地球の水は星間空間に由来することが明らかに

生命の源である水は、数十億年前に星間空間に存在する塵から生まれたのかもしれない。
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Image: Philipp Frerich / EyeEm via Getty Images

地球の水は今から50億年以上前、太陽よりも前に星間空間で生まれたことが、最新の研究で明らかになった。形成初期の恒星系における水の発生について興味深い洞察を与えたこの結果は、他の水をたたえた居住可能な惑星を見つける手がかりになるだろう。

天文学者は地球から約1300光年の場所に位置する原始星オリオン座V883星の周囲で、前例のない水蒸気の観測に成功し、形成中の恒星系において水の主要な2成分の比率を史上初めて測定した。その結果、オリオン座V883星の水の組成は、太陽系の多数の惑星の水と非常に近いことがわかった。これは地球の水の多くが太陽誕生の前から存在していた星間塵に由来する、という仮説を裏付ける発見だ。

液体の水は、地球上の生命にとって必要不可欠だ。だからこそ、宇宙で生命体を探し求める科学者たちは、水が存在する可能性の高い他の惑星のいわゆる〈ハビタブルゾーン(生命生存可能領域)〉に注目している。しかし、それが生命が生存可能な海洋惑星かどうかを判断するには、地球上の生命に満ちた海、川、湖ができた経緯を理解する必要がある。

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オリオン座V883星は、この疑問を解き明かすのにうってつけな実験室だ。なぜなら、この星は彗星や惑星などの天体が生まれる可能性の高い、比較的温暖なガスや塵──原始惑星系円盤と呼ばれる──に囲まれているためだ。大半の恒星系の発生期において、水は氷の状態で星間塵に閉じ込められるが、これらの塵に存在する氷が昇華して水蒸気として観測されたのは、原始星の高温の爆発による可能性が高い。

この水蒸気を探し求め、米国立電波天文台の天文学者ジョン・トビン(John Tobin)率いるチームは、世界最高レベルの感度を有するアタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計(アルマ望遠鏡)でオリオン座V883星を観察した。

科学誌『Nature』に3月8日に掲載された論文によれば、研究チームはこの星における〈気体状態の水の直接的な観測〉を報告しただけでなく、史上初めて一般的な水の比率(水素2:酸素1)と重水素を含む水の測定に成功したという。

「円盤中の水に含まれる重水素と水素の比率を測定できたのは今回が初めてです。これは太陽系の彗星、地球上の水、星形成初期の水を結びつける強力な根拠となります」とトビンはVICEに語った。

「円盤や彗星に含まれる水は、星が形成されるずっと前につくられると我々は考えています」と彼は続ける。「これらの水分子は、星間空間にある非常に小さな微粒子の表面で形成されます」

オリオン座V883星を取り巻く温暖な円盤は、トビンと彼のチームに、太陽系から遥か遠くにある水蒸気を観測するまたとない機会を与えた。先行研究では原始星付近の暖かな区域で水蒸気が検知されたが、トビンのチームは地球の公転軌道の120倍離れた場所で水蒸気を観測した。チームはオリオン座V883星の円盤には、地球上の海水の総量の少なくとも1200倍もの水が存在すると見積もっている。

この大量の水のおかげで、チームは重水素が豊富に含まれる水と普通の水の比率を計算することに成功し、それが太陽系の彗星の比率と非常に近いことを発見した。この結果は、地球が数十億年前に衝突してきた太古の水を有する彗星から、いくらかの水を受け継いでいることを示唆している。その結果、星間にある氷粒が銀河系に点在する星々の水の源泉であると推測され、地球の水の起源や生命が存在する可能性のある他の海洋惑星をめぐる議論に、大きなヒントを与えた。

「この結果は、新たに誕生した太陽系の惑星に取り込まれる可能性のある多量の水が存在するかもしれない、という仮説を一層裏付けるものです。同時に、太陽系の外にも、惑星に取り込まれる水が存在しているかもしれないということも示唆しています」

「この水は非常に大量で、形成途中の惑星の一部となる可能性もありますが、この太陽系では数十億年の間に非常に多くのものが変化してきたので、どれくらいの水が惑星にたどり着くかはわかっていません」と彼は続ける。「地表に大量の水が残っていることを確認できた星はごくわずかです。地球にもエウロパにも水がたくさんあり、土星の惑星の一部にも水は存在しますが、月のように非常に乾いた天体も多いです」

つまり、今回の研究は水が他の恒星系に豊富に存在することを確認したが、だからといって無数の太陽系外惑星で地球外生命体が水を飲み干しているとは限らない、ということだ。星の一生にはさまざまなことが起こる。例えば、火星にはかつて水が存在し、40億年前には生命も存在していた可能性があるが、今では乾き切った抜け殻のような世界が広がっている。

結局のところ、私たちが知る生命が誕生した水をたたえる惑星はただひとつだけ──ネタバレすれば地球のことだ──で、私たちがなぜここにたどり着いたのか、その答えはいまだに明らかになっていないのだ。

「地球にたどり着いた水は混合物かもしれません。そこには彗星から来たものも、高温で熱されて重水素が取り除かれたものも含まれる可能性があります」とトビンは語る。

「この研究がさまざまな後続研究のきっかけになり、水が地球にどのように届けられたのかを解き明かす研究の一助となることを願っています。大いに議論の余地がある重要な疑問ですから」と彼は結論づけた。