新型コロナウイルスのパンデミックで亡くなったひとの数は、世界で16万人を超えた(4月21日午前4時現在)。感染拡大により人間の生活、働き方、人との付き合い方が一変したが、そういった望まぬ影響だけでなく、光明を見い出せるような変化も現れている。
特に地球環境は、厳しいソーシャルディスタンシングの恩恵を受けている。ベネチア、ニューヨーク、武漢などでロックダウンが実施された数週間後には、市民が水質や大気汚染の改善を実感していた。
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とはいえ、そういった変化が恒久的かどうかを判断するにはまだ早い。外出禁止令が解かれ、これまでの損失を補填するために企業が業務を2倍にするなどした場合、再び環境は悪化する、と指摘する専門家もいる。ただ、今私たちが目の当たりにしている改善は、より環境に優しい世界の姿を予告しているといえるだろう。
以下のイラストで、今回のパンデミックがいかに環境を救っているかをわかりやすく示してみた。
中国では、今年1月後半にロックダウンが始まってから、二酸化窒素(NO2)の濃度が最大30%低減した。NO2の最大の発生源は自動車や巨大工場の稼働なので、工場が閉鎖され、道路交通量も少なくなったことが一因だ。
調査会社の〈Rhodium Group〉によると、中国の6大発電所における石炭の消費量も、2019年第4四半期に比べると40%減少したそうだ。世界中でロックダウンを実施する都市が増え、ひとびとが家の中にこもれば、大気中の汚染物質はさらに減少するだろう。
ただし、大気は簡単に再汚染される。武漢では、ロックダウンが解除された4月8日以降、再び大気汚染レベルは悪化している。
広範囲で移動制限がされており、『The Guardian』によると3月下旬には旅客便が半分以上減便された。地球の二酸化炭素(CO2)排出量の2.5%を航空業界が占めているため、CO2排出量の減少にもわずかながら寄与している。
ロックダウンが始まって2ヶ月経った中国で、国内の表流水に含まれるリンやアンモニアなどの化学物質の量が減少していることを、中華人民共和国生態環境部が発表した。その理由は工場閉鎖とされている。このような水質改善は世界中で起こっている。ベネチアでも、運河を下る観光客が減ったことで沈殿物が巻き上げられることもなくなり、結果として水が澄んで見えるようになった。
しかし、ベネチア市は水が「澄んでいる」からといって「水質が改善」したわけではない、と注意を呼びかけている。
みんなが家の近所から出ないようにしているため、道路で見かける車の数も激減した。
ロサンゼルスやマニラなど世界の交通渋滞ランキング上位を占める市も、高速が空っぽになるなどゴーストタウン化している。渋滞や排気ガスからの一酸化炭素排出量も減り、大気汚染レベルは改善している。
急速な都市化で野生生物の棲家が奪われてきたが、現在は人間たちが家にこもっているため、動物たちが生活の邪魔をされることも、命の危険にさらされることも減っている。都市化された地域へと足を伸ばしのびのびと過ごす動物たちもいる。
フランスでは、街中で鳥のさえずりが聴こえるようになった。また、道路上の車が減ったので、ロードキル(車との衝突による動物の事故死)も減っている。しかし、ロックダウンが解除されれば元の状態に戻るだろうと専門家は指摘している。
This article originally appeared on VICE ASIA.