なぜ一部の女性はセックスで何も感じないのか

セックスで気持ちよくなれないという女性は、どうすれば気持ちよくなれるか? カギは、人間の身体は自動販売機ではなく、ビデオゲームのノンプレイヤーキャラクター、あるいはウイルスの侵入を防ぐソフトウェアシステムに近いと知っておくこと…?
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translated by Ai Nakayama
Tokyo, JP
なぜ一部の女性はセックスで何も感じないのか
Image by Daring Wanderer via Stocksy

筆者と同じようにインターネットでセックス関連のコンテンツをあさっているひとならば、セックスをしていても「何も感じない」と訴える女性たちの声に数え切れないほど触れたことがあるはずだ。不感症を訴える女性たちの大半は、パートナーとするセックスにまだ不慣れだったりするのだが、『そりゃないぜ!? フレイジャー』(アメリカで1993年から2004年にかけて放送されたシットコム)が放送されていた時分からその悩みを抱えているひとも、あるいはマスターベーションを試してみても何も感じないというひともいる。

セックス教育サイトの〈Scarleteen〉には「興奮状態でも、快感なんて全然感じない。マスターベーションも効果なし」と語る女性がいるし、Yahoo! Answersには「私たちは男性を悦ばすためだけにつくられたのでしょうか? (女性は25%が不感症だというけれど)男は99.99%気持ちよくなれるんだから」という質問が投稿されている。

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私たちは、セックスという概念を単純化しすぎている節がある。まるで人間の身体が自動販売機か何かのように、正しい硬貨を入れ、正しいボタンを押せば、取り出し口からオーガズムが出てくる、と考えられがちだ。しかし、もし自販機のなかでスニッカーズバーが詰まってしまったらどうすればいい? なぜ不感症を訴える女性がいるのだろうか?

「女性が何らかの性的快感を得るために必要となるカギは、自分が安全であると感じられているかどうかです」と語るのは、『Getting the Sex You Want』の著者、タミー・ネルソン博士だ。彼女は、女性の性的快感のメカニズムについて、自販機とは別の喩えを用いて説明する。「女性は、ウイルスの侵入を防ぐソフトウェアシステムに近いです。システムが脅かされていると感じればシャットダウンしてしまいす」。性的反応は、男性器の勃起を促す環状グアノシン一リン酸(cGMP)を含む数々の神経伝達物質に制御されている。cGMPはクリトリスでも機能し、クリトリスが充血して包皮から出て勃起状態になる。もし身体が性的な快感を得られていないとしたら、それは脳や内分泌器から正確な指示を得ていないということだ。

女性の身体=コンピューターという喩えを援用し、ネルソン博士ともうひとりのセックス専門家、エミリー・モース博士に、女性の不感症の〈トラブルシューティング〉の方法について聞いた。「女性にとって、マスターベーションは原初の性的欲求やファンタジーと再び触れ合うための最適な方法です」とモース博士はいう。「パートナーからのプレッシャーを一度忘れて、自らの炎を再びかきたて、快感とはどのようなものだったかを思い出すのがいいでしょう。前にやっていた運動のルーティンを再開するときのように」

自分にとって気持ちよくて、時間もかからない行為を探そう。クリトリスは人間の身体の中で、快感を与えるためだけにある唯一の器官なので、クリトリスを使うのがいいだろう。ただ、クリトリスが敏感な場合、直接的な刺激が痛みとなる場合もあるので注意だ。またネルソン博士は、マスターベーションにおいて、クリトリス以外の部位をおろそかにしがちな女性が多いと指摘する。「最終的に性器の攻略が目標ですが、そのためには周りから攻めないと」とネルソン博士。「一気に火をおこすのではなく、ゆっくりと燃やしていくんです」。1994年の研究では、性行為のあいだ、深呼吸してより多く動くことで、性的経験を高めることができる可能性があると示唆されている。

オーガズムは指からではなく心から始まる

もちろん、大事なのは身体だけではない。ネルソン博士は、脳も意識すべきだと語る。「オーガズムは指からではなく心から始まります」。クリトリスはビデオゲームのノンプレイヤーキャラクター(NPC)のようなものだ。ゲームの筋書きに必要なときだけ、何かをするよう定められている。もちろん、一日中NPCに絡むこともできるが、冒険が始まらなければ彼らは反応しない。

結局、セックスはコンテキストなのだ。身体的な快感も、自分自身が〈気持ちいい〉と感じない限りは経験できない。1994年のポルノ作品研究では、身体の性的反応は必ずしも〈気持ちよさ〉と結びつかないことが明らかになっている。本研究の参加者は、血流を測れる脈波測定装置を膣に装着した状態で、男性が制作したポルノと女性が制作したポルノ、それぞれを視聴した。女性においては、どちらのポルノに対しても身体的興奮がみられたが、実験後の感想では、女性がつくった作品のほうがより興奮した、と申告している参加者のほうが多かった。この研究によると、女性の場合、男性制作のポルノにも性的興奮を得たものの、「男性制作のポルノ作品のほうが、恥ずかしさ、罪悪感、嫌悪感といった感情をより喚起した」そうだ。

「不安は、女性の性欲を殺してしまうひとつの大きな要因です」とモース博士は指摘する。「ストレスを感じていたり、不安だったり、集中力が続かなかったりすると、セックスのことなんて考えていられません」。ネルソン博士も、ストレスフリーなマスターベーション環境を整えることが大事だと強調する。「急いでいないか、誰かが部屋に入ってくることに不安を抱いていないか、恥ずかしさを抱いていないか、ということを意識しましょう」

以前にオーガズムに達するのが困難だった経験のある女性は、自分のパフォーマンスに不安を覚えたり、自分自身に不安から生じるプレッシャーをかけたりして、それによりオーガズムに達するのがより難しくなってしまう。そもそも、すべての女性が絶頂を経験するわけではないので心配は無用だ。絶頂を経験しなくても、セックスはいろんなかたちで楽しめる。

「誰もがあの一線を超えたいと望んでいますよね」とモース博士。「だけど、多くの女性はイくために自分自身に大きなプレッシャーをかけてしまう。そうなると、セックスそのものが楽しめなくなってしまいます」

This article originally appeared on VICE US.