バリのモンキーフォレストの目玉といえばオナガザルだ。何百匹ものサルが豊かな緑のなかでのんびりと過ごし、観光客を楽しませたり、観光客から与えられるエサを味わったりしている。
くつろいだライフスタイルを送る彼らの自由時間は、平均的な野生のサルよりもかなり長い。彼らはこの暇な時間に石で遊んでおり、最新の研究では、石を〈セックストイ〉として使う場合もあると判明した。
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モンキーフォレストに生息するサルが石でどのように遊ぶかを研究者が分析した論文は、2022年8月4日に学術雑誌『Ethology: International Journal of Behavioural Biology』に掲載された。2016〜2019年に収集された映像記録では、石を噛んだり、集めたりという無害な使用法も多々見られたが、石を性器にこすりつけたり当てたりして性的刺激を生み出す行動が、雄雌問わず数百件確認された。
オスのサルの場合、石で性器をこする/当てる行為は、性器が勃起しているときのほうがより頻繁に見られ、より長時間続いた。しかし勃起したペニスに石をこすりつけても、射精にまで至るサルはいなかった。
本論文の共著者で、カナダ・レスブリッジ大学の博士号取得候補者であるカミーラ・チェンニは、霊長類のマスターベーションは珍しいものではないが、自慰のために道具を使うことはめったにない、とVICE World Newsに語る。
「確実な説明をするのは難しいのですが、快感を与えるからやっていると考えられます」と彼女は解説する。「石を性器に当てることで触覚への刺激が生じ、それは気持ちがいいということです。行為を止める理由はありません」
本研究ではオスのサルが自慰のために石を使ったという強力な証拠が見つかったが、石を性器に当てていたメスのサルの場合はどうであるかを解明するのは困難だった。
「メスの場合、性的興奮を明確に示すサインがないので少し難しいんです」とチェンニ。しかし研究者たちは、成熟したメスのサルが自らの性器に当てたりこすったりするための石を厳選していることを観測している。メスのサルは、角張った石やザラザラした質感の石を好むことが多いそうだ。
石遊びは日本のサルでも確認されており、同種のサルの特定の集団のなかで共有されている文化的行動と見なされている。石遊びはバリのサルにおいては非常に一般的で、石を使った自慰行為もここから始まっているのではないかとチェンニは述べる。
「サルたちが石で遊んでいるのを観察すれば、高確率で(自慰行為を)目撃することになるでしょう」と彼女は語る。
東南アジアのオナガザルの生息地は人間の居住地としばしば重なる。バリのサルはその知能の高さで知られていて、観光客から物を奪ったり、奪った物を〈身代金〉としてエサを要求することを覚えてきた。
パンデミックで観光客からもらえるエサが不足したさいには、モンキーフォレストのサルたちは聖域の外に出て住宅を襲撃した。
研究者によれば、モンキーフォレストのサルは人間が暮らす集落に囲まれており、森の寺院のスタッフが1日あたり最低3回果物や野菜を与える。チェンニは、この安定した食料供給が、同地のサルが石で遊ぶようになった要因のひとつではないかと指摘する。石遊びに興じることが確認されたサルたちは、皆栄養が行き届いていたそうだ。
「給餌の結果生じた彼らの自由時間こそが、石遊びの大きな要因となっていると確信できるといえると思います」とチェンニ。
「ただ、それは充分な説明となってはいません。要因のうちのひとつに過ぎないんです。他の要因については正確に示すことはできません。この行為をやりはじめたサルを見れたらいいんですけど」