Who Are You?:小林怜央さん(24歳) 訪問介護士

どうしてもお名前を思い出せない方っていますよね。老化からか、最近は更に酷くなっている気がします。そこで、「あの人は○○に似てる」って、芸能人とかに当てはめて、お名前を忘れないようにしています。しかし、よく考えると「バービーボーイズのコンタに似てる人」って当てはめても、その人の名前はコンタではないので、お名前はやっぱり出てきません。コンタってお名前の方に出会わないと、この方法は使えないと気が付きました。みなさんは、どうしてらっしゃいますか?

日々の生活の中で、私たちはたくさんの人たちとすれ違います。でもそんなすれ違った人たちの人生や生活を知る術なんて到底ありません。でも私も、あなたも、すれ違った人たちも、毎日を毎日過ごしています。これまでの毎日、そしてこれからの毎日。なにがあったのかな。なにが起るのかな。なにをしようとしているのかな。…気になりません?そんなすれ違った人たちにお話を聞いて参ります。

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小林怜央(こばやし れお)さん(24歳):訪問介護士

(カメラマン:宮本さん)お優しそうな感じですね。

嬉しいです(笑)。

宮本さん、今日はノリノリですね! 小林さんは訪問介護士さんなんですね。今日もお仕事だったんですか?

はい。

介護士さんにお会いするのは初めてかもしれません。

あ、初めまして。

初めまして。すいません、介護士さんのこと、ほとんど知らないのですが、介護士さんといっても色々あるんですよね? 例えばデイサービスの方とか、ケアハウスにいらっしゃる方とか。

はい。私は、事業所に所属していて、現場にヘルパーとしても行きますし、サービス提供責任者っていう職にも就いているんです。ご家族と、現場に行くヘルパーさんと、ケアマネージャーという計画を立てる人のパイプ役の仕事もしています。

すいません、もう一度お願いします。サービス…

サービス提供責任者。サ責っていうんです。

で、ケアマネージャーさんという方もいるんですか?

はい。ケアマネージャーさんは、サービスの計画を立てる人なんです。その人も元ヘルパーで、経験を積んでいないといけません。ケアマネといいます。

その計画に基づいて、ヘルパーさんがお仕事をするんですか?

はい。

同じ現場に、皆さんいらっしゃるんですか?

いいえ。普段は各事業所にいて、ご家族やご本人から「こうして欲しい」等、希望がきたら窓口であるサ責とケアマネで連絡を取り合い、形にしていく感じなんです。

ご家族の方が困っていたり、何かいいたいことがあったら、まずサ責の小林さんに連絡するんですか?

はい。

それで小林さんがケアマネージャーさんに連絡して、ケアマネージャーさんがヘルパーさんにこうしてくださいって…

そこがまた違うんです(笑)。

違うのかー(笑)。

ご本人とご家族は、基本的に誰にいってもいいんです。いいやすい人にいえばよくて、サ責の私にはいいにくいことだったり、ケアマネにいいにくいことだったりしたら、ヘルパーさんにいえばいいんです。ヘルパーさんが、「◯◯さんのためには、サ責に報告しておいた方がいいな」って思えば、教えてくれますし、私のいち存で決めちゃいけないなってことだったら、ケアマネージャーさんに相談します。 誰にもいえない方もいるので、定期訪問もしてお話を聞いたり、引き出して確認することもあります。

そんなにいろんな方がいるなんて、全然知らなかったです。ヘルパーさんだけなのかと思ってました。ちなみに今日はどういったお仕事を?

今日は朝から排泄介助に行きました。

何時くらいからスタートするんですか?

朝は早いと8時台からで、排泄介助や更衣介助をやります。今日のおじいちゃんはデイサービスに行かれているので、デイの方に引き継ぐまでで一件です。

ああ! よく朝に、バンとかでお迎えに来ているのを見かけますが、それですか?

それです。引き継ぐまでが仕事です。

その後、違う現場に行かれるんですか?

はい。

ちなみに今日はいくつ現場に行かれましたか?

今日は落ち着いてまして、4件です。

多いときは何件くらいですか?

8件、9件行きますね。

わー、多いんですね。でも行く時間帯が違うじゃないですか? 例えばお昼には食事の面倒を見たりとか?

そうです。

食事は訪問先でつくるんですか? それともお弁当とか持っていくんですか?

まちまちなんです。ご家族がつくったり、お弁当を取られてる方もいたり。結構それは家によって違います。

ああ、食事は家の方が用意されてるんですね。

いえ、そこも特にルールはなくて、そのご家庭の希望とか、状況で変わります。 ヘルパーがつくることもあります。

なるほど。ちなみに場所はどの辺を回るのですか?

今は、東久留米市に住んでいて、そこにある事業所に所属しているので、その近辺とか、たまに隣の清瀬市とかにも行きます。

移動は車ですか?

いえ、チャリで。

チャリ!?

はい。

これからの季節、風邪などひかぬように気をつけてくださいね。

ありがとうございます(笑)。

小林さんは、何人くらいの方を受け持ってらっしゃるんですか?

サ責としては40人ほどでしょうか。

そんなに! ヘルパーさんのお仕事の数も入れたら?

以前は、墨田区の方で勤めていたんですけど、それを入れたら100人以上の方の介護は出来るようになってると思います。

すごい。介護のお仕事を始めてどれくらいですか?

今年で4年目です。

もともと介護士になろうと思っていたんですか?

はい。

結構それは昔から?

高校卒業したときに進路を考えるじゃないですか? そこで決めました。

どうして介護士さんになろうと思ったんですか?

中学の時に社会授業で、学校の隣にあった施設に行ったんです。2日間くらいおじいちゃんやおばあちゃんと話をしろ、みたいなのがあって。

話をしろ、ですか(笑)。普通の公立の中学校で?

はい。それで、おじいちゃん、おばあちゃんと一緒にいたんですけど、ずっと「どうして、こんなにおじいちゃん、おばあちゃんがいるのかなー」とか「ずっと寝てる人もいるー」とか「よくわからないなー」とか考えていたんです。それで、本当によくわからないまま、適当におばあちゃんと話してたんですけど…

適当に、ですか(笑)。

はい(笑)。その最終日に、施設のスタッフの方が「小林さん、とてもいい顔してたからあげる」って、おばあちゃんとの2ショット写真をくれたんです。そしたら、写っている自分が…自分からいうのもなんですけど…すごくいい顔だったんです。嬉しそうに笑っていたんです。おそらく、その写真がずっと頭に焼き付いていたんですね。「高校卒業したら何しよう?」って、考えているときに、パッとそれが出てきまして。介護の世界に行けば、いい顔して働けると思ったんです。

素敵ですね。こういういい方をしたら失礼なんですけど、世のためとか、おじいちゃん、おばあちゃんのため、っていうのより、先に自分が笑顔になれる仕事を選んだっていうのにグッときちゃいました。宮本さん、どうですか?

(カメラマン:宮本さん)とても素敵です。

宮本さん、好きになっちゃダメですよ。奥さまいるんだから。ちなみに今の会社に、同世代の方とかいらっしゃるんですか?

いないんです(笑)。皆、自分の親か、親より年上の先輩たちばかりで。でも、本当に良くして頂いています。

じゃ、お仕事は充実してると?

はい。おかげさまで!!

あら、いい笑顔! どうですか、宮本さん?

(カメラマン:宮本さん)はい、とても素敵です。

ご出身も東久留米なんですか?

いいえ、出身は千葉です。千葉の八千代市ってところなんですけど。

あ、八千代台は知ってます。結構、栄えてますよね?

はい、八千代台は街ですが、私は勝田台で、更に駅からバスで20分くらいのところに実家があります。

勝手なイメージだと、新興住宅地みたいな感じで、新しい家がたくさん建ってるような気がするんですが。

いえ、団地とかも古いのばかりでして、私が住んでいた所は米本っていう超田舎です。普通に田んぼとか畑とかもあって。

どんなお子さんだったんですか?

小学校のときが一番イキってました。お父さんに「ちょっと怜央来い」っていわれて、「なに〜?」っていったら、お父さんがふざけて、白髪染めをベチョって私につけたんです。そしたら髪が金髪みたいになっちゃって。そこからエンジンがかかりました。

お父さんきっかけでアクセル踏みましたか(笑)。ヤンキーになったんですか?

いえ、小学校4、5年生とかだったんで、ヤンキーとかではないんですが、ミニスカートとか、胸のあたりが空いている服で遊びに行ったりしていました。

エッチな子だったんですね。どうですか、宮本さん?

(カメラマン:宮本さん)ええ、まぁ。

ママ友にお母さんが「怜央ちゃん、すごいセクシーな格好で遊んでるけど大丈夫なの?」っていわれたみたいで(笑)。

お母さんは何もいわなかったんですか?

お母さんは「したい格好すればいいけど、心配よ。男の子もいるから気をつけて」って感じでした。

野郎共は、いい寄ってきたりしなかったんですか?

「好き」「私も好き、付き合おう」みたいのはありましたけど、小学生ですから。可愛いもので、すぐ終わります(笑)。

夜遅くまで遊んじゃったり?

いえ、うちは門限が厳しくて出来なかったです。

門限は何時だったんですか?

5時です。チャイムが鳴ったら帰る。

何も出来ないじゃないですか。お家に帰って何をしてたんですか?

お家に帰って、お風呂に入って、ご飯を食べて、テレビを観て、寝ます(笑)。

セクシーな格好をして?

いや、家ではダサいパジャマです(笑)。

どんなテレビを観てたんですか?

TVチャンピオンとかでしょうか(笑)。

いいですね! 何チャンピオンが好きでしたか? 大食い? 温泉通? さかなクン?

ペーパークラフトとか、ミニチュアをつくる人のやつとか覚えています。すげーみたいな感じでした(笑)。

それにしてもセクシーチャンピオンは、よく笑ってくださいますね。本当に笑顔が素敵ですよ。ね、宮本さん。

(カメラマン:宮本さん)はい。素敵です。

ありがとうございます(笑)。

セクシー以外に趣味はなかったんですか?

絵を描くのが好きでした。どんな絵を描いてたのかは忘れちゃいましたけど、多分、ほわ〜んと。

ほわ〜んとですか。わんちゃんのトレーナーもほわ〜んとしてますね。お似合いですよ。中学に入ってからもブイブイいわせてたんですか?

いえいえ(笑)。そんな格好もやめて、剣道をやってました。

米本の中学校はどんな感じでしたか? ヤンキーとかいるんですか?

多かったですね。でも皆仲が良くて、ヤンキーだからどうのこうのとかはなかったですね。

私たちの頃は、窓ガラスを「ガシャーン!」と割ったりしてましたが、そんなのは?

男の子はやってましたよ(笑)。

あらー、バットとかで?

はい、バットか石で。でも授業中は、机を削ったり掘ったりするみたいな感じです。◯◯参上とか。

時代は変わりませんね(笑)。女の子のヤンキーは?

好きな長さのスカートにして…さすがに長いスカートの子は時代的にいませんでしたけど、短くて、眉毛をめっちゃ整えて、髪も自由にして。あと行事は面倒臭いみたいな。

運動会、文化祭には来ない(笑)?

いえ、ちゃんと来るんです(笑)。来ても椅子に足かけて座ってたりとか、そのくらいです。

可愛いですね。で、小林さんは、なんで剣道をやろうと思ったんですか?

部活見学会を周ったときに決めました。父も剣道をやってましたので。何かあったら、お父さんに訊けるかもと思って始めました。

剣道をやってる方、結構多いですね。この前、出ていただいた井出さんもやってましたよ。「ハメ稽古」とか。剣道の成績は良かったんですか?

私は全然ダメで、地方の大会で2回勝てたらラッキーくらいの実力しかありませんでした。でも楽しかったです。

セクシー路線から剣道に変更しましたが、そろそろ思春期じゃないですか? 恋だの愛だのはありましたか?

ええ、まぁ(笑)。中2、いや中3かな? ひとりお付き合いました。剣道部の部長だった子です(笑)。

素敵ですね! どんなデートをしましたか?

お祭りに一緒に行ったり、映画を観に行ったり。

映画は千葉まで行くのかしら?

えっと、ニュータウンという所にイオンがあって、イオンにある映画館に行きました。

何を観ました?

すごく重い映画を観てしまいまして…。

教えて、教えて!

タイトルは忘れたのですが、9.11に貿易センタービルがやられて、そこに行く消防士の映画を観ました。

どうしてそれを観に行くことになったんですか?

父が消防士だったので、CMを見たときに観に行きたいなと思って。

結構、お父さんから影響を受けてますね。剣道とか消防士とか。その彼氏とは長く付き合ったんですか?

卒業して高校に入ったら、勉強と部活が忙しくなって、私が冷めまして、「ごめん」って。

彼は何ていってました?

「ダメかい?」みたいな(笑)。

「私じゃダメかい?」ですか(笑)。なんか江守徹さんの台詞みたいですね。高校は地元の高校ですか?

はい。

校名訊いてもいいですか?

はい。八千代松陰高校です。

お、吉田松陰の進学校ですよね! じゃあ中学のときは結構受験勉強したんですか?

単願で面接勝負だったので、特にしてないです。

どうして八千代松陰高校に行きたいと思ったんですか?

うふふ(笑)。お父さんがそこを出てて(笑)。

またですか(笑)。お父さん好き?

お父さん好きです(笑)。

どんなお父さんなんですか?

お父さんはカズに似てます。

超格好良いじゃないですか。カズダンスするの?

してよっていえばします。

いいお父さんですね。お父さんから、八千代松陰を薦められたんですか?

そういうのは全くなかったんですけど、父は八千代松陰の剣道部の先生にとてもお世話になっていて、私も赤ちゃんの頃から、その先生に可愛がってもらっていたんです。その記憶がずっとあるので、同じ先生のところで剣道を頑張りたいなって。それで松陰に決めました。

じゃ、高校3年間、剣道を?

はい。

高校の剣道部は厳しいのでは? 井出さんの「ハメ稽古」も高校時代でした。

「ハメ」は知りませんが(笑)、部活は厳しかったですね。

どんな1日なんですか?

朝練が7時頃からあって、授業を受けて、放課後にまた稽古です。だいたい19時、20時くらいまででしょうか。

夏休みとかも毎日稽古ですか?

はい。合宿もありましたし。

辞めたいなとか、遊びたいな、とかは? セクシー時代に戻りたい! とか。

なかったですね(笑)。

あらー。でも勉強もしなくちゃいけないでしょう?

確かに。今思うと、なんであそこまでガッツリやってたのかなぁ(笑)。もっと音楽を聴いたりとかすればよかったのにって思います(笑)。

何もやってなかったんですか? 絵は?

あ、その頃から、FAFIっていうアーティストが好きになりまして、ストリートアートとか好きで。それで、自分の部屋の壁に描いたりはしていました。

へ? 部屋の壁?

はい。さすがに外で描いたらまずいので。

カズからは何もいわれませんでしたか?

そこも結構おおらかでして。父も母も「あー! すごいじゃない」とかいって。

さすがキングカズですね。その絵見たいなァ。ねえ、宮本さん。

(カメラマン:宮本さん)はい。見たいです。

あ、スマホにあります! あります!

お! スゲエじゃないですか! 絵もすごいですけど、予想以上にガッツリいってますね(笑)。この絵は今もあるんですか?

弟がこの部屋を使いたいっていったので、だいぶ頑張って消しゴムで消したんですけど、力尽きて2体残ってます(笑)。

では、次の質問です。中学の9.11以降、好きな人とかは?

それが全然なくて。

芸能人だったり、アイドルだったり、そういう憧れの人は?

いました! 『ハイスクール・ミュージカル』っていうディズニーチャンネルのドラマがありまして、そこに出てたザック・エフロンっていう俳優さんが好きでした! 格好いいな〜って。ずっと、ザック、ザックいってました(笑)。弟と踊ったりしながら。

弟さんとはいくつ違いなんですか?

学年で6個違いです。

弟さんは可愛い?

はい、可愛いですね。

弟さんは誰に似てます?

体操の白井くんに似てます。

それは可愛い! あの子、寝グセがたまらないですよね! ちなみにお母さんは誰に似てます?

お母さんは、すごくミニオンに似ています。

ミニオンってなんですか?

小さい黄色いキャラクターで…

(カメラマン:宮本さん)あー、ディズニーかな、あれは。

さすが宮本さん! 小林さんのことはなんでも知ってますね!

いえ、ディズニーではないですね(笑)。

宮本さん、しっかりしてくださいよ。で、高校生活も終わりに近づき、介護士さんを目指すわけですが、ご両親はなんていってました? 周りはみんな大学でしょ?

結構突っ走って決めちゃうタイプなので、親も「本当にそれでいいの?」みたいな感じでした。「大学の方が、時間があるから迷えるし、いいんじゃない?」っていわれたんですけど、私が頑なに「訳も分からず大学に行くのもイヤだ」って熱く伝えたら「わかった」って。

専門学校もいっぱいあると思うんですけど、どちらの学校に行かれたんですか?

西葛西にある 東京福祉専門学校です。そこの介護福祉科に入りました。

そちらの専門学校を選んだ理由を教えてください。

オープンキャンパスを頻繁にやってまして、3、4回行ったんです。そしたら毎回感じが良くて、顔出していたら、だんだん覚えてくれて。温かいところだからいいなと思って決めました。

学校は何年間行くのですか?

2年の科もあるんですが、私は3年の科に行きました。

同級生は、ひとクラス何人でしたか?

私の代は、極端に少なかったみたいで19人でした。

やっぱり女の子が多いんですか?

いえ、女の子は私を入れて6人くらいなんです。

ああ、そうなんですね。さて、どんな授業をするんでしょう。医学部とかと同じで、人をお世話するお仕事じゃないですか? もちろん実技とかもありますよね?

はい。学校のベッドとか、用具を使って、生徒たちで利用者側になって実技をします。あと実習が多いので、施設に行って、実際に介護が必要な方にやってみたりします。

初めて実習に行ったときはどうでしたか? クラスの子ではなく、おじいちゃん、おばあちゃんへの本当のお世話ですよね? ちょっとショックを受けたりはしませんでしたか?

ショックはなかったです。本当にいろんな人がいるんだなって。思うように言葉が通じなかったり、耳が遠かったり、認知症でわからなかったり。思うように関われなくてうまくいかないなぁ、と感じました。

どれくらいの頻度で実習は行ってたんですか?

授業の節目、節目に、全ジャンル行きました。特別養護老人ホームっていう、おじいちゃん、おばあちゃんが生活している施設。そしてデイサービスっていう、日中だけちょっと行ったりする施設。あとは訪問介護ですね。大きく分けるとこの3つで、何箇所か行かせてもらうんです。でも訪問介護は、ご家族やご本人から許可を取るのが大変なので、あまり実習はありませんでした。その代りに施設では1ヶ月程実習します。

今日は、排泄介助のお仕事をされたといってましたが、授業ではどのように勉強するんですか?

学校によっては、うんちの代りになるものをつくったりする先生もいるんですが、うちの学校は、実習で勉強していました。あと、おしっこの重さを体感するということで、お水をたっぷり染み込ませたパットをオムツに仕込ませて、1日過ごしたりしました。

丸1日も! それで、どういう気持ちになるかってことですか?

そうです。「重いな」とか「人にいいにくいな」とか「腰のゴムが痒くなってきたな」とか、いろんなことを体感するんです。

小林さんは、どう思いましたか?

とにかく重たかったですし、常にお股が濡れてるので、気持ち悪かったですね。

初めての排泄物処理はいかがでしたか?

結構目の当たりにすると私は平気でした。むしろ「それをどう処理しよう?」というところに頭が行くので、汚いとか、臭いとか、よりも「私がやらなきゃ誰がやるの?」みたいになれたんです。

介護士さんの道を選ばれた時点で、そういうお仕事があることは、もちろんみなさんわかってらっしゃいますよね。でも匂いとかって入ってきちゃうじゃないですか?

あからさまにはいわないですけど、臭かったとか、汚かったとかは、ヘルパー内で話すことは、もちろんあります。でも、どう臭かったかとか、どう汚れていたかっていうのが大事で、もしかしたらパットが合っていなかったり、なにか原因があるのかもしれません。だから、包み隠さずに話した方がいいこともいっぱいあるんです。

介護士さんになるには、国家試験を受けるんですか?

はい。でも私の代までは、学校を卒業したら国家資格が頂けたんです。今は受験資格だけもらえて、試験を受けなくちゃいけません。

就職はどのように決まるんですか? 学校に求人票が来るとか?

そうですね。実習で色んな施設に行っているので、「うちで是非!」なんて感じでかなり募集は来ます。実際、人も足りないですから。ただ、今はニーズがある分、どんどん会社は立つんですけど、中身が伴ってなくて、潰れる会社も多いんです。卒業生を巣立たせて、その先潰れたら可哀想ということで、学校の先生が色んな情報を教えてくれます。

やはり介護士さんは足りないんですか?

足りないと思います。

失礼ですけど、介護士さんのお給料って安いと聞きますが。

ちょっと前のニュースでもいわれていましたけど、やはり安いとは思います。私は、この仕事しかしたことがないので、よく分かっていませんでしたが、親に「初めての給料どれくらいだった?」って訊かれて答えたら、「安いね」っていわれました。

そっかー。

今は、一人なので全然問題はないんですけど、自分が家族を養う立場になると厳しいだろうなって。そういう意味では、もうちょっと上がればなって思うんですけど。

離職率とかも高いんでしょうか?

相変わらず高いです。嫌なニュースがあると、またイメージも変わりますし。介護ってお世話するとか、汚いとか、どうしても先行しちゃいますし、いいイメージがないですから。

小林さんがお世話しているのは、おじいちゃん、おばあちゃんだけですか?

今はそうですね。事業所によりますが、障害児とか同世代の方の介護をすることもあります。墨田区で勤めていた時は、小さい子で小1、高齢の方で100歳でした。

小林さんは訪問介護ですから、それぞれのご自宅に行くわけじゃないですか?

はい。

失礼ですけど、いろんなご家庭があると思うんです。この環境はちょっと可哀想でしょ、みたいなところもあったりします?

はい。

そういうときって、ご家族の方にアドバイスしたりするんですか?

アドバイスっていうか、「こういう施設もありますから、お互いのために利用されたらどうですか?」とか情報を提供して、改善するっていうお家もあります。

ご家族の方が疲れているお家もいっぱいあります?

ありますね。

大変ですよね。

私も他人だから出来るところも大きくて。多分どんなに仕事でやっていても、いざ自分の家族がなったら出来ないかもしれないです。私がよくてもお母さんが嫌がるかもしれないですし。

訪問をいっぱいされて、重い病状の方もいらっしゃいますよね?

そうですね。病気で辛いだろうなって思うのはALSっていう病気があって。進行の具合にもよるんですけど、呼吸やまばたき、意思表示など、ひとつひとつ難しくなります。ご本人は、もどかしい思いが募っていく中で、折り合いをつけることがたくさんあると思います。そういう方を見ていると、自分が入りたての頃は、すごく動けていたのに、と考えてしまう。目に見えて大変な病気だと思います。あとは、テレビのドキュメントに出ちゃうような、ゴミ屋敷みたいなお家もあったり、攻撃されて傷ついている方もいますし。

もちろん、素敵なご家族もいっぱいいらっしゃいますよね。

はい。同居しているご家族で素晴らしい家庭や、家は離れてるけど、何とか力になろうという想いでやっていらっしゃる方もたくさんいます。この前も病院でカンファレンスがあったんですけど、お嫁さんが入院している義理のお父さんのお世話をしているんです。そのお嫁さんは、結婚したてで何もわからないときに、義理のお父さん、お母さんが、すごく良くしてくれたようで。義理のお父さん、お母さんであっても、私は出来る限りしたいと熱心でした。私達専門職の話にも人一倍耳を傾けてくれました。涙ぐみながら私達に話し、目の前のことに向き合っているお嫁さんと関わっていたら、私はプロなんですけど思わずもらい泣きしてしまいました(笑)。

家族がいるのといないのじゃ、本当に大きくて、いなかったら誰かが入らないといけない。でも、誰かが入るのは、抵抗があるっていう方も多いんです。だから、この仕事は、そこまでの信頼関係を築くまで、やっぱり簡単ではないですね。

一人暮らしの方もいらっしゃるんですか?

はい。独居っていわれる方たちですね。

そういった方は、ご自身から連絡をしてくるんですか?

そうですね。ご自身からいわれる方もいたり、近所の方から相談があったりとか。

やっぱり、ご家族と一緒の方と、ひとりの方って全然違います?

はい。でも独身でずっとやってきて、高齢になってもひとりっていう方は、結構気持ちが若いっていうか、自由にやってきた人なので、話していて面白い人もいます。「なんだこのクソオヤジ」って思う時もありますが(笑)。

やっぱりお喋りは大事ですか?

お話することは大事ですね。でも話せばいいってわけではなくて、話好きじゃない方もいるので、そういう方は態度で見せるとか。徐々にほぐれて話してくれるケースもあるんですけど。病気で話せない人もいますし。

そうですよね。色んな病気があったり、状況が違うわけですものね。その人、その人に合わせて、お世話にしないといけない。本当にすごいお仕事ですよね。

(カメラマン:宮本さん)今年、じいちゃんが死んじゃったんですけど、それまで介護施設に入ってて。結構大きい人だったんですけど、若い女性とかが軽く担いだりするじゃないですか。俺でも無理だと思うんですが。抱っことかも出来るんですか?

そうですね。移乗介助もやります。それこそリハビリの専門職は、すごく詳しいですよ。ポイントをおさえれば、自分より重い身体も「ひょい!」って上げられます。

私も含めて、これからどんどん歳を取っていくわけで。やっぱりお給料の面もそうだし、人が足りてないっていうのもそうだし、小林さん的に、今のお仕事はどうあって欲しいですか? お給料が上がったら人が増えるとか?

お給料が増えれば人が入るだろうなって、最初は思ってたんですけど、ちょっと違うかもって最近は思ってます。やっぱりそこに魅力がないといけないと思います。最初はよく分かっていないのに、国がお金を出さないからだって、頭でっかちに考えてたんですけど。実際に現場を見ると、お金を頂ける程の仕事をしていないヘルパーもいると思うんです。担い手を求めた分、いろんな方が職に就くようになった。いろんな方がいることは素晴らしいけど、質が伴わなければ意味がないと思います。

でも、あれなんですよね、再来年から、年収380万円くらいでしたっけ。それ以上の方は、介護サービス利用の自己負担が3割になるんですよね?

額を見ると驚きますが、国が何とかしようと考えた策であれば順応するしかないと思います。ただ、国がこうしたらというよりも、ヘルパーをしている私達…特に若い介護士ですね! そこから発信していく必要があると思います。

サポートによって出来ること、やりたいことを叶える自立支援が介護の仕事です。人の生活を支えることは簡単なことではないので、自分自身と仕事のバランスが取れないと、質も上がりませんし、ニュースになるような悲しい事件も起こります。若い子が入ればなぁって思うところはあります。お金が少ないんじゃないか? とか、若い子が少ないんじゃないか? とか、介護士ってそう思われてますけど、上手く考えてお金を稼ぎながら、しっかり介護をやってる方もいっぱいいますし、やりがいをもってすごく頑張ってる介護士さんもたくさんいます。一概に、汚い・安いとかのイメージだけではありません。

私がこの機会に、ぜひお話させて頂きたいって思ったのも、介護士でこんな人間もいるよって、知ってもらいたかったんです。SAKEROCK聴いてる人もいるんだとか、介護しながらバンドもできるんだとか。

あ、SAKEROCK好きなの? バンドもやってるんですね?

はい。今日は、写真も撮ってもらえるということだったので、仕事着(私服)のまま来たんですよ。こんな格好で出来る仕事もあるよって、発信できたらと。

わんちゃんトレーナーは、お仕事着だったんですね! じゃあ、小林さんにとって、このお仕事の魅力を教えてください。

色んな人に出会えるのは、やっぱり魅力のひとつです。その中でも生活に入っていくので、私生活をグッと目の当たりにして、思いっきり触れるので、そこは大きいかなって思います。介助中に「今日バンドの練習なんです」とかいうと「いいわね、楽しそうで。私もそんなときあったな」とか、「そんな楽しみ、今はないかも」っていう方が結構います。目の前にいる方が、いろんな経験をしてここまで生きてこられたから、どう死ぬかも大事ですが、最後まで気持ち良く生きられるように、その方の生き様をヘルパーとして支えられたらなあと思ってます。

生き様かー。

さっきの話に戻っちゃうんですけど、介護をやる人も、受ける人も、皆が気持ち良くならないとなって思います。気持ちよくいく為にはどうしたらいいかな? って、考えることは、とても大切だと思います。自分が仕事を始めたきっかけも、自分が気持ち良くいられそうだからなので、ぜひ興味があって、気持ち良く出来そうな方はやってみて欲しいです。

はい! ちなみにSAKEROCKはどっち派だったんですか? 星野源とハマケンと。

あ〜…どっちか。なんでどっちかに決めないといけないんですかー(笑)。

(カメラマン:宮本さん)僕もSAKEROCK、大好きです。

お! 来ましたね、宮本さん。でもSAKEROCKはもういないでしょ。今、好きなのはなんですか?

今は、Suchmosが好きです。

(カメラマン:宮本さん)あ! 僕も最近の一番の激推しです。

宮本さん、ホントっすか(笑)?

(カメラマン:宮本さん)あとはやっぱりフィッシュマンズ。

わー! 嬉しいー! 私もです!!

宮本さん、良かったですね。ちなみに今は好きな人とか、彼氏とかは?

最近彼が出来ました。

あら! それはおめでとうございます! 宮本さん、残念でしたね! どこで知り合ったのですか?

音楽を通して知り合いました。

Suchmosのライヴで出会った?

じゃなくて、最近バンドを組みまして、メンバーをいろいろ探してる中で出会った人です。

バンドメンバーなんですか?

いえ、結局メンバーにはならなかったのですが…

メンバー以上の関係になっちゃたんですね、グフフ! ちなみにバンド名は?

THROBっていいます。

もうオリジナル曲はあるんですか?

今、つくっています。ライヴもあるんですけど、とりあえずはカバーを演奏します。

誰のカバーをするんですか?

CharaとフィッシュマンズとSuchmosとおとぎ話です。

(カメラマン:宮本さん)小林さんのバンド、オリジナル曲が本当に楽しみですね。

嬉しいです! 興味を持って頂けるなんて。ありがとうございます!!

宮本さん、今日は本当に饒舌でしたね!

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