今年の元旦、ロシアのウラジオストクで、朝鮮民主主義人民共和国(以下、北朝鮮)の男性が焼身自殺を図り、死亡する事件が発生した。この男性は北朝鮮から派遣された労働者で、自宅からは、「生活が苦しく疲れた。誰も恨んではいない」などと書かれた遺書が発見されている。
これまで北朝鮮は、密接な関係を持つロシア、中国を中心に、アジア、中東、アフリカ、欧州諸国などに、多数の労働者を派遣してきた。彼らの職種は、林業、鉱業、建設業をはじめ、多岐に渡る。こういった動きは、核開発に端を発する経済制裁をかいくぐり、外貨を獲得するためのものと見られている。海外に派遣された北朝鮮労働者数は、10万人以上とも見積もられ、なかでもロシアでは約5万人が働いているとの報告もある。その労働環境はかなり劣悪で、給料のほとんどは北朝鮮に没収され、手取りは120~150ドル、労働時間は1日20時間に及ぶこともあり、休日はほぼ皆無だ。十分な食事もなく、逃げ出せば北朝鮮に残してきた家族に危険が及ぶ。元旦に起きた焼身自殺も、奴隷のような過酷な日常を苦にした結果では、と推測されている。
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このような状況は、昨年10月の国連総会でも報告された。その資料中にある人権監視団体「北朝鮮海外労働人権国際ネットワーク」2012年報告書では、北朝鮮当局は毎年12億ドル~23億ドルの収益が海外労働者の賃金なのでは、との疑いもあり、「国連保安評議会は、この問題を国際刑事裁判にかけるべきだ」との声もあがっている。
そして3月16日、アメリカのオバマ大統領は、北朝鮮の海外への労働者派遣を制裁対象に盛り込んだ新たな北朝鮮制裁行政命令を発動した。4月上旬には、国務省のロバート・キング北朝鮮人権問題担当特使が、この問題について韓国と協議しているのを明らかにした。北朝鮮はどのような対応を見せるのか。そして海外北朝鮮労働者の行く末は。今後の動向が注目されている。
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金正日政権時の2011年に、ロシアに派遣された北朝鮮労働者の実態を探るシリーズ。全7回。