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ペドロ・レイエスのアート・プロジェクト『Disarm』|銃を自動演奏の楽器へ変身

メキシコの現代作家、ペドロ・レイエスによる武器を楽器へ転換したアート・プロジェクト『Disart』のコンセプトと制作手法について、レイエスとプロジェクト・スタッフらが語る。
15.5.14

ビジュアルアーティスト、ペドロ・レイエス

現代作家、ペドロ・レイエス(Pedro Reyes/以下、レイエス)、彼はメキシコシティで生まれ、現在もメキシコシティを拠点に作品を発表している。レイエスは建築家としての教育を受けてきた背景があり、社会的空間におけるモダニズム的思考、環境問題、地域社会の相互関係に注目し、公共空間や資源の使用について疑問を呈する作品を制作する作家として知られている(2008年の<横浜トレンナーレ>にも参加している)。

レイエスは、危険なエリアを頻繁に旅している。アートにおける素材の使い方の限界に挑戦し続けるというクリエイティブな意味のみならず、文字どおり、そうした地に足を運んでいるのだ。ギャングによる殺人が頻発し、若い女性たちが次々と謎の失踪を遂げ未解決となっている事件で知られる、メキシコの悪名高き都市、シウダー・フアレスといった場所で度々仕事をしながら、レイエスは、アートを通して自分の故郷をより良い場所にすることを目指している。ジャーナリストたちが日常的に行方をくらまし、白昼公然と市民が射殺されるような場所で、暴力に使われる道具を再生利用し、人のためになる力に転換したいと願っているのだ。

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武器を楽器へ

自らのプロジェクト『Shovels for Guns(銃をシャベルに持ち替えよ)』(2008)の一環として、当局が押収した武器を原材料に変えるリサイクル工場を訪れた経験にインスパイアされたレイエスは、武器を楽器へ変えてみせようと決意した。人の命を取り上げるのではなく、生命と音楽を与えるものへと。最新プロジェクト『Disarm』においてレイエスは、チームの協力を得てAbleton Live、MIDI、Max MSPといったプログラムを活用し、銃を自動演奏の楽器へと変身させた。

『Disarm』は実は、メキシコ軍が麻薬カルテルから押収した武器の余りを利用した2012年のプロジェクト『Imagine]』に続く2代目の楽器プロジェクトである。前回と異なり『Disarm』は、ミュージシャンのチームとメキシコ・シティにある彼のワークショップ、Cocolabとのコラボレーションで生まれた。新しい楽器たちはコンピューターでプログラムおよび操作され、予め構成された曲でコンサートをすることも出来るのだ。

レイエスにとってのアート、ネガティブをポジティブへ

多才なレイエスは、彫刻、音楽、パフォーマンス、絵画と様々な領域で活動している。母国でだけでなく国際的にも評価されており、<Venice Biennial>(ヴェネツィア・ビエンナーレ)や<Art Basel Miami>(アートバーゼル・マイアミ)など、権威あるギャラリーや著名なアートのイベントで展示を行っている。

作品について、そして彼の人生とアートが、今なお続くメキシコの苦悩にどのように影響を受けたか、レイエスに話を聞いた。「僕が考えるアートとは、本質的にネガティブなものを、ポジティブなものに変える方法を見つけること。そこに意義があると信じてる。社会や人々の意識を変えられるような、そんな作品を作りたい。」と語る。

レイエスの作品は間違いなく、創造性、実用性の両方において価値がある。広大な武器の廃品置き場を作品のための素材提供の場として利用し、メキシコの麻薬戦争の残骸から、形のあるポジティブなものを作り出しているのだ。

テクノロジーが様々な方法で戦争や破壊、惨事を生み出すのに利用されてきたのを目の当たりにしてきたレイエスはそれでも、テクノロジーはそれを償うことも出来ると希望を抱いている。「テクノロジーの善悪を決めるのは、使い方次第だ。」

またレイエスは、近代的機器をいかにポジティブな目的に利用してきたかについて語ってくれた。

「これは、金属にとっての『解放』だ。もしかしたら君や僕の命を奪ってたかもしれない。だから、楽器にした方がいい。」

「作品を作る過程において、難しいけど素晴らしいのは、武器の音を引き出すことだ。」

「武器はただ荒っぽい音を出すだけじゃないということに気づいたから、とてもいい経験になったよ。子守唄のような繊細な音を出すことだって出来るんだ。」

ペドロ・レイエスの作品について、詳しくはウェブサイトを参照。

© Pedro Reyes; 提供Lisson Gallery, London. www.lissongallery.com