厄ネタ不良映画『逆徒』、劇場急襲! 小林勇貴監督、犯行直前インタビュー

この秋、商業デビュー作『全員死刑』の公開が控えている小林勇貴監督。だが、もう1作、忘れてはならない映画が存在する。『Super Tandem』『NIGHT SAFARI』『孤高の遠吠』──。良識を蹴破る問題作を世に放ち続けた小林勇貴と不良たちの新たな犯行。インディペンデント最新作『逆徒』、8・26劇場急襲!
31.7.17

いいから、さっさと公開しろ! 強制参加型反抗映画『孤高の遠吠』を待ちながら vol.1 小林勇貴監督インタビュー 映画と不良。強制参加型反抗映画『孤高の遠吠』を待ちながら vol.2 ユキヤ(赤池由稀也)インタビュー

牧野慶樹(ヨシキ役)

便所のシーンは、川崎の中1男子リンチ殺人事件* に触発されて撮ったんです。加害者の少年たちは殺した子の衣服を証拠隠滅のため公衆便所で燃やしました。それでチャラ、なかったことにしようとした。これは怖いですよ。ずっと前から俺はリンチが大嫌いなんです。悪者をつくって安心しようとする図式は不良の世界だけじゃなくて職場や学校、ネットでもあるじゃないですか。リンチに対する嫌悪感が映画を撮る動機のひとつです。2014年の『NIGHT SAFARI』** は先輩に命じられたリンチを拒否するというオチがつきますけど。

その前後に撮った『Super Tandem』* と『孤高の遠吠』にもリンチのシーンがあります。

『孤高の遠吠』が完成して、まだ上映が決まってなかったころに1日だけFC2動画で公開しました。それが川崎の事件が報道された日なんです。ニュースを見てムカついて、すぐに公開しました。事件がダブって平気で観れない、とTwitterに感想を書いてる人がいて、意図は伝わったと思いました。伝わってよかったとは言い難いですけど……。『ライチ☆光クラブ』を撮った内藤瑛亮監督は神戸連続児童殺傷事件が忘れられなくて、自分の映画に酒鬼薔薇聖斗を反映させていると何かで読みました。今回、俺にとって川崎の事件がそうなりました。『逆徒』はチャラの話です。どんな酷いことをしてもなかったことにして責任逃れ。その象徴として炎を燃やしました。

2014年にカナザワ映画祭で『NIGHT SAFARI』を上映してもらったとき、雑談のなかで主催の人が言ったんです。「少年のリンチ事件の報道を見ていると、よく事件後にバーベキューをやってるけど、あれってなんだろう。暴力をチャラにしたかったのかな」と。それがずっと頭に引っかかっていて。

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『NIGHT SAFARI』や『孤高の遠吠』でも出演していた富士宮と富士の本物の不良のオールスター的なキャスティングです。

もっと前に気づいてました。『NIGHT SAFARI』が大きかったですね。あのときは出てくれた不良の子たちとほぼ初対面ですから、俺は監督とはいえ彼らにとって部外者なんです。シーンとシーンのあいだで俺が段取りしてるとき、撮影再開を待ちながらみんなが一服入れてると、不良同士の雑談が怖い方向に行って、いきなり喧嘩になったりする。「お前さぁ!」ってなったとき、その当事者たちだけじゃなく、第三者の顔も怖いんですよ。先輩と後輩、喧嘩の強い奴と弱い奴なんかが入り混じったなかで状況判断している。そのとき、秤にかけるような眼をするんです。その眼が怖い。まだあります。『孤高の遠吠』で由稀也君が仕切ってるクラブイベントを撮影したとき、新しい不良の子にどっと会えたんです。当時は『NIGHT SAFARI』がカナザワ映画祭で受賞したことが富士宮市内でも話題になっていたし、弟の(小林)元樹が不良のあいだで知られていたので、俺はクラブの不良の子たちから秤にかけられる要素がありすぎでした。「賞もらって調子こいてんじゃねえか?」「映画にしちゃあカメラちっちェえな」「なんか胡散臭ぇけど、元樹の兄貴だって言ってるし……」とか。実際に怖い思いをすると、やっぱり逃れたいと思ってしまう。そんな体験が『逆徒』の〈責任逃れ〉の要素に生かされました。

初期の『TOGA』* と『絶対安全カッターナイフ』** は一眼レフのEOS Kissで、『Super Tandem』と『NIGHT SAFARI』がコンデジのPower Shot G14、『孤高の遠吠』がPower Shot G16、『逆徒』はビデオカメラのiVISで撮りました。高感度撮影がきれいで、ナイトシーンは格段によかったです。これまでは暗くて困ることがあって、『孤高の遠吠』では車を集めてヘッドライトを照明にして撮ってましたから。iVISはビックカメラで店員の営業トーク、「夜のカメラです」が決め手になって即買いしました。グリップを付けるとカーチェイスも撮りやすかったです。

便所で服燃やすのも、秤にかけるような表情も、テーマに触れるシーンですから撮りたかったです。あとは、好きな映画には真似してみたいシーンがよくあって、それが映画をつくる原動力にもなっています。今回はそのひとつが、ニコラス・ウィンディング・レフン監督の『オンリー・ゴッド』のヒットマンが原付で殺しに行くシーンです。以前、ゴールデン街で高橋ヨシキさんたちと飲んだときに俺が、「タイ人のヒットマンが2ケツして殺しに行くところが怖いですよね。マシンガン担いで、ボロい原付にグデ〜っと乗ってる姿が気持ち悪くて──」と身振りを交えて話したら、お店の人たちまで一緒になって「そうそうそう!」って盛り上がりました。意気揚々と家に帰り、そのシーンをFacebookにアップして、またみんなで盛り上がりたくて動画を検索したんです。そしたら──。

たぶんD-TRACKERというカワサキの125CCです。あのバイク欲しいな、と観ているときに思ったから覚えてます。

梅本佳暉(ウメ役)

由稀也君は『NIGHT SAFARI』では先輩に翻弄される不良を演じましたが、今回の役はずいぶん駆け引きに長けています。『仁義なき戦い』に喩えると、広能が山守に変身したような。『NIGHT SAFARI』の不良少年たちが世代交代して『逆徒』の彼らになったという見方は可能でしょうか。

そうですね。『NIGHT SAFARI』と『逆徒』は兄弟みたいな関係で、リンクしてるところが多いです。

赤池由稀也(ユキヤ役)と岩間登(ノボル役)

厄ネタの暴走

抑えが効かないガキども

遠藤克樹(カツキ役)

福田君はイカつい顔をしてるけど人柄がよくて、現実の不良界隈で人気の高い人なんです。他の不良の子からもずっと推薦されていて出てほしかったんですけど、福田君自身はデリケートな人で、「カメラの前で喋りたくない」って言うんです。俺は無言のキャラが好きで、『Super Tandem』でもやってる* ので、福田君に出てもらうために役を考えました。今回は喋らない代わりにテレパシーを使えないかと考え、ダイヤルアップの接続音で会話するのを思いつきました。俺んちは小学生のころダイヤル回線でパソコンはwindows 95でした。接続音は、ピ〜〜、ピ〜〜〜ウゴ〜〜ピ〜ゴ〜、ピ〜〜〜〜で始まるんですけど、途中のピ〜〜〜〜〜ヴ〜〜〜ゴ〜〜〜ウビ〜ウビ〜ウビ〜がサビだと思ってて、映画ではそこを使いました。後半のパートのザ〜〜〜はダメなんです。そういう苦労はありました。

俺の映画のはじめに〈シネマトクラブ〉とクレジットが出るじゃないですか。笠井(渉)君という小学校からの親友がいて、ふたりでやってる自主映画のユニットなんです。高校は別でしたが、いつも笠井君の家でお菓子食いながら好きな映画を観てギャーギャー騒いでました。それから映画をつくろうってことになって、2013年に『toga』と『絶対安全カッターナイフ』を撮ったんです。もう1作目から、それぞれ好きな映画の影響が出ましたよ。それを他の友達に「ココはアノ映画のアレなんだよ!」って話すのが楽しかった。いまでもインタビューやふだん話してるときに真似したシーンを言っちゃうのは、映画の話で盛り上がりたいから。笠井君と大騒ぎしてたときみたいな幸せをお裾分けしたいから(笑)。笠井君はいま、トヨタでエンジニアをやっていて映画の世界に関わってませんが、脚本で悩んだりしたときは相談してます。

あのシーンは入れたかったです。『NIGHT SAFARI』では<サウナに入ると死亡フラグ>* をやったので、今回は念願の〈散髪したら死亡フラグ〉をやりました。

小林勇貴(こばやし・ゆうき):1990年9月30日生まれ、静岡県富士宮市出身。監督作に『TOGA』(13)、『絶対安全カッターナイフ』(13)、『Super Tandem』(14)、『NIGHT SAFARI』(14)、『脱法ドライブ』(14)、『孤高の遠吠』(15)がある。『Super Tandem』で第36回PFF入選。『NIGHT SAFARI』でカナザワ映画祭賞受賞、TAMA NEW WAVEある視点入選、『孤高の遠吠』でゆうばり国際ファンタスティック映画祭2016オフシアター・コンペティション部門グランプリ。今秋、商業デビュー作『全員死刑』の公開が控えている。

**特襲上映開催! 小林勇貴監督作品一挙上映
**ポレポレ東中野
8月26日(土)『逆徒』/『NIGHT SAFARI』 ※初日舞台挨拶:小林勇貴
8月27日(日)『孤高の遠吠』 ※トーク:鈴木智彦×小林勇貴
8月28日(月)『逆徒』 ※ゲリラワークショップ:小林勇貴×小峰克彦
8月29日(火)『孤高の遠吠』 ※トーク:平山夢明×小林勇貴
8月30日(水)『逆徒』/『Super Tandem』 ※トーク:西村喜廣×大石淳也×小林勇貴
8月31日(木)『孤高の遠吠』 ※トーク:田野辺尚人×小林勇貴
9月1日(金)『NIGHT SAFARI』/『逆徒』 ※最終日舞台挨拶:小林勇貴