ハイになった虫も空腹感を覚えることが明らかに

ハイになれば、虫も人間もマンチになる。
大麻 ハイになれば、虫も人間もマンチになる。
Left: Stacy Levichev. Right: 
Catherine Falls Commercial via Getty Images

ハイになったときに空腹感(マンチーズ)を覚えるのは、人間も虫も同じだということが、最新の研究で明らかになった。

激しい空腹感は、大麻(ウィード)の数々の作用のひとつだ。しかし、それを感じるのは人間だけではないらしい。奇しくも4月20日のマリファナデーに、オレゴン大学の研究者チームが学術誌『Current Biology』で発表した論文によれば、一般的なモデル生物である線虫(セノラブディティス・エレガンスまたはシー・エレガンス)も大麻によって食欲を刺激されるという。

THC(テトラヒドロカンナビノール)は大麻に含まれる主な精神活性成分で、〈ハイ〉という感覚をもたらす。THCは、体内のカンナビノイド受容体と結合する(精神活性成分はもともと体内に存在するため、人間は基本的に生まれつき反応するようになっている)。この受容体は、摂食を含むさまざまな行動を媒介すると考えられている。ハイになった人間が高カロリーな食べ物に惹かれるのもそのためだ。

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数年前、トレド大学の研究者チームが、シー・エレガンスがカンナビノイド化合物と受容体に似たシステムを有していることを発見した。ちょうど大麻がオレゴン州で合法化された頃の話だ。

「まさにお祭り騒ぎでした」とオレゴン大学の生物学教授で、論文の著者のひとりであるショーン・ロッカリー(Shawn Lockery)はMotherboardに語る。

ロッカリー教授はもともとは生理学が専門だったが、教授が率いるチームは、線虫を使って価値に基づく意思決定にまつわる実験を何度も行なってきた。「私たちは高品質の食べ物と低品質の食べ物のどちらを選ぶかを調べる、フードチョイス分析を得意としてきました」と彼は説明する。彼らは大麻の合法化を有効活用し、それを楽しむことにしたという。

「もともとは単なる科学的な遊びのひとつでした」とロッカリー教授はいう。チームはカンナビノイドを含む液体に線虫を浸し、フードチョイス分析を行なった。つまり、線虫がマンチーズを体験しているかどうかを見極めるため、低品質の食べ物と高品質の食べ物のどちらかを選ばせたのだ。

しかし、マンチーズという表現をもう少し科学的に描写する必要があった、教授は説明する。

「論文でマンチーズという言葉を目にすることはありません」と彼は語る。「高カロリーで脂肪の多い食事が無性に食べたいという状態を表す専門用語は、〈快楽的摂食〉です」

線虫の食欲は確かに増した。エンドカンナビノイド──生体内でつくられるカンナビノイド──を投与されると、線虫は〈好きな食べ物〉に引き寄せられ、食べる量も増加した。

「線虫はマンチーズを経験して人間に酷似した行動をとり、それは人間と全く同じタンパク質のシグナル伝達システムによって制御されていることが判明しました」とロッカリー教授は語る。教授が説明したとおり、両者のシステムは非常に似ているため、線虫から遺伝子を取り出してヒトの遺伝子に加えたときも同様に作用したという。

「つまり、私たちはカンナビノイドのシグナル伝達においてヒト化線虫を活用できるということです。カンナビノイドのシグナル伝達システムの他の成分を調べるための、遺伝子研究のテストプラットフォームが手に入ったのです」

ロッカリー教授にとって、今回の発見は医薬品開発に貢献するだけでなく、動物の世界における人間の立ち位置を理解することに役立つかもしれない。

では、次なる計画は? ロッカリー教授のチームは、すでにオレゴン州で新たに合法化されたドラッグの実験に着手した。それは幻覚剤だ。

「幻覚剤は特定のセロトニン受容体を通じて作用しますが、シー・エレガンスにも似たような受容体があります」と彼はいう。「まだ研究は始まったばかりですが、幻覚剤が行動に影響を与えるのか、行動分析を行なっていく予定です」