写真のドールはクレヨンの箱を持ち、スタジオの壁に落書きをしようとしている。まさに本物の子どものようだ。最初、ドールは立っているが、何度かウェブサイトのスライドショーをクリックすると、両足を広げて座る写真が現れる。ドールは何も身につけておらず、模造のヴァギナがはっきりと見える。
日本ではインターネット上で、このような児童型ラブドールのコミュニティが生まれている。
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所有者は自らのドールの写真をしばしばSNSに掲載し、使用後のヴァギナ部分の正しい洗浄方法や、ドールのメイクの直し方などについて、フォロワーたちがアドバイスを送っている。
ドールの写真の下には、セックスを匂わせるコメントが並ぶ。「おじさんの家にアメがあるよ、来ない?」「かわいい女子小学生だね」「最高、スカートのフリルがかわいくて興奮する」。これはドールの所有者たちによるパブリックなやりとりのほんの一部にすぎない。
YouTubeチャンネルの動画に登場したドール所有者は、チャイルド・ラブドールのシリコン製ヴァギナを「深く」せず、思春期を迎える前の子どものヴァギナを模倣するメリットについて主張している。同所有者は自らのフォロワーに対し、子どもとのセックスをよりリアルにするため、ドールを製造する企業にこの要望を送るよう促した。
児童型ラブドールはオーストラリアや英国などでは児童虐待にあたるとして禁止されているが、日本では合法だ。成人はインターネットでクマのぬいぐるみを買うのと同じくらい簡単に、ヴァギナの調整が可能なドールを注文できる。
日本で子どもの権利を守るために活動するアクティビストたちは、児童型ラブドールが子どもたち、そしてドールを購入する顧客に与える影響を恐れている。
制約を設けずドールを許可することは、子どもとの強制性交(最低でも懲役5年の刑罰が科される)を標準化してしまうことに加担する、と批判されている。また、ドールは未成年者を性的対象とすることで市場を生み出しており、それが子どもを扱った露骨な性的描写に対する法的規制の緩さに反映されているという指摘もある。
「日本国内では、子どもを性の対象として扱ってもよい、という価値観が根強いと思います」とVICE World Newsの取材に語るのは、NPO法人ぱっぷすの理事長、金尻カズナだ。
14歳と性交をしても問題がないと発言するような56歳の議員など、国会議員の中にも子どもを性的対象としている者がいることを彼女は指摘する。「そもそも日本では、成人と子どものわいせつ行為が罪にあたるという認識があまりありません。それが子どもに対する性暴力の増加を助長しています。だからこそ、子どもを模したラブドールを支持するひとがいるんです」と彼女は述べる。日本の性的同意年齢は13歳で、諸外国と比べても低い。
日本はOECD加盟38か国のなかで児童ポルノ所持を合法としていた最後の国だが、2014年に児童ポルノ禁止法が改正され、子どものわいせつ画像や映像の所持が禁止された。しかし、イラストなどの創作物はその対象に含まれていない。マンガ、アニメ、ドールの所持は日本ではいまだに合法だ。マンガとアニメは、主に表現の自由という観点から守られている。
ただ、子どもへの性暴力の増加につながるか否かなど、ドールが現実世界に及ぼす影響は科学的に明らかになってはいない。一部の研究では、未成年者に性的関心を抱くひとにとってはドールがはけ口となり、彼らが欲求に従って行動することが減る可能性があるともされている。
ラブドールの所有者と非所有者、それぞれ130人へ調査を行なった2022年の研究では、両者のあいだに性的な面での攻撃的傾向の差は見られなかった。また別の研究は、適切な管理下で使用すればドールがセラピーとして機能する可能性があることを、理論的な観点から示している。
しかし、同じく今年発表された別の論文では真逆のことが示唆されている。イタリアの研究者たちによると、性犯罪加害者のほうがそうではないひとに比べ、ドールは犯罪者の治療法にはならないと考えていることが明らかになった。
児童型ドール所有者の大半が、ドールを性的な理由で購入していることは数多くの調査で示されている。ただし、必ずしもそうではないと主張する所有者もいる。
20体のドールの所有者、鈴木(仮名)は、児童型ドール1体を購入したが、それは成人型ドールがセックスをするには重すぎるからだと述べる。成人型ラブドールには35キロもの重量があるものもある。彼が「ヴァージニア」と名付けた児童型ドールは、6〜7歳の幼女を模しており、重さは13キロだ。
鈴木は、エビデンスが確かであるかぎり、児童型ラブドールが禁止されても問題ないと語る。しかし自分のような人間は例外だろうとも認めた。「知り合いの所有者の半数くらいは、子どもと性行為をしたいと思ってます」と彼は述べる。「それが彼らがドールを買う理由です」
児童への性的虐待で有罪判決を受けたひとびとの治療に携わる精神保健福祉士の斉藤章佳は、小児性愛者と診断された患者の約10人にひとりは児童型ラブドールを使用していると述べる。
ただ、ドールを合法にすべきという主張では、ドールは欲望のはけ口となると考えられているが、彼の患者たちはそう感じていないそうだ。「彼らの欲望は、ドールでは十分に満足しません」と斉藤は語る。
また専門家たちは、ドールと児童虐待の可能性の増加とのあいだとの因果関係を証明することは非倫理的であり、ほぼ不可能だと主張している。
「そのような研究には高いリスクが内包されているので、実施を認める研究倫理委員会はありません」とVICE World Newsに語るのは、ジョン・ダナハー博士。児童型ラブドールの倫理的影響を研究する法学者だ。つまり、子どもに対する性暴力が実際に起こる危険性があるということだ。
しかし博士によると、暴力的な行動をとることを許可することは、直接的な被害者がいなくても有害だと示す研究が数多くあるそうだ。「私たちは長い時間をかけて物事に慣れ、標準化していきます。何らかの行動の再現・表現を長く行なっていくと、その行動をとる可能性が増える。つまり、その行動を奨励することになるのです」
斉藤は、法律に児童型ラブドールが含まれていない理由のひとつとして、この現象が比較的新しいものであるためだと述べる。
児童型ラブドールの問題は急拡大しており、ここ5〜10年でようやくこの問題にまつわる研究が目立ちはじめた。しかしラブドールの世界的な市場は現在すでに数百万ドル規模に発展していると推定する専門家もいる。ラブドールの自由な売買が可能な国として知られる日本では、30秒に1体のドールが売れていると試算されている。数十のラブドール販売サイトを確認したところ、圧倒的多数のサイトが児童型ラブドールのみに特化したページを用意していた。掲載されているドールのいくつかは、顧客にもっとも人気のドールとして挙げられていた。
インターネット上では、児童型ラブドールの製造・販売の禁止を求める嘆願書が時折出回っているが、あまり支持はされていない。性具について意見を述べる政治家たちは、個々の表現の自由を理由に、その禁止を要求しないことがほとんどだ。
ドールの規制に対する議員からの支援は十分とはいえないが、金尻をはじめとする活動家たちは、日本社会から子どもの性的描写をなくすことには意味があると考えている。しかし、彼女の活動に腹を立てた男性たちから、彼女のオフィスに使用済みのオナホが送られてくるというハラスメントも受けてきた。気持ち悪いが、そんなことで黙ってはいられない、と金尻は語る。
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All photos taken by Shawn Woody Motoyoshi 。