ちょっとお時間いいですか? この上のバンド、SALEMS LOTTっていうんですが、じっくり見て欲しいんです。たっぷりのアイライナー。真っ白な肌。そして天を衝く怒髪。どうでしょう、改めて考えてみてくださいませんか? 何か思いませんか? 「なんで彼らはこんな格好しているんだろう?」
いつの時代になっても、この手のバンドは存在しています。80年代にはMÖTLEY CRÜEがいて、現在もBLACK VEIL BRIDESとかね。数えきれないバンドがグラムスカムなメタル趣味を披露してきましたが、このルックスが生み出した「きゃー、ショック! スゲエ格好してる!!」ってな効果は、確実に失われ、その代わりに滑稽なイメージだけが残ってしまいました。それなのに、なんでお化粧バンドは消えないのでしょうか?
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本心、私は、この疑問に対する正当な答えを、それほど欲しているわけではありません。ほとんどの人たちと同様、この手のバンドの写真を見たなら、99.9999999パーセント、無視して先へ進むだろうし、聴かないだろうし、今後もそうやって毎日を過ごすと思うんです。ただ、このSALEMS LOTTの写真が目に入った瞬間、「なんでこんな格好してるんだろう?」というシンプルな疑問がタイミング良く生まれてしまったんだからしょうがないんです。
このSALEMS LOTT についてチョット説明させていただきます。
*ルックスはご覧の通り。
*ハリウッドのクラブ、ヴァイパー・ルームでは2回ほど出禁になっていると豪語しています。(しかし店のスタッフ曰く、「あのバンドが客に向かって発煙弾を投げたのは知っていますよ。でも出禁にはしていないハズですが…」)
*彼らのウェブサイトには次のような記載があります。「俺たちは、すっかり飼い慣らされたロックシーンに対する究極のアンチテーゼだ!」
*トニー・F・コープスという名のメンバーがいる。でも「F」が何を表わしているかは分かりません。
*彼らの曲“S.S. (Sonic Shock)”のビデオを「紹介して欲しい」と頼まれました。
彼らがなぜこんなバンドをしているのか知りたかったので、私はシンガー/ギタリストのジェット・ブラック(Jett Black)と電話で話しました。頼まれたので、ビデオも観てください。
どうしてこんなバンドやっているんですか。
俺たちは、「今まで誰も見たことのないバンドをやってやるぜ!」って始まったプロジェクトだ。攻撃力とスピードとパワーのミックス。誰もこんなことやってないだろ。ヴィジュアルも最高だし。オマエにもわかるハズだ。
ええ、確かにわかります、ヴィジュアル面では…
な、そうだろ! ショッキングで強力なパフォーマンス、ヘヴィーでアグレッシブなサウンド、そして俺たちみたいなヴィジュアルの融合。これって、過去一度もミックスされたことが無い、ってことを俺たちは発見した。初めて完成させたのがこのSALEMS LOTTなんだ。
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あなたたちにとって、ショッキングなものとは何なのですか。
もちろん、俺たちを見るだけでも充分ショッキングだろ。俺たちにはパワーがある。オフェンスするパワーだ。それを目に見えるようにしている。だから髪の毛を逆立てているのも、ライオンみたいだからだ。ステージでも色々やった。だからヴァイパー・ルームは出禁だ。火も燃やした。牛タンも持って来た。あんまり自慢すると怒られるんで、今日はこれくらいにしておくけど、ステージに持ち込むのは、ほとんどが動物の肉の類いだ。それらは、すべて客の反応を引き出すため、限界をブチ破るためだ。俺たちが社会の一部分ってことも、飼い慣らされた音楽業界にいることもわかっている。でもさ、何もかもがウソくせーんだよ! ペテンだらけだ! 俺たちがやっていることは、そんなシーンをブッ壊すためだ。そして客を楽しませようとしているんだから、単なる悪フザケじゃねぇんだ! オマエならわかんだろ?
ええ。みんなにショックを与えるために必要なものは何だと思いますか。
わからないね。でも必要なものは必要だ。だってさ、俺たちが生きているのはウソに満ち溢れた時代なんだ。例えば、オマエがひとつ間違ったことをヌかせば誰もがそれに腹を立てる。同時に、ヤツらはオマエがそんなことヌかすとは思っていなかったわけだ。だからヤツらの感覚は麻痺しいる、ってワケだ。なのに簡単に腹を立てる。両刃の剣なんだよ。
ちょっと哲学的で難しいです。では、SALEMS LOTTに熱中している人たちは、茶化したり、皮肉が混ざっていると思いますか?
いや、俺たちのファンに皮肉なんてものはない。連中は冗談抜きでヴィジュアル系バンドのリアル・ファンさ。茶化すんなら、もっとヴィジュアル系バンドが増えてもおかしくないだろ。そんなバンドが少ないから、リアルな俺たちの価値をわかっているんだ。俺たちはギャグじゃない。パロディでもない。俺たちはマジメだ。クソマジメだぜ! でもな、冗談を受け流すこともできる。そして調子コイてもいない。だからハッキリさせておきたいんだけど、ヴィジュアルであるならば、ジョークである必要はないんだ! どいつもこいつも勝手にギャグにするから、俺たちは気分が悪くなったり、自信が無くなったりするんだ。そういうのがバンドの危機になることもあんだよ! メディアはビジュアル系バンドを叩いてばかりだ。そういうのはもうウンザリなんだよ!
では、SALEMS LOTTにショックを与えているバンドを教えてください。
俺たちは、あらゆるグループから影響を受けている。最高にポップなものから、最高にヘヴィーなもの、そして最高に残酷なものまでだ。あらゆるものからショックを受けてる。例えばアリス・クーパー(Alice Cooper)なんかさ、俺たちのやり方でアップデートしてミックスさせているんだ。
そのヴィジュアルはどうやって決めたのですか? 偶然ですか? 同じような服装同士でくっついたのですか? それともみんなで一緒に決めたのですか?
ま、両方の要素がある。俺たちは全員異なるバックグラウンドを持っている。それぞれが、どういう風に見せたいかっていうアイデアを持っている。俺たちはアグレッシブでパワフルな音楽をやりたいし、楽器もうまくなりたい。同時にヴィジュアルでは、演じるキャラではなくて、それぞれの個性としてのキャラを出している。全員が自分なりのキャラを見つけ、そしてまとまったのさ。オマエ、わかるだろ?
ええ。お化粧にどのくらい時間がかかりますか?
かなり短いよ。場所がどこであっても2~3時間で完成するからね。ま、ほとんどが髪の毛だけど。
いや、長いと思いますよ。音楽よりも外見を強調し過ぎているのではありませんか? その2~3時間で曲を書けるんじゃないですか。
そりゃ違う! 2~3時間、俺たちは黙って座ってるだけじゃねぇ! メイクのやり方や髪の毛の立て方をマジで工夫してんだよ。ステージ前のたった2~3時間だし、その前の6~8時間は、きっちりと練習やウォーミングアップや、それから、それから…いろんなことをやってんだよ! そこはわかってくれよ。俺の考えでは、ヴィジュアルってのは、いち番上のチェリーみたいなものさ。いち番上にチェリーが乗ったサンデーだよ。チェリーにケチつけたりしないだろ。サンデーは変わらず美味い、チェリーが嫌いなら、脇に置いときゃいいんだよ。誰もチェリーのことで怒ったりはしない。チェリーに多くの労力をかけたりはしないんだよ。分かるだろ?
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ヴィジュアル無しの音楽はありえませんか?
もちろんやろうと思えばできる。でもね、この時代の今日という日に、俺たちは刺激を与えたい。みんなの注目を集めたい。例えば、他のバンドが同じようなヴィジュアルを始めたら、俺たちはその正反対をやるだろう。素顔さ。だからこのヴィジュアル無しだってやれる。ただ他の誰かがやってることをやりたくないだけなのさ。
SALEMS LOTTのルックスは完全にオリジナリティーなものだと思ってますか?
正直にいう。違う。もちろん影響を受けたバンドから取り入れた部分もある。でもさ、みんなそうやってスタートしてるだろ? アリス・クーパーだって、アーサー・ブラウン(Arthur Brown)を真似しただろ? そんなバンドたくさんいる。そのリストを作成することもできるよ。でもさ、さっきもいったように、俺たちはそういったバンドからアップデートして前に進んでんだよ。
ええ。SALEMS LOTTがその恰好でヒップホップをやったらどうなると思います?
あ…それは面白いかも。でもさ、俺たちがヒップホップをやらないのは、俺たちが影響を受けた音楽じゃないからだ。でもちゃんと聞いてみようかな。リスペクトはすると思う。どんなジャンルのどんなアーティストでも、俺たちはリスペクトしている。SALEMS LOTTは心の狭いヤツの集まりじゃない。エリート主義者でもない。何かを取り入れて、工夫しながら活動するアーティストには、心からリスペクトしているのんだ。ここんところ、ロックの世界は同じことの繰り返しになっていると俺は思っているからね。
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そういえば、ヴァイパー・ルームから2回出演禁止処分を受けたんですよね。
まあな。
1回目の出禁はどうしてですか。
1回目のことは、あまり詳しくは話せない。ただヤツらは俺たちの演奏を見て、もうここでやらせない、っつったんだよ。2回目は、メタルのサイトか何かのイベントだったんだけど、メンバーが牛タンを切り裂いて、客の中に投げ込んだ。あとは火とか発煙弾を使った。今は思う。やり過ぎだったと思う。
あなたたちはどんな日々を送っているのですか?
俺たちは全員、常に腹を立てている。そして怒りを抱えている。俺たちは若く、貧しい。ヤング・アンド・プアーだ! だからステージではやりたいことをやる。やってやるんだ! これが俺たちの現実の生活だ! 喧嘩もするし、問題もたくさんある。だから酒を煽ることもある。クラブに行けば、追い出されることもある。すべて俺たちの時間だ。でもそれはバンドとは関係ない。俺たちの日常生活だ。オマエからすれば、刺激的に映るかもしれないけど、フェイクでもなんでもない。リアルな生活なんだ。この前もスゲエことがあった。ビデオを撮影する前、メンバーのトニーが鼻血たらしながらきたんだ! バーで喧嘩になって、大勢のヤローがヤツの顔を殴ったんだ。倒れても殴られ続けたんだ。トニーはそこでひれ伏さなかった。ヤツはそいつらの顔に血を吐きかけたんだぜ! スゴくねぇか? こんな話はしょっちゅうある。俺たちはこのまま突き進む。でもいっぽうで、型にハマらないようにも気をつけているんだ。