10年間に渡り捉えてきた、世界最古の生物たち
2000年前といえば、西洋ではローマ帝国が勢力を持っていた頃。想像を超える長い年月を生き抜いてきた生物を10年間追いかけ続けたアーティストがいる。
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ブルックリンに在住するコンテンポラリー・アーティスト、写真家のレイチェル・サスマンだ。彼女は、地球上で2000年以上生息してきた生物を撮影し、『The Oldest Living Things In The World(世界最古の生物たち)』と題した一冊にまとめた。この春に出版された本書は、強い生命力で生き抜く生物による印象的な姿が話題となり世界中でニュースとなった。樹齢2000年以上になるバオバブの木の他にも、カリブ海の脳サンゴ(※1)、グリーンランドの地衣植物、そしてオレゴン州のオニナラタケなど、日本を含めて世界各地をまわって捉えた生物の写真が掲載されている。
ドキュメンタリーフィルムで生物の危機を伝える
本書には、前宣伝として作られた短編ドキュメンタリーフィルム(上)がある。そこには、古代から生き続ける植物たちの美しい姿が記されている。フィルム上でサスマンは、「気候変動と人間の侵略によって、これらの種の多くが危機にさらされている」と述べている。彼女が撮影した生物の多くは、約1万年前から生き続けており、ユタ州のポプラの木などは樹齢8万年に及ぶ。こうした生物が直面している危機を広く伝えることこそ、生物を救う唯一の手段なのかもしれない。
サスマンはこの10年で、著名な生物学者の協力を得て、貴重で回復力のある生物を世界各国から見つけ出して記録した。そのプロジェクトは2010年の< TEDカンファレンス>(※2)で発表され話題となった。
『The Oldest Living Things In The World』は、アート界の伝説の人物ハンス・ウルリッヒ・オブリストと科学ジャーナリストであるカール・ジンマーのエッセイがつき、地球環境について考える日「アースディ」である4月22日に発売されている。古代から生き続ける生物は、単に長命なだけでなく、生命体としての美しさを失っていない。サスマンの写真はその事実を証明している。
脚注:
(※1)脳サンゴ:2000年を超えるものもあるというサンゴの一種。
(※2)TED:TED (テッド)という名称は、テクノロジー、エンターテインメント、デザインが一体となって未来を形作るという考えに由来している。1984年に米国で始まった。