クイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジの世界観を具現化したMV
今回紹介するのは、昨年に公開して話題を呼んだクイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジ(Queens Of The Stone Age)のインタラクティブ・ビデオ『The Vampyre Of Time And Memory』。
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本作品は、レディー・ガガ、レディオヘッド、ソニックユースといった数々の大物のアートワークを手がけてきたポップアート・デザイナー、キー・アレンス(Kii Arens)とジェイソン・トゥルッコ(Jason Trucco)を監督に迎え、The Creators Projectプロデュースという形で制作された。
現在はMVだけでなく、オフィシャルサイトにて、この作品の世界観をどっぷりと味わうことができるので是非体験してみて欲しい。
オフィシャルサイトに移動すると奇妙かつ斬新な世界へと案内される。マウスを移動させながら建物の奥へ進んで行くと、楽曲に合わせて複数の物語が展開される。その中においていくつかの仕掛けが施されており、まるでホラー映画を観ているような、もっと言えば実際にお化け屋敷に迷い込んでしまったような感覚を覚えるだろう。
アートとテクノロジーの融合
インターネット上には多くのインタラクティブ・ビデオが散らばっているが、作り手(バンド)の精神を反映した作品はそう多くはないだろう。キー・アレンスとジェイソン・トゥルッコはHTML5を使って最新の技術をつぎ込んだ上で、バンドが表現したかった世界観を徹底的に具現化したと言えるだろう。
2人の監督は、この作品に込めた前衛的なアイデアをThe Creators Projectにこう語ってくれた。
「全てのアートはテクノロジーと結びついている。テクノロジーを通して、人が経験したことやアイデアそのものが世の中に共有されていく。そんな共有体験を多くの人と分かち合うために、現在使える全てのツールを駆使して制作したのが、今回の作品なんだ。」
『The Vampyre Of Time And Memory』はクイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジの精神に繋がっていると言えるが、そこからは少し離れて、この作品自体が、今まで公開されてきたビデオとは違った意味の「価値」があるということについて説明していきたい。
自分の作ったポスターを掲げるキー・アレンス
キー・アレンスはクイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジと多くの作品で協業しており、バンドのツアーポスターのデザインを数多く手がけてきた。バンドがこれまでにも扱ってきたテーマを連想させるような映像に仕上がっていることからも、キー・アレンスとバンドの強い関係性を感じることができるだろう。「ヴァンパイア」「ゴースト」「悪魔」といったモチーフは、バンドのキャリアに一貫して見られるものであり、キー・アレンスはそれを十分に理解した上でこの作品を作り上げている。
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過去の自分たちに対するオマージュも
今回のインタラクティブ・ビデオは、彼らが関心を寄せている「ダークな芸術」や「黒魔術」をバーチャル世界で再構築し、私たちを驚かせながらも何とか理解できる形に昇華されている。
またバンドのフロントマンであるジョッシュ・オム(Josh Homme)が、2011年に受けた手術の失敗によって一時的に心臓が止まり(数分間の)死を経験したことも忘れてはならない。よくあるロックスターの武勇伝だと片付けてしまうこともできるが、「死」を経験したという意味において、彼はこういった「ダークな世界」を語る資格があると言えるだろう。
さらにビデオには、神秘的な世界観を演出するために以下の要素も盛り込まれている:
幽霊の化身のようなキャラクター
オカルト感溢れる宗教的アイテム
薄気味悪い人物
様々な工夫が施されている『The Vampyre of Time And Memory』だが、本作品の中で最も印象的であり、語られるべきポイントはやはり「動物の剥製に囲まれるシーン」だろう。2002年にバンドが公開した『No One Knows』のMVでは、彼らが鹿に襲われメンバーが剥製にされるシーンがあったことを思い出す。
以前は「動物に支配され剥製にされてしまった」彼らではあるが、今回の作品の中では形勢が逆転している。動物たちの運命を握っているのは彼らである。
過去の自分たちの作品に対するオマージュをさらりとやってのけながら、バンドの精神を徹底的に表現した本作品。もう一度じっくりこの世界観を味わってみてはいかがだろうか。