ブロンディのギターが切り撮ったアイコンたち

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ブロンディのギターが切り撮ったアイコンたち

2014年9月に発売されたBLONDIEの中心メンバー、クリス・ステイン(Chris Stein)による初の写真集『Chris Stein/Negative: Me, Blondie, and the Advent of Punk』は、発売から1カ月も経たないうちに品切れ。BLONDIEというバンドが、結成40年を経ても、なお変わらぬ人気を誇っている証だ。

BLONDIEのメンバー、クリス・ステイン(Chris Stein)による初の写真集『Chris Stein/Negative: Me, Blondie, and the Advent of Punk』は、発売から1カ月も経たないうちに品切れ。BLONDIEというバンドが、結成40年を経ても、なお変わらぬ人気を誇っている証だ。

ラジオでも頻繁にオンエアされ、キッズが部屋にポスターを貼る「みんなが好きなパンクバンド」というポジションを確立して以来、バンドは現在のシーンにおいても、大きな影響力がある。2014年のTBDフェスティバルにBLONDIEは出演した。いまだに素晴らしい演奏で、そのジャンルレスなスタイルは、現在のインディ・ミュージックのスタンダードだ。2013年頃からリバイバル的に盛り上がりを見せる「オルタナティブ・ポップ」の元祖は、まさにBLONDIEなのだ。また、パンク精神に基づくバンドの美学は、名だたるファッションデザイナーたちのインスピレーション・ソースでもある。

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2013年秋のヴェルサーチ、アレキサンダーマックイーン、シャネル、サンローランなどのコレクションでは、スタッズ、チェーンなど、パンク・テイスト溢れるスタイルが目に付いた。ファッション界のアカデミー賞「MET GALA 2013」でも、賛否両論はあったものの、確実に「パンク」がテーマだった。

今回、クリス・ステインに電話インタビューを敢行し、自らの写真集について、彼が撮影したデビー・ハリー(Debbie ‘‘Deborah’’Harry)や、ミュージシャン仲間の舞台裏について、更には、BLONDIEとのコラボレーションしようと、コンタクトしてきたA$AP Rocky、カニエ・ウエスト(Kanye West)との交流についても聞いた。

まず最初に目が止まったのは、トップレスに革のパンツ、という出で立ちでバンジージャンプするデビーの写真でした。どういう意図があったんですか?

意図なんてないし、私は関わってない。見ていただけだ。これはニュージーランドで、デビーのソロ・キャリアの終盤頃(=90年代初頭)だね。

「裸バンジー」みたいなことばかりやっていたんですか?

いろいろやったから、その程度は序の口だよ。でも、ホテルの窓からテレビを投げる、といった類いのことは一切やってない。

写真集に、この写真を掲載することについて、デビーの反応は?

みんな「この身体だったら全然問題ない」って。デビーはスタイルが良かったからね。今でも年齢のわりに良いスタイルだよ。ケイト・モス(Kate Moss)以降基準が変わったでしょ、だから、デビーはこの写真に悪い気はしていない。

当時、みんなの憧れの的である女性と付き合うのは大変じゃありませんでした?

いや、私たちのペースでやれてたから平気だった。むしろ、周りからのプレッシャーのおかげでうまくいってた節もある。もし、ふたりだけの世界だったら、おかしなことになってただろう。

あなたに撮られるとき、デビーは服に拘っていましたか? それとも、あなたが瞬間を切り取っていたのですか?

ゼブラの服を着てる写真はこだわってた。背景に合わせて選んだ服もある。でも大体ラフに撮ってた。デビーはDIYだよ。スタイリストもいなかったからね。

デビーがイブニング・ドレスで燃えるフライパンを手にしている写真について教えて下さい。

これはニューヨーク17番街の私たちが住んでいたアパートの部屋で撮ったんだ。その後、部屋は燃えてしまったんだけどね。みんなこの写真を見て、ファッション写真みたいだ、というけれどよくわからない。ツアーしていたら、「落ち着いて聞いて。あなたのアパートが火事になったわ」って母親から電話があった。ま、そんなとこだよ。たぶん、ドレスはマリリン・モンローので、モンローが映画で着ていたらしい。本当か嘘かはわからないけどね。下の階に住んでた女の子から借りたんだけど、焦げちゃった。

どの写真がお気に入りですか?

これといって特にない。好きな音楽について聞かれるのと似てるんだけど、ひとつの作品は、それより大きなピースの中で発生する「動き」のようなものだから、ひとつの作品云々、っていうのは難しい。でも、誰かがリチャード・ヘル(Richard Hell)にビールを渡そうとしてる写真は好きだ。

その写真について教えてください。

THE HEARTBREAKERSが「Max’s Cansas City」で演った最後のライブのバックステージで撮ったんだ。ちょっと落ち込んでたみたいだった。

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写真集に載っているバンドのうち、一番近い存在だったのは?

THE RAMONESとは仲が良かった。懐かしいな。THE FASTとか、あまり知名度はないけど、初期から仲が良かったグループもいる。

DEVOやイギー・ポップ(Iggy Pop)など、他のアーティストの写真を撮るときは、友人として彼らにアプローチしたんですか?

そう。リチャード・ヘルのVOIDOIDSの写真を撮るときに、彼は「フォト・セッションしようぜ」ってノリだったから少し本格的に撮ったけど、基本的にはラフに撮影していた。

デヴィッド・ボウイの写真は特に印象的です。あなたが書いたキャプションによると、彼があなたに撮影を許可した唯一の写真だそうですね。

そうなんだ。3枚撮ったけど、良い写真はこれしかなかった。スナップ写真みたいだ。イギーの写真の方が良く撮れてるけど、全部同じときに撮ったものだよ。

彼の反応はどうでした?

デヴィッド? 彼はただ自分自身をどう表現するかに気を遣っていただけ。彼はいつだって紳士的だった。

写真集の中には、短いですがロサンゼルスの章もあります。当時のニューヨークと比べてどうでしたか?

70~80年代は、ニューヨークよりロスの方が古い時代の空気が残ってた。今はロサンゼルスのほうが好きだよ。失われつつあるファンキーさが未だに残っている気がするからね。今のニューヨークは、すべてが高級志向になってるだろ。とはいえ、ロスでもそんなにめちゃくちゃ楽しんだわけじゃない。70~80年代にロスで本当におもしろかった場所には行ってないからね。

タイ、フランスのボルドーなど、海外の写真も多くありますね。海外ではどこが一番好きですか?

バンコクは本当に最高だった。30年前だから、今とは全然違ったよ。70年代中頃に初めて行ったときは、公園や川なんかがあって、緑がいっぱいで牧歌的だった。今はコンクリートで覆われて、だいぶ近代化されてしまった。

バンコクでライブをしたんですか?

そう、大晦日にね。当時はベトナム戦争以来、夜間外出禁止令がででいた。その大晦日にそれが解除されたんだ。本当に最高だったし、忘れられない。街全体がお祭り騒ぎだった。それまで、0時から朝6時までの外出が禁じられていたから、門限が解除されて、パーティタウン化していたよ。

ずっと伺いたかったんですが、BLONDIEの曲「Rapture」が、あそこまでヒットするとは思っていましたか?

どうかな、覚えてないな。「The Tide Is High」に関しては自信があったけど。「Rapture」では、初期のヒップホップみたいで気に入ってた。でも特に何も考えてなかった気がする。

ラップ初のヒットチャートNo.1がBLONDIEとは凄いですよね。

そうだね。この前、A$AP Mobのヤツらと会ったんだけど、初めて聴いたラップが「Rapture」だっていうメンバーがいたよ。WU-TANG CLANにもそんなメンバーがいた。変な感じだね。

当時はどんなラッパーたちとの付き合いがありましたか?

GRANDMASTER FLASHと、FUNKY 4+1は知り合いだった。あとファブ・ファイブ・フレディは、ずっとBLONDIEに協力してくれてた。友人だよ。今でもFUNKY 4+1のロドニー・Cとは話す。「サタデー・ナイト・ライブ」に呼ばれたときも、一緒に出てくれるゲストを選ばなきゃいけなかったから彼らに頼んだんだ。たぶん、アメリカで初めてテレビ出演したラップグループなんじゃないかな。

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ラッパーの写真は撮らなかったんですか?

撮ればよかった。フレディとか数人しか撮ってない。

A$AP Mobと一緒に何かする予定はありますか?

そうだね、あいつらは本当にナイス・ガイだ。A$AP Rockyと空港で会って話したんだけど、最高だよ。とても大らかで謙虚で、彼の創る音楽とは全然違う印象だった。音楽は結構アグレッシブで露骨だから、コントラストが良いんじゃないかな。

あなたは多くのラッパーと交流があるので、そういう「コントラスト」は結構見てきたのでは?

そうかもね。カニエ・ウエスト(Kanye West)とも電話で話したんだけど、良いヤツだったよ。どんな人間かまったく知らなかったけど、感じが良くて落ち着いてた。

カニエと話したのはいつですか?

「MET GALA」で一緒に何かしよう、って盛り上がったんだ。結局やらずじまいだったけど。

「パンク」がテーマだった2013年のMET GALAについてはどう思われました? 世間では、賛否両論といった感じですが。

パンクってもんはDIYなのに、アレキサンダー・マックイーン(Alexander McQUEEN)のパンクスタイル・ドレスが約450万円もするなんてすごい。マルコム・マクラーレン(Malcolm McLaren)なんかは高級な衣服を取り扱ってたけど、パーティー用ではなかった。でもパンク的な要素は、かなり初期から商業的なモノとして取り込まれてた。昔イギリスにいたときに、牛乳のコマーシャルにモヒカン刈りの男が登場した。そのとき、「やばい、パンクがメインストリームになるかも」ってハッとしたんだ。