News

バリ島の使い捨てプラスチック撤廃に尽力した姉妹

UN-speaking

バリのビーチ、寺院、稲田は世界的に有名だが、それらと同じくらい有名なのがプラスチック問題だ。毎年、数千トンのプラスチックごみが島周辺の海域に流れ込み、砂浜へと打ち上げられる。

インドネシアのメラティとイサベル・ワイゼン姉妹は、汚染の拡大を目の当たりにしながらバリ島で育ち、自らこの問題に立ち向かうことを決意した。活動を始めた当時、彼女たちはそれぞれ12歳と10歳だった。

Videos by VICE

「そんなに難しいことではありません。自分たちの周りで、プラスチック汚染の問題がどんどん深刻になっていきました。田んぼでも、海でも、ビーチでも。そこで、じゃあ私たちで何をしようか、という話になったんです」と20歳になったメラティはVICE World Newsに語る。

c) Jenya Kadnikova (Bali's Biggest Clean Up 2020).jpg
2020年2月15日、プティテンゲビーチで行われたバリ最大のビーチクリーンアップにて。PHOTO: JENYA KADNIKOVA

まずはSNSで活動を始めたふたりは、路上、川、海辺でプラスチックごみの回収を始めた。市民運動〈Bye Bye Plastic Bags〉を開始し、TwitterやInstagramで多くの支持を獲得しながら、若者に対話やクリーンアップへの参加を呼びかけている。

「ちょうどその頃、世界40ヶ国が使い捨てのビニール袋の使用を禁止していると知りました。彼らにできるならバリもインドネシアも後に続こう、私たちだってできる、というのが最初の気づきだったんです」とメラティは説明する。

この群島国家のプラスチックごみ排出量は、中国に次いで世界第2位だ。バリ島だけでも毎年160万トンが排出され、そのうちプラスチックが30万トンを占める。劣悪なごみ処理システムと熱帯モンスーン気候が状況をさらに悪化させ、インドネシア随一の観光地としてのこの島のステータスを脅かしている。

しかし、プラスチックは、地球上最も長く残る汚染物質として、海やそこにすむ生物を脅かしているだけでなく、温室効果ガスを排出して地球温暖化にも拍車をかけている。

今年、国際環境法センターが発表した報告書によると、「2019年にはプラスチックの製造と焼却によって8億5000万トン以上の温室効果ガスが大気中に排出された。この数字は、500メガワット石炭火力発電所189基の排出量に匹敵する」。さらに、このペースだと「プラスチック使用による温室効果ガスの排出によって、炭素排出量の目標値を達成できなくなる恐れがある」という。

school-march.jpeg
2019年、学生たちによる気候マーチ。PHOTO COURTESY OF BYE BYE PLASTIC BAGS

インドネシアは2025年までにプラスチックごみを70%削減するという意欲的な目標を掲げたが、COVID-19パンデミック下におけるプラスチックへの依存は、確実に目標達成の妨げとなっている。

マハトマ・ガンディの戦術にならい、幼いメラティとイサベルは2017年、ハンガーストライキに挑む。この活動はすぐにバリ州知事の目に留まり、知事は姉妹との対談に同意。その後、知事はバリ島でビニール袋、ストロー、発泡スチロールの使用を禁止する条例を発表し、同条例は再三にわたる催促の結果、2019年にようやく施行された。

「志を同じくする多くの団体や人びとと力を合わせて最前線で活動できたことは、すばらしい体験でした」とメラティは語る。

VWN_Influence_Ep01_Melati_6.jpg
バリ島のビーチに打ち上げられたプラスチックごみ。PHOTO: VICE WORLD NEWS

この活動の成功によって、メラティとイサベルは世界から注目を浴びる。姉妹は国連、世界経済フォーラム(WEF)、国際通貨基金(IMF)に反プラスチックのメッセージを届けた。ふたりはTEDトークにも招かれ、CNN、『フォーブス』誌、『タイム』誌に〈世界で最も影響力のある十代〉に選ばれた。

Bye Bye Plastic Bags(BBPB)キャンペーンもバリから世界に広がり、米国やインドを含む50ヵ所に拠点を拡大。世界中の熱心な支援者から新たにBBPBの活動を始めたいという依頼が舞い込み、出願中の申請は1000件近いという。

「そもそも、私たちの名前が世界中に知られていることが今でも信じられません。ここバリで活動を始めたときは事業計画も戦略もなく、明確な目標はとにかくビニール袋のない故郷を実現したい、ということだけでした」とメラティは打ち明ける。

VWN_Influence_Ep01_Melati_14.jpg
ビニール袋や発泡スチロールなど、バリ島の使い捨てプラスチック製品。PHOTO: VICE WORLD NEWS

しかし、パンデミックは姉妹の活動に大きな障壁を生み出した。世界が衛生と感染予防の名の下に、使い捨てプラスチック製品に大いに依存することになったのだ。インドネシアは特にCOVID-19の被害が大きく、死者は14万人、感染者は420万人を超えた。

禁止条例を無視するひとも多く、規制も緩くなった。

「ビニール袋は完全に復活してしまいました」とメラティはビニール袋再来への不満をあらわにする。「(プラスチック禁止)条例に効力はありません。法の制定と法の施行はまったくの別物であることが、また明らかになりました」

メラティは、パンデミック下においてプラスチックの使用が確実な感染対策とみなされていることは理解している。しかし、彼女にとって、これは政策と行動の変化を推進し続けるための挑戦でもある。感染拡大を抑えるために誰もが他人との距離を置いて生活している今、それを家庭から推し進めるのは難しい。

「私たちがこの問題に向き合い、環境保護を最優先しなければ、これからさらに多くのパンデミックが起きるでしょう」と彼女は付け加える。

ワイゼン姉妹の活動はプラスチックから始まったが、今ではより多くの若者にチェンジメーカーになってもらうことに注力し、昨年には〈Youthopia〉というオンラインのトレーニングプログラムを開始した。

バリを拠点とするこのプラットフォームで、若者はオンラインで活動するコツや、変化を起こすために指導者と対話を行う方法を学んでいる。

「私たちが模範を示しながら指導しています」とメラティ。「若者が立ち上がれば、その勢いは誰にも止められないし、これはまだほんの始まりに過ぎません」

アンソニー・エスゲラのTwitterをフォロー。