IS支配下にある故郷ラッカの惨状を撮影し、決死の覚悟で世界へ発信する、シリアの勇敢な市民ジャーナリスト集団〈RBSS(Raqqa is Being Slaughtered Silently)〉。彼らの活動に密着したドキュメンタリー作品『ラッカは静かに虐殺されている』が、現在公開されている。ドキュメンタリー作家でもある監督のマシュー・ハイネマンに話を訊いた。
c2017 A&E Television Networks, LLC | Our Time Projects, LLC
生々しいドキュメンタリー映画は、アート系シネマやストリーミング・サービスのなかでも人気のコンテンツだ。そのなかでも、ドキュメンタリー作家のマシュー・ハイネマン(Matthew Heineman)監督作品『ラッカは静かに虐殺されている』( City of Ghosts, 2017)は、絶望的な緊迫感をもってISとの闘いを映しだした、唯一無二の作品である。日本でも4月14日より劇場公開されている本作は、人権活動団体〈RBSS(Raqqa is Being Slaughtered Silently/ラッカは静かに虐殺されている)〉の苦難に密着している。RBSSは、IS支配下にある故郷ラッカの惨状を撮影し、決死の覚悟で世界へ発信する、シリアの勇敢な市民ジャーナリスト集団だ。愛する誰かの命どころか、自らの命さえもが危険にさらされる状況で、非人道的行為に立ち向かう彼らの力強い人間性が、本作品には克明に記録されている。
RBSSをテーマに決めたきっかけを教えてください。私が『カルテル・ランド』の撮影で世界を旅していた頃から、ISの問題はメディアを騒がせ始めていました。関連記事を読み漁り、映画にすべきテーマを探していたある日『The New Yorker』でデヴィッド・レムニック(David Remnick)の記事を読み、そこで初めてRBSSを知り、感銘を受けたんです。それから私は、RBSSのメンバーたちに連絡を取りました。すると偶然、亡命中のメンバーふたりが近くに滞在していたんです。私たちは会って話し、その1週間後から撮影を開始しました。当時潜伏中だったRBSSのメンバーたちは、活動の撮影に消極的だったのではないですか?彼らは、SNSという隠れ蓑から外に出て、ネット上のアバターではなく、実在する人間として発信することを望んでいました。素顔を公表して、イスラム教から逸脱したISと闘う、ラッカ出身の普通のムスリム男性の姿を、彼らは、世界に知らせたかったんです。もちろん素性を明かすことにリスクは潜んでいましたが、彼らはその意義を自覚していました。メンバーたちはあなたを信頼したからこそ、極限状態の密着を許したのでしょうが、どのように彼らの信頼を得たのでしょうか。一度会話しただけでは信頼は生まれません。何週間、何ヶ月もかけて関係を築き、ようやく信頼が芽生えます。私は、RBSSの共同創設者、アジズ・アルハムザ(Aziz Alhamza)を始めとするメンバーたちと、長い時間をともに過ごしました。そうして私は、彼らの日常生活のいち部になったんです。時間をかけるにつれ、彼らとの関係は深まっていきました。信頼を得るのに重要なのは、本音で語ることです。映画のプランも、脚本も、ゴールも決まっていませんでしたが、彼らの物語を発信する手伝いがしたいという自分の意図を、最初から率直に伝えました。
c2017 A&E Television Networks, LLC | Our Time Projects, LLC