専門家に訊く、電子タバコを吸うと排便したくなる理由

「加熱式タバコやVAPEでニコチンの消費をやめると、便秘になる可能性があります。おそらく数日は続くでしょう」
vape poo
トイレに座る男性 (DANN TARDIF VIA GETTY)

有名な専門家や科学者が時間と話せるとしたら、あえて取るに足らない、馬鹿馬鹿しい質問をぶつけようとする人はほとんどいないだろう。だが、VICEで仕事をしている私たちには、人びとに彼らが求めるもの、必要なもの、切望するものを届ける義務がある。そのひとつが、〈電子タバコ(ベイプ)を吸うと巨大なウンチをしたくなるのはなぜか〉という疑問だ。

馬鹿げた疑問にも答えは必要だ。アホらしい疑問に賢く答えることは不可能? 私たちはそうは思わない。

そこで、今回VICEはメルボルン大学名誉教授に任命されたばかりのジョエル・ボースタイン(Joel Borstein)教授にコンタクトを取った。彼は今年8月に退職したが、その前は同大学の解剖生理学部門に所属していて、主に腸の動きと分泌物の関係性を研究している。

以下が、この疑問にまつわる教授の見解だ。

電子タバコの最初のひと口で何が起こるのか

ボースタイン教授によると──電子タバコを口から吸うと仮定した場合──最初のひと口は肺や腸壁を通して体に取り込まれる。すると、ニコチンが腸壁や腸管神経系(運動機能、血流、粘膜輸送、内分泌系をつかさどる部位)を刺激する。腸管神経系の神経のほとんどがニコチンに反応するため、刺激を受ける。

その後、ニコチンは血中に入り、特に大きな刺激効果を受ける脳を含め、体のさまざまな部位に影響を与える。

Advertisement

電子タバコを吸うとお腹に違和感が生じるわけ

「違和感が生じる原因は、いくつか考えられます」とボースタイン教授は語る。

「まずひとつめは、腸内で起きていることを感知する神経細胞が、アセチルコリン(運動ニューロンに働きかけ、随意運動に作用する物質)を伝達する末端部分を通して標的細胞に指令を与え、ニコチン受容体が刺激されるためです」

ニコチンがこれらの受容体を活性化させるため、連続曝露によって受容体の総数が減る。その結果、体がニコチンを感知する力が低下し、機能不全を起こす。

さらに、食欲や神経系の活動の調整(例えば消化など)にも影響を及ぼす。

「2番目の原因は、電子タバコを吸うと体にニコチンが素早く取り込まれ、食事中以外はほぼ活性化しない神経細胞の多くが活性化することです」

ボースタイン教授によると、ニコチン受容体を正常機能に用いている制御システムは3つあり、それらは腸内の栄養素や刺激によって活性化する。もうひとつのシステムは脳内にあり、ニコチン受容体によって、伝達経路の途中で間接的に活性化する。その後、ニコチンは腸全体、中でも特に上部消化管の働きを変えてしまう。さらに視覚、嗅覚、味覚などにも影響を与える。

「ニコチンは酸分泌を引き起こす神経細胞を活性化させるため、飲酒後のような、かすかな不快感を引き起こします」と教授は説明する。

「アルコールは代謝の過程の一環で酸に変化します。すると、胃の酸性度が高くなります。ニコチンも、それに比べると微細ではありますが、同じような作用をもたらします」

「これが、パブや居酒屋でお酒を飲みながら喫煙したり電子タバコを吸うと腹部に不快感が生じる理由のひとつであると考えられます。胃の酸分泌を増加させる2つの刺激を、同時に組み合わせているのですから」

それがどのように便通に影響を与え、排便したくなるのか?

「そこから予測を立ててみましょう」とボースタイン教授。

「便通を促す働きのある神経は脊髄の神経核の中にあり、その神経がアセチルコリンを用いて腸の動きと排便に働きかける神経系を活性化させます」

電子タバコをひと口吸うとその神経系が急激に活性化し、逆にニコチンがなくなると活性が低下する。継続的に電子タバコを吸い続けると、神経系は活性の向上と低下を繰り返す。

「そうすると神経系がこのアップダウンに慣れ、電子タバコを吸うたびに刺激に素早く反応するようになります」

「その結果、このプロセス全体に関わる脊髄の部位が活性化するのですが、人間にはその作用を促進もしくは抑制する、脳からの下行性経路が備わっています。そのため、便意が生じるのは、体の反射といえるでしょう」

ありがたいことに、この経路は意識的に制御できるので、四六時中便意を感じずにすむ。

「脊髄から腸管神経系へとつながる神経は、ニコチンの急増によって活性化します。すると、体内の調整システムが、ニコチンが急増する合間に働くようになります」

ニコチンの急増が便意と同時に起こると、増加反応が起こりやすくなる。つまり、大便がしたくなるということだ。

「私の予想としては、トイレに行きたくなる直前に電子タバコを吸うことが、(排便への)一番の近道です」

「この作用は、行動の変化によって強まる可能性があります」

ということは、ニコチンがなければ腸がうまく機能しないのか?

「体内の調整機能が働くので、アヘンやヘロインなどでも同じ効果をもたらします。神経系がリセットするのです。ニコチン依存症でも同様に神経系がリセットするので、ニコチンがなければ正常に機能しなくなるのです」と教授は説明する。

「だからこそ、みんなニコチンパッチを使用したり、紙巻タバコをやめるために電子タバコを吸ったりするのです。神経系そのものが自動的に再調整するので」

「電子タバコやニコチンの消費をやめると、便秘になる可能性があります。おそらく数日間はそのままでしょう」

この記事は電子タバコやその他のタバコ製品の使用を推奨、促進するものではありません。タバコは健康被害をもたらし、肺がんを引き起こす可能性があります。

ジュリー・フェンウィックのTwitterInstagramをフォロー。