ニュージーランドの農家たちは、飼っている牛たちが出すオナラやゲップに近い将来少なからぬ代金を払わなければならなくなるかもしれない。
ニュージーランドのジャシンダ・アーダーン首相は、気候変動への対策として、家畜が排出する温室効果ガスへの課税法案を提出した。同国の温室効果ガス排出量の約半分は農業によるもので、家畜からは牛のゲップなどでかなりの量のメタンが排出されている。
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「この法案により、ニュージーランドの農家は温室効果ガス排出量の削減において世界を牽引することになるでしょう。それが競争上の優位性をもたらし、わが国の輸出ブランドを高めるはずです」とアーダーン首相は2022年10月11日の記者会見で語った。
首相によれば、もしこの法案が通れば、家畜による温室効果ガス排出に対する世界初の課税となる。
ニュージーランドのこの法案以外にも、各国は農業による気候変動への影響に取り組む政策を打ち出してきた。
2020年、EUは〈Food to Fork(食品から食卓まで)〉戦略を発表。その目的は温室効果ガス排出量の削減と、土壌環境の健全化だ。健全な土壌はより多くの炭素を蓄積でき、農家にとっては作物に被害を与える干ばつや洪水に耐える抵抗力となる。この戦略では、肥料や化学農薬の使用を減らし、土壌が含む栄養の損失を50%減らす計画だ。
今年9月には米国政府が、牧場主、農家、森林伐採業者による温室効果ガス排出削減の取り組みの支援として、1億ドルの支給を発表した。
人口500万人に対し、肉牛・乳牛の数が1000万頭にも及ぶニュージーランドでは、政府が2050年までにカーボンニュートラルを実現すると約束している。また、家畜によるメタンの排出を今後8年で10%、2050年までに最大47%削減するという計画も立てている。
しかしニュージーランド最大の産業を代表する農家たちは、今回の政府の法案に不満を抱いている。
政府によれば、この課税により酪農家は総利益・生産高の5%を失う可能性がある。
羊や牛を育てる農家の利益と生産高は20%減少する可能性があり、それは畜産業界に悲惨な結果をもたらす、とVICE World Newsに語ったのはアンドリュー・ホガードだ。彼は酪農家であり、農村を代表するニュージーランド有数のロビー団体、Federated Farmersの代表を務めている。
「もし政府がこの価格を取り入れたら、重すぎる負担だと考えるひとが出てくる。これは彼らがまともな生活を送る能力を妨げる」とホガードは訴える。
また、農家が自らの農地を林産企業に売らざるをえなくなることで求人市場が干上がり、農業を中心とする小さな町のコミュニティが消えていくことになるのでは、と彼は懸念している。「コミュニティがゴーストタウンとなる指数関数的スパイラルが生み出されるだけだ」とホガードは語る。
今回の法案では税率は示されていないが、2025年には温室効果ガス排出税の支払いが始まる予定だ。
アーダーン首相は、この課税により徴収された資金は農業による温室効果ガス排出を減らすための新技術や研究、また地球環境に配慮した農法を取り入れる農家への奨励金など、農業のために充てられると述べた。