あなたはこの潜在力を秘めた追求のプロセスを見たとき、あこがれの場所が自分を呼ぶ声を感じるだろう。そしたら明かりを消して、光が分断する場所でもう一度明暗の美しさを感じるのだ。
一杯の墨汁が空を黒く染めたとき。明かりを灯すと目の前に瞬いた断片は、昼間の自分であった。一瞬の恍惚とめまいが通りすぎる。私たちはみな自分を知りたいと強く願い、この灯りに照らし出された明暗のコントラストのなかにバランスを見つけ出す--。中華圏90年代最高の女性シンガー、フェイ・ウォン(王菲)と、80~90年代の興隆期に北京ロックを支えたミュージシャン、ドウ・ウェイ(竇唯)の娘 – リア・ドウ(竇靖童)が新曲〈A Swim in the Love that You Give Me〉の ミュージックビデオを発表した。このビデオのなかで、彼女は大胆なチャレンジをした。立ち込め、また散ってゆく霧のなかでは、すべてが理性と切り離され、ただピュアな意識の世界だけが扉を開けた。このビデオが潜在意識にもたらされた次元の人は、誰もが “love is all that’s there” という歌詞の世界を感じられるはずだ。
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ふたりの女性監督から成る〈Mundo Sisters〉は、リア・ドウとペプシブラックがともに表現する意識の流れのテイストを帯びたミュージックビデオを撮影した。これは実験的な雰囲気に満ちたラブソングで、トリップ・ホップのようなファンタジックな効果が溢れるドラムはまるで、毛のたくさん生えた海藻が柔らかく両足に絡みつき、あなたを連れてゆっくりと深海へと沈んでいくようだ。
以前、ペプシと人気デザイナーのアレキサンダー・ワン氏による合作ビデオを制作したMundo Sistersは、この歌のミステリアスな特徴にマッチするストーリーを展開した。この ビデオを自分の潜在的なパッションと創造力を発掘するためのメディテーションとしてもよい。人々に、〈ポジティブ・光〉、そして〈ネガティブ・闇〉との間の対立と共存を探らせる。アーティストの創作のプロセスにとっては、光と闇が引き裂く過程は何ものにも比べられない苦しみだ。Mundo Sistersのナディーンとレナは、あなたに大きく育てられた一方が最終的な勝者だと考えている。
変化し続けるシーンで、視聴者は寂しくて薄暗い灯りの部屋へ連れていかれる。ソファーのそばにあるミラーボールの前を少しうろうろしたかと思うと、瞬く間に柔らかい朝日のなか、山道を走って高くそびえたつ寂しげな森を駆け抜ける。
ビデオでは、リア・ドウが親友に夢を繰り返し語るシーンがある。夢のなかでリアは、ふたりの違う自分を見た。もうひとりの自分とは別の「仮面をつけた自分」だ。彼女は自分が何かに向かって走っているのか、それとも何かから逃げようとしているのか分からない--それは自分自身と引き裂かれるシーンのようである。
この自分との決闘の終点こそが創造性の誕生だ。あなたが追い求めるピュアでインスピレーションに満ちた場所、そこには最も純粋な本質を除き、その他の何も存在していない。エンディングの深い霧のなか、リア・ドウはいつも彼女にぴったり付いてきた謎の人物の仮面を取る。すると仮面の下にあったのは自分と全く同じ顔だった。彼女が夢から覚めると、残酷でリアルな飢餓感は襲ってこなかった。ただあなたに、彼女が渇望する空間へ続くこの道をもう一度繰り返して、あのファンタジックな森を見てみたいと思わせるのだ。
我々は、このミュージックビデオの舞台裏を撮影し、彼女にあの森のなかのリアルでファンタジックなイノシシとサルの話を聞いた。あなたはこの潜在力を秘めた追求のプロセスを見たとき、あこがれの場所が自分を呼ぶ声を感じるだろう。そうしたら明かりを消して、光が分断する場所でもう一度明暗の美しさを感じるのだ。
リア・ドウが〈A Swim in the Love that You Give Me〉のミュージックビデオ制作を語る。
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