コカは数世紀にわたり諸悪の根源とされてきた。コカを神授とし、医薬品としても扱う伝統社会は、麻薬密売組織、とレッテルを貼られてしまう。ペルーのアマゾンで生活を営む先住民族ウィトトの長老によれば、彼らの神は、コカインを聖性を認めつつ、災いをもたらす危険性を否定しない。「罰として、今後、お前たちからコカを取り上げ、白人の手に渡す。この植物は、どこへでも、苦痛と苦悩をもたらし、これがあるところには血の川が流れる」
コカインにまつわるあらゆる事象を追い続ける写真家、カルロス・ヴィリャロン(Carlos Villalón)。コカを神から授かったアンデスの先住民族。コカイン製造に携わり、それを通貨として利用するコロンビアの農民。コカインが産み出す負のスパイラルが引き起こす殺人。南米で生まれ、中米、メキシコを蹂躙し、世界に撒き散らされるコカインが巻き起こす悲奇こもごも…
南米のコカ畑から、ジャンキーの鼻腔まで、コカインが生産され、消費されるまでを、本人のセレクションにより紹介する。