要旨:確かにペットフードはおいしそうだ。茶色いドロッとしたペットフード。その種類は様々で、たとえば〈栄養たっぷりビーフシチュー〉〈チキンとグレイビーソース、ライスとほうれん草付き〉〈シーフードグリル〉、挙げればきりがない。ペットフードが人間の食べ物のようになっても、それは決して驚くべき問題ではない。なぜならペットフードを選び、購入するのは人間なのだから。しかも犬は、何千年にもわたり、人間の残飯などを食べながら飼い慣らされてきた。となると、人間だって犬用のペットフードを食べれるんじゃないか、と考えてもまったくおかしくない。そこでこんな疑問が浮かぶ。「もし、ウチの犬のペットフードを口にしたら、どんな悪影響があるんだろう?」
基本情報:犬や猫のペットフードには肉類が含まれており、その肉は人間が口にする鶏肉や牛肉と同じ農場で生産される。NYストリップステーキ* のような上質な肉はペットフードとして使用されず、切れ端や内臓などが多く使われる。あらゆる部位を食べ尽くす〈フード・ライフスタイル〉の人なら、問題なく受け入れられる。ペットフードには、得体の知れない変なものは入っていないのだ。
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「全部そうだとは断言できませんが、人間用の食品工場よりもかなり高い規格で操業しているペットフード製造工場もあります」。そう述べるのは、ペンシルベニア大学で教鞭をとる、認定動物栄養学者、キャスリン・ミシェル(Kathryn Michel)。しかし、いくら衛生が確保され、安全基準がある程度保証された空間でペットフードが製造されているとしても、人間が食料品店で購入するステーキ肉や、製造・加工されたシリアルと同じ基準を保っているとはいえない。もし、ペットフードを口にして具合が悪くなったとしても、法的手段には訴えられない。
法令によると、「ペットフードの多くは、人間による摂食に適していない」という。米国内で販売されているペットフードは、米国食品医薬品局(FDA:US Food and Drug Administration)によって管理されているが、規制は、各州の権限により実施される。各州は基本的に、政府管理機関傘下の米国飼料検査官協会(AAFCO:Association of American Feed Control Officials)が定めるガイドラインに従っている。
考えられる最悪の事態:たとえば、開封されたドライタイプのペットフードが、キッチンシンクの下の汚れた収納の隅に保管されていたとしたら、大腸菌や有害な病原菌の温床になっている可能性が高い。そんなものは口にしたくないし、ペットにもそんな状態のペットフードは与えるべきではない。そのため、ペットフードを扱う前後にはきちんと手を洗ったほうがいい。自分で料理をするのと同じだ。「私たちには、自ら食べるものを扱うのと同じくらいの衛生意識で、ペットフードを扱う習慣がありません」。そう語るのは、ベス・アン・ディットコフ(Beth Ann Ditkoff)。サラ・ローレンス大学生物学部の非常勤講師であり、『Why Don’t Your Eyelashes Grow?』の著者でもある。
一方で、缶詰の場合は、製造工程で殺菌されるが、ごくまれに、異物が混ざる。2007年、150以上ものブランドのキャットフード、ドッグフード、そしてフェレット用フードが回収され、大きな騒ぎになった。グルテンと米タンパク質を輸出する中国企業が、自社製品のタンパク質含有量検査を、メラミン混入により偽装したのが原因だった。メラミンは、熱硬化性プラスチック〈メラミン樹脂〉の主原料だ、この、メラミン混入により、米国内でペット14匹が死亡した。このような手口は、西洋はもちろん、中国でも違法行為だ。しかし、その1年後、中国では乳児用の粉ミルクにもメラミンが混入され、約30万もの乳児に被害がおよび、10余人の死亡が確認された。事件の責任を問われた企業の幹部2名は、中国の法律のもと、死刑を宣告され、処刑された。
人間の食品なら、汚染されている可能性は極めて少ないが、そうではない食品を試しに食べてみたら、非常にアンラッキーなことに、それはサルモネラ菌やリステリア菌に侵されたドッグフードだった、という可能性はなきにしもあらずだ。
では何がおこるのか:おそらくもっともおいしくない食べ方だが、ペットフードでも、軽食レベルの肉や野菜は摂取できる。「ペットフードには、消化できないものは入っていません」とミシェルは言明した。犬も猫も、人間と同程度のタンパク質を摂取する必要がある。しかし、基本的にキャットフードは炭水化物の含有量がかなり低い。一方、食物繊維を含むブランドフードもある。しかし、残りの人生をペットフード、と決めたのであれば、長期的にみた場合、栄養不良に陥る危険性がある。「犬や猫はビタミンCを摂る必要がありません。なぜなら体内でつくり出せるからです」とミシェルは説明する。そのため、ペットフードはビタミンCを含んでいない。人間にとってビタミンCは必須の栄養素だ。つまり人間が長いあいだペットフードだけを食べ続けたら、壊血病にかかる可能性が高くなる。
結論:賭けに勝たなければならない。食料不足のなかで数日間のサヴァイヴを強いられる。そんな状況に追い込まれたなら、安心してペットフードの缶を開けてかまわない。しかし、他の食料品と同じように、ペットフードを触ったあとは必ず手を洗うこと。清潔な密封可能な容器に保管するのも忘れてはいけない。
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Adrián Simancas -
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