FYI.

This story is over 5 years old.

スパイク・ジョーンズのネット上での回答が、神対応である件

今年6月28日から、新作『Her』が日本で公開される、アメリカの映画監督スパイク・ジョーンズ。気さくな彼は、アメリカのソーシャルサイトに寄せられた一般からの質問に、ざっくばらんに答えている。フランクな人柄が表れた回答の一部を、ここで紹介。
3.6.14

スパイク・ジョーンズは毎月AMAで答えるべきだ。毎月、毎月、かかさずに

有名人に質問できるアメリカの「板」、AMA

『Reddit』は、アメリカで人気のソーシャルサイトの一つ。その中に『Ask me Anything』(通称AMA、以下AMAと記載)というサブレディット、日本で例えるなら2ちゃんねる(以下、2ch)の「板」がある。ここではまず、質問を受ける側がスレッドを立てて自己紹介をし、それに対して利用者が質問をする。2chの「〜だけど、なんか質問ある?」の海外版といえば、わかりやすいかもしれない。AMAには多くの有名人も登場している。AMAを通して、誰もが有名人に直接質問できる画期的な場というわけだ。

今まさに新作『Her』が公開となり(日本では6月28日より公開)話題となっているスパイク・ジョーンズ。今回、『マルコヴィッチの穴』、『アダプテーション』などの人気作品で知られる奇才がAMAに登場!ということでスレッドも大盛り上がり。そのときの回答がまさに神対応だったということで、いくつかのQ&Aを抜粋して紹介したい。

Advertisement

質問:誰かの頭に入り口をつけるとしたら?

スパイク:

誰かが質問して削除したコメントだけど、『誰かの頭に『マルコビッチの穴』みたいな入り口をつけるとしたら誰を選ぶ?その理由は?あと、『アダプテーション』(※1)でニコラス・ケイジを相手に監督した感想は?』というのがあった。

僕はジョージ・W・ブッシュの内側がどうなっているのか気になる。彼は優しくて悲しいタイプだと思う。彼の絵を見たことある?鑑賞には15分あれば十分だろうけど。

質問:監督作品『her/世界でひとつの彼女』(※2)のアイデアを思いついたきっかけは?

スパイク:

アイデアはもともと10年くらい前から持っていたと思う。オンラインの人工プログラムとIMチャットをしたときからだ。プログラムの名前は正確に思い出せないが、Alicebot(※3)だったかもしれない。そのプログラムにはまだ限界を感じたが、そこから人工知能プログラムとつきあう男性という最初のアイデアを思いついた。でも、それを脚本にする方向で考え、理解しようとし始めたのは、それから5年後だった。

質問:死んだらどうなる?

スパイク:

ワオ!すごい質問だね。悲しいことにわからない。でも、デヴィッド・ボウイの『クイックサンド』(※4)は好きだな。できればもっと提供できるものがあればよかったけど、僕もみんなと一緒で、いつか知るときが来るんだと思う。

以下はコーラスの部分:

[コーラス]

自分を信じないで

信念を使って欺かないで

知識は得られる

死を解き放つことで

質問:『her/世界でひとつの彼女』で描いた、未来様式の背景にあるインスピレーションについて何か一言。

スパイク:

インスピレーションは、とっさに思い浮かばない。デザインに関する限りはね。でも何かしらは確かにあった。デザインの背景には、温かく、心地よく、簡単で、利用しやすいと感じるような世界を作ろうというアイデアがあった。ほしい物がすべてある世界に見えても、孤独感と恋しさはあって、人はつながりを必要としている。これは、現代の憂鬱の形なのかもしれない。

だから、早い段階でKKバレット(プロダクションデザイナー)と僕は、テクノロジーやデザインを未来的にするのをやめて、自分たちがワクワクしてうれしくなるような未来的デザインを作ることにしたんだ。

質問:好きなフォントは?

答え:Helvetica(ヘルベチカ)が一番いい! 他のどんな書体もかなわないよ。

質問:お薦めしたい無名の映画は(そしてアーケイド・ファイア『アフターライフ』のライブミュージックビデオの告知も)?

スパイク:

みんなたぶん観てなくて、名前を調べないといけないんだけど、日本の60年代の映画。ものすごくシュールだけど、感動するし面白い。一人の男が砂漠で一晩過ごすのに、穴の中に下りて行くはめになる。穴の中の家には女が暮らしていて、結局、男は穴から抜け出せなくなるんだ。これは観たほうがいいから、これ以上話したくない。登場人物はすごくリアルで、彼らの関係もすごくリアルで、だけど不安な夢の前提のようにシュールなんだ。

(The creators projectよりーータイトルは『砂の女』だ。間違いない)

もうひとつ、『ワンダフルライフ』という日本の映画を思い出した。ある意味、先ほどの死後はどうなるかという質問に関連している。映画では、死ぬとある場所に7日間行くことになっていて、そこであの世に持っていく思い出を1選ばなきゃならない。選べる思い出はたった1つだけで、カウンセラーがどれにするか決めるのを手伝ってくれる。でも実際には、思い出はそのまま持っていけなくて、俳優を使った再現映画を撮って、それを持っていくんだ。

Advertisement

これがその予告編だけど、映画のトーンをしっかり捉えてなくて、実際の内容よりも間が抜けた感じになってる。

この『ワンダフルライフ』(英題:『After Life』)の予告編を探していたら、アーケイド・ファイア(※5)の歌『アフターライフ』(Afterlife)のために僕らが作ったビデオを見つけた。質問にないのはわかっていたけど、誰かが興味を持ってくれるかもしれないから、このビデオも載せておく。数カ月前に撮ったもので、YouTubeミュージックアワード向けのライブミュージックビデオだ。主役はグレタ・ガーウィグ(※6)で、ビデオは彼女の家のキッチンから始まる。ところで、『Frances Ha』(※7)を観た人いる?グレタがノア・バームバックと一緒に脚本を書き、ノアは監督もしているんだけど、僕が今年気に入った映画のうちの一本になっている。

質問:レターマン(※8)の番組を観て、ホアキン・フェニックスが『her/世界でひとつの彼女』のセオドア役にふさわしいと確信した理由は?

スパイク:

ホアキンは最初に選んだ俳優さ。最初は適役かどうか確信が持てなかったけど、彼はスクリーン上で人を引きつけるとわかっていた。僕は俳優としての彼が好きなんだ。とても生き生きとしているからね。スクリーン上の人物を追う映画で、彼は本当に人を引きつけるだろうと思った。でも、彼がこの役に合っているか、自信はなかった。

だけど彼がレターマンと対談したとき、その前年に『俳優を辞めてラッパーになる』と言ったことについて、自分は愚か者だったと謝っているのを見たんだ。彼はその対談でレターマンにずいぶんと絞られて、恥ずかしがって笑って謝っていたんだけど、レターマンは『君は私の番組を使って、あれはドキュメンタリーだと言った。出演料を支払う必要はなかったかもしれないけど、結局ドキュメンタリーじゃなくて台本のある映画ということになったのだから、100万ドルほど払ってもらわないといけないよね?』とまくしたてた。ホアキンは笑っていたけど、レターマンは攻撃の手を緩めなくて、とうとう最後に『その件は番組のあとで話してもいいかな?』とホアキンは言ったんだ。

その場面から、親しみやすくて遊び心のあるホアキンの別の一面を見て、彼にとってはまり役になるんじゃないかと思った。そして脚本を書き終えてロサンゼルスに戻り、彼に会った最初の5分で、彼を起用しようと思ったんだ。

質問:『her/世界でひとつの彼女』の上映中に初キスをしたよ

スパイク:

君の初デートと初キスの一部になれて、ものすごく光栄だよ。君のコメントには本当に込み上げるものを感じた。シェアしてくれてありがとう。

この回答からもわかるとおり、スパイク・ジョーンズは心のこもった個人的なコメントが寄せられたことにも感謝した。彼より感じのいい人がいるだろうか。

脚注:

(※1)『アダプテーション』:スパイク・ジョーンズが、『マルコヴィッチの穴』の脚本家、チャーリー・カウフマンと、再びタッグを組んだ作品。『マルコヴィッチの穴』の成功後に、チャーリー・カウフマンが新作の脚本に苦しむ様子をニコラス・ケイジが演じている。

(※2)『her/世界でひとつの彼女』:スパイク・ジョーンズが監督し、2013年にアメリカで公開された映画。人工知能による声との恋をテーマにしている。スパイク・ジョーンズは、この作品で初めて単独で脚本を書き、アカデミー賞脚本賞を受賞した。日本では、今年6月28日に全国で公開される。

Advertisement

(※3)Alicebot:チャットの相手ができる、人工知能プログラム。

(※4)『クイックサンド』:デヴィッド・ボウイが1971年に発表した4枚目のアルバム『ハンキー・ドリー』内に収められている曲。邦題は『流砂』。

(※5)アーケイド・ファイア:カナダ・モントリオールを拠点として活躍するバンド。今年7月に開催されるフジロック・フェスティバルにヘッドライナーとして初出演する予定。

(※6)グレタ・ガーウィグ:アメリカの女優・映画監督・脚本家。

(※7)『Frances Ha』:ニューヨーク・ブルックリンを舞台にしたモノクロ映画。2013年公開。

(※8)レターマン:アメリカの人気司会者、デイヴィッド・レターマンのこと。自身のトーク番組を持っている。