でも近い話なので、ここではごめんなさいです。すいません。了解です(笑)。サークルとかは入りました?はい、ブラジル音楽を演奏するサークルです。ブラジルのメタル・シーンも激アツですものね! セパルトゥラ!!はい(笑)。それでは兵役のお話もお願いします。期間は2年間でしたっけ?私は陸軍だったので、1年と9ヶ月です。どこに所属するかは、自分で選べるのですか?希望先があれば選べますが、それが無ければ陸軍になります。
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30歳までに入隊しないといけないんですよね?はい。でも大学生は、だいたいみんな1年とか2年で入隊するんですよ。でも、キムさんは大学3年が終わってからですよね?はい。大学のサークルがあったので。ん? サークル?本当は私も大学2年が終了してから入隊しようと考えていたんですけど、3年でサークルの幹部になることになったんです。兵役後だとできなさそうでしたし、幹部を経験しておきたかったので、3年を終えてから入隊したんです。サークルも大事ですものね。では、入隊後の流れを教えてください。陸軍の場合は、まず軍人としての基礎教育と訓練を1ヶ月ほど受けます。その後、ランダムでそれぞれの部隊に配属されます。その時点でスマホと煙草は没収されます。お酒は?元々お酒は飲んじゃいけません。キムさんは、どちらに配属されたのですか?かなり北のほうの部隊に配属されました。〈自走砲〉という、戦車に近い射撃車両の部隊でした。1日のスケジュールを教えてください。朝6時半に起床します。まず、そこで点呼を取ります。遅れると、バチ怒られます(笑)。バチですか(笑)。はい(笑)。そこからグランドを6周くらい走って、朝食。そのあとは1日中、訓練のための訓練をして、就寝は22時です。訓練のための訓練?はい。大きな実習訓練の日が設けられていまして、その訓練日に向けて、日々準備をしているんです。キムさんは、どんな実習訓練をされたんですか?実習訓練では、あらゆる状況への課題を与えられます。〈あそこに標的がある場合、どのように進めるべきか?〉みたいな感じですね。まず自走砲を操縦します。どのルートで移動し、どんな火薬を使って、どこから砲撃するべきか? そんな感じで、すべての要素を考え、組み合わせながら、即興で進めていくんです。でも訓練には、それなりの体力が必要になりますよね? 非力な人もいると思うのですが、そういった人もついていけるものなのですか?そこは自分でなんとかしなくてはなりません。まぁ、暇だったので私は筋トレしていましたけど、なにもやらない人もたくさんいます。本当に様々ですよ。明らかにやる気のない人たちもいますし。お休みの日はあるのですか?週末と祝日は休みになります。1年を4期にわけているのですが、各期ごとに、外出1回、外泊1回と定められているんです。ですから、休みとはいっても、いつでも外出、外泊できるわけではありません。キムさんは、どちらにお出かけをしていました?外泊は実家に。外出のときは、ひとりで映画とかでしたね。でも男だけの生活ですよね。ムラムラして、おひとりで処理するにもAVとかもありませんよね?それ以前に、そういった行為を表に出してはダメなんです。んん?そもそも軍紀に違反するものだから、規則的にアウトなんです。オナニーもダメですし、エロ本を持ち込んでもダメ。見つかったら懲罰を受けます。とはいっても、隠れてね。はい(笑)。じゃあ余暇もまったくなかったと。煙草くらいですね。部隊に配属になってからは、煙草が吸えるようになるんです。もうスパスパでした(笑)。でも確か、お給料も出るんですよね?出ますけど、私の頃は月1万円ですよ。今はもうちょっと上がったらしいんですけど、それでも少ない。もう本当にブラック。ブラック(笑)。国家の義務として呼んでいるんだったら、せめて国家で定めている最低賃金は守るべきだと。これは国家としておかしい。入った頃は、ずっとそう思っていました。当時は、パンクとかアナキズム思想に染まっていましたので(笑)。
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はい(笑)。まあ、結局はそのお金でタトゥーを入れたんですけど(笑)。アハハ!! 最強のパンクスですね! さて、そんな1年と9ヶ月の兵役生活。いかがでしたか? やはりキツかったですか?私はもう、解脱していたというか。ニルバーナです(笑)。まぁ、なんとか耐えられました。ただ入隊したことで、やはりいろんなことを学びました。価値観が明らかになったというか。先ほどもおっしゃっていましたよね。韓国は、軍隊の影響が強いと。その考えも、入隊しなければわかりませんでしたから、経験としては悪くありませんでした。1年9ヶ月のなかで、自分の考えを整理することができましたし、これまで自分が所属していたあらゆる場に対しても、客観的に見えるようになりましたから。やはり兵役が終わったときは、ホッとしました?はい。やはり幼い頃からずっと意識はしていましたから、開放感みたいなものはありました。もし入隊していなかったら、逆に韓国の軍隊社会の考えにずっと縛られていたかもしれません。
さて、キムさんは、日本生まれの韓国人ですが、日本の若者に対しては、どう考えてらっしゃいますか? 韓国ではパク・クネ元大統領に対し、大勢の若者がデモに参加しましたが、このような状況は、日本では強く見られません。そうですね。あのデモのとき、私は軍隊にいたので参加できませんでしたが、私も参加したいと強く考えていました。ただ、あのときは軍からも「休暇だとしても、あのデモには参加するな」といわれていたんです。それは理解できますよね。軍のトップである大統領と政府に対するデモなのですから。あの大きなデモは2016年の11月でしたが、当時、私は訓練で1ヶ月間、野外でテント暮らしをしていたんです。幹部は携帯を持っており、デモの状況を把握していたので、こんなことをいってました。「俺の国終わったな」「大統領変わったら、俺たちどうなるんだろう」って。軍人の立場だから、しようがないのですが、軍人も国民です。それなのに、デモに参加できない、意見もいえない、自己主張もできない、そんな立場に大きな違和感を感じたんですね。やっぱり軍人にはなりたくない。はい。日本人の若者も、各々が色々と考えているとは思います。でもそれをどう行動したらいいのかわからないだけなのではないでしょうか。それに日本人は、あまり騒ぐのが好きじゃないっていうのも聞いていますし…。うーん、正直ちょっとよくわからないです。文化の違いなのでしょうか。文化の違いでいえば、日本に住んでいて、困っていることなどありますか?父親からいわれていることがあります。「日本には、建前と本音という文化がある。日本人がこういったとしても、それをすべて受け入れてはいけない」って。はい。でも私は、その建前と本音をどう見分ければいいのかもわからないし、たとえ、それが文化だとしても、私はその文化が好きではありません。私が喋っていることは、100%本音です。私は外国人として日本社会に溶け込もうと本音で接しているのに、相手が建前だとするならば、これまでの日本に対する考え方や、努力が台無しになってしまいます。誰も信じられなくなってしまいます。ええ。私は、日本では完全に外国人です。でも韓国からの印象も悪い。立ち位置は、どこにすればいいのか。最近はずっとそこを悩んでおります。まぁ、自分に自信が持てるようになるのが1番ですし、まずは、自分の生活のなかで不当に感じたものに対しては、バンバンと中指を立てていきたいですね。
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そんな状況でも、キムさんは日本での就職を考えてらっしゃるんですよね?はい。やはり日本は長いですし、日本語もできますので。でも、それが活かせるなら、違う環境もちょっとは考えています。私、外国って日本しか知らないんですよ。他の外国に行ったことがない(笑)。ああ、そうなんですか! じゃあブラジル、どうですか! 幹部になったんだし!ちょっと遠いなぁ(笑)。ブラジルは音楽が好きなだけですから。ちなみに、また長髪にするんですか?その予定です。今、海藻類めっちゃ食ってます。ああ、釜バターうどんにわかめトッピングですね!あと、DHCのサプリメントも昨日届きました! 亜鉛とマルチビタミンのヤツです。昨日から飲んでますよ!
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