年2回開催されるニューヨーク・ファッションウィークでは、世界中から集まったファッションデザイナーたちが、自らの最新コレクションを披露する。ショー直前、彼らの最も差し迫った関心事は、デザインやディテールなどの修正、著名人やプレス、バイヤーの座席配置など。しかし、今期、一部のデザイナーに重くのしかかっている懸案があった。物議を醸しているトランプ大統領の〈大統領令〉だ。なかでも、米ファッション界の移民、世界各国のデザイナーたちは、トランプ大統領の行動や発言を受けて、自らの将来に不安を感じている。
トランプ大統領就任直後の2週間で最も印象的だったのが、移民受入プログラムの120日間凍結、シリア難民の受け入れを無期限停止、イラン、イラク、リビア、ソマリア、スーダン、シリア、イエメンからの入国を90日間禁止した、大統領令だ。イスラム教徒が多数派の対象各国では禁止措置を、宗教的差別、と捉える向きもある。
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「世界的ビジネス規模のファッション業界は、トランプ大統領令によって多大な影響を受ける」とプロエンザスクーラー(Proenza Schouler)やアレキサンダーワン(Alexander Wang)などのブランドを手がけてきた、ニューヨークのリンダ・アブダラ(Linda Abdalla)。「禁止令の影響は、テーラーやドレスメイキングにまで及びます。最高の技術を持った有能な職人のなかには、リストに連なる対象各国の出身者が含まれているからです」
アイルランドで生まれ、オハイオ州で育ったアブダラは、昨年、米国民になった。「イスラム教徒でスーダン人の私たちにとって、手続きはたいへん困難でした。通常、米国民になるのに18年もかかりません」と述べる彼女は、トランプ政権下で米国民になるのがどんなに大変か、と懸念する。「でも、あと1年遅かったらどうなっていたか、想像もつきません。パスポートを所有できたか否かもわかりません。両親は絶対に無理だったでしょう。なぜならスーダン生まれだからです」

リンダ・アブダラの厚意により掲載
「地球上で、どこよりも自由を象徴するはずの国で生活しているのに、イスラム教徒、というだけで身に危険を感じたり、レッテルを貼られたり、誤解されたり、攻撃されたりするべきではない」とニューヨークを拠点にするブランド、ア・ピース・トリーティー(A Peace Treaty)の創設者デイナ・アービブ(Dana Arbib)。テルアビブ生まれのアービブは、リビア難民であるユダヤ人の父親から強く影響を受けている。
「私たちは、ア・ピース・トリーティーの創設以来、イスラム教徒の職人を数多く雇用してきましたが、その芸術的才能は、米国をはじめ、世界中の顧客の心をつかんできました。他のあらゆる文化圏と同様、イスラム世界は、すばらしい才能、芸術的伝統、歴史、インスピレーションを育んできました。それらは尊敬に値し、評価されるべきです」
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