海に存在するプラスチックごみが特定の生物の進化を助長し、他の種を脅かす可能性があることが、最新の研究で明らかになった。
2021年12月発刊の学術誌『Nature Communications』に掲載された記事によると、〈新外洋〉生物群、つまり海洋プラスチックごみで繁殖する生物の出現が確認された。
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スミソニアン環境研究センター(Smithsonian Environmental Research Center)とウィリアムズ大学、その他の海洋研究機関が共同で行なったこの研究は、海洋生物がいかにプラスチック、種子、海藻などの浮遊ゴミに付着して海岸沿いを移動しているのか、ということの現時点での理解を前提にしている。このプロセスは〈海洋ラフティング 〉と呼ばれ、様々な研究が進んでいるが、あくまでも一時的なプロセスと想定され、過去の研究は、ゴミ上での持続的な生息ではなく沿岸生物の一時的な移動に焦点を当てていた。
論文によると、海洋プラスチックごみの急増は、沿岸生物が浮遊ゴミを住みかとすることで外洋に生息する恒久的な機会を生み出したという。
スミソニアン環境研究センターの博士研究員で、本論文の筆頭著者であるリンジー・ハラム氏は、NPO〈Ocean Voyages Institute〉と協力し、カリフォルニア州と日本の間の北太平洋旋廻から103トンものプラスチックを回収し、分析。その結果、イソギンチャクやエビのような端脚類など、数多の沿岸生物がゴミ上で繁殖していることが明らかになった。
「プラスチックごみの問題は、(生物による)摂取やもつれだけに留まりません」とハラム氏はプレスリリースで明言した。「沿岸生物の生物地理学が、私たちの今までの想定を遥かに上回る可能性があります」
研究者たちが最初にこの現象を観測したのは2011年、東日本大震災と津波の後だった。大きな帯状のごみが、北太平洋のハワイと北米西海岸付近の海域へと流れ込んだ。論文によれば、「日本の何百種もの海洋生物」が6000キロを移動したゴミに生息していることが判明し、さらにそのうちの多くが海で何年にもわたって成長、繁殖していることがわかった」という。
本論文のデータは2017年分までしか存在しないが、ハラム氏はそれ以降も、北米沿岸に流れ着くゴミに注目し続けていたという。彼女は2021年まで太平洋を漂流するプラスチックの観察を続けたが、津波の後2〜3年以内にゴミの漂着は止まった。
「このことから、海に浮かぶプラスチックごみの並外れた耐久性と浮力が、外洋に沿岸生物が生息可能な、長期的かつ例外的な生息場所を提供しているのではないかと考えられます」とハラム氏はメールで述べた。
この発見から、これらの生物群が、一体どうやって海面のプラスチックごみという条件下で生き残ってきたのか、という疑問が生まれた。ハラム氏と共同執筆者は、これらの漂流する生物と水面を生息の場とする水表生物(海面に生息し、鳥の気嚢のような〈海と空の境界〉で生存するための独自のメカニズムを発達させた海洋生物)の両方を指す言葉として、〈新外洋(neopelagic)〉という新たな用語を作り出した。
さらに、浮遊するプラスチックごみは外来種の移動を促す可能性もある、と本論文は指摘する。つまり、プラスチックごみによって繁殖が盛んになる生物もいれば、破滅へと導かれる生物もいる。その結果、新外洋生物が外洋を漂流してたどり着いた先の沿岸部で、資源の奪い合いが発生する。
「沿岸生物はこれらの〈漂流者〉と直接争うことになります」とハラム氏はプレスリリースで述べた。「場所を求めて競い合い、資源を求めて競い合う。これらの相互作用については、ほとんど明らかになっていません」
研究者たちは、この論文が今回の問題をはじめ、世界のプラスチックごみがもたらす生物学的影響の研究の礎となることを願っている。
「世界的なプラスチック汚染問題は、外洋の動植物のコミュニティを作り変えています」とハラム氏は語る。「この変化が海の生態系に及ぼす影響は、まだわかっていません」
Update: This article has been updated with comment from study co-author Linsey Haram.