カナダ上空で目撃情報が絶えないUFO情報 その真実を探れ

カナダ政府の航空事故データベースに掲載された、エア・カナダ、ウェストジェット、ポーターをはじめとする航空会社からの数十にも及ぶUFO目撃レポートをVICE World Newsが発見。
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translated by Ai Nakayama
Tokyo, JP
7.5.21
A Porter Airlines plane takes off from Toronto's island airport on Friday, November 13, 2015.
2015年11月13日、トロントのビリー・ビショップ・トロント・シティー空港から飛び立ったポーター航空の航空機。翌年、オンタリオ湖上空を飛行中の同社の航空機が未確認物体との追突を避けるため急降下し、2人の乗務員が負傷した。PHOTO BY CHRIS YOUNG/THE CANADIAN PRESS

2016年5月30日の朝、モントリオール発トロント行きのエア・カナダ・エクスプレス機が「およそ300ノット(時速約550キロ)で飛行する円形の未確認飛行物体と遭遇」したと報告。同年11月14日には、オンタリオ湖の上空約2400メートルを飛行中のポーター航空の旅客機が、とある「直立のドーナツ、もしくはタイヤのような形状の、堅固そうな物体」との追突を避けるため急降下し、2人の乗務員が負傷した。

VICE World Newsは、カナダ政府の航空事故データベースに記録されている数千ものレポートを精査し、近年カナダ及び世界の航空会社から報告された数十ものUFO目撃情報を発見した。

例えば2017年3月16日の夜、ブリティッシュコロンビア州のオカナガンバレーで、ウェストジェット航空の航空機2機が上空に「まぶしいストロボのような光」を目撃。また、2015年1月10日の夜明け前には、サスカチュワン州レジャイナ郊外で「ハロに包まれ、中央に小さな白い光が光る巨大な物体」が、上空1万2000メートル「以上の高さから下降するように見えた」、と複数の航空機からの報告があった。

これらの目撃情報が記録されていたのは、道路、鉄道、海上、及び航空輸送を司るカナダ運輸省が運用している検索可能のデジタルアーカイブ〈民間航空日常事件報告システム(Civil Aviation Daily Occurrence Report System:CADORS)〉。CADORSは、この30年で起きた、およそ30万もの航空事件のレポートを集積。この〈事件〉の中には、機器の不具合、乗客の暴力、バードストライク、そしてカナダの領空内でプロのパイロットたちによって目撃されたUFO情報が含まれている。

「おそらくパイロットは、目撃した物の90%は報告していないと思います。なぜなら報告には厄介な手続きが必要だからです」とVICE World Newsに語ったのは、カナダ空軍(RCAF)の元パイロット、ジョン・〈ジョック〉・ウィリアムズ(John “Jock” Williams)だ。

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現在は航空コンサルタント、テレビ番組のコメンテーター、民間パイロットとして活動するウィリアムズは、36年カナダ軍に所属し、そのうち20年以上を戦闘機パイロットとして過ごした。また、カナダ運輸省で航空安全担当官として12年以上働いた。

「多くのパイロットにとって、そこまでする価値はありません」とウィリアムズ。「だから私は、これらの報告は本物だと信じているんです」

CADORSが記録している目撃レポートは、簡潔ながら謎めいている。例えば、2005年10月21日の朝の報告はこんな短文だ。「4機の乗務員が、トロント上空およそ9000メートルの場所で光る銀の物体を発見。その物体は急旋回して南西へと高速で移動し、オンタリオ湖上空へと向かった」。2015年11月12日夜、サスカチュワン州上空1万メートルを飛んでいた未公開の航空機の目撃レポートでは「白くまばゆい光を機体より高い位置に確認。それは隕石や他の機体ではなかったと主張」と記されているが、細かい情報が記されているレポートは多くない。はっきりと〈UFO〉という言葉を使っているレポートもはほぼないが、2016年12月18日の日中、アルバータ州のグランドプレーリーの南方を飛行中のカタール航空の航空機が、「未確認飛行物体」を目撃したと報告している。ただ、どのような見た目だったかは記載されていない。

カナダ運輸省の広報担当者は、VICE World News宛ての声明で、運輸省は「各操縦士の目撃情報について発言をする立場にない」と話す。

「CADORSに記録された情報は、カナダ運輸省に報告された情報だということです。カナダ運輸省は、CADORS内に集積されたデータの正確性、信頼性の確保に勤めています。ただし、それらの情報は予備的なもの、実証されていないもの、変更が入る可能性があるものとして扱われるべきものです」

実際に大きな変更が入ったこともある。2016年のオンタリオ湖上空でのポーター航空による目撃レポートだ。当初CADORSに記載されたのは、11月14日の朝、オタワ発、トロントのビリー・ビショップ・トロント・シティー空港へ向かうフライトが「未確認物体1機(風船の可能性は低い)が近くを飛行」という1文だったが、2名の乗務員が負傷したため複数のメディアで取り上げられ、カナダ運輸安全委員会(Transportation Safety Board:TSB)の調査員が精査をすることになった。

2016年11月29日にCADORSにアップロードされたTSBの調査報告書では、「直径およそ1.5〜2.5メートルの」ドーナツ形の物体が「ちょうど機体の航路上に」あったと記されている。当初はただ「近くを飛行」したと書かれていたが、TSBは「急いで同物体の下に回避するため、機長が自動操縦を解除した」ことを明らかにした。同機に搭乗していた2名の乗務員は、「着陸準備のために客室の安全確認をしており(中略)、キャビン内で転倒し軽傷を負った」。乗客54名にはケガはなかった。

当時のTSBの広報担当者はこう語っていた。「同物体の詳細やサイズは、把握されている商用、あるいは消費者向けの無人航空機とは一致しない」。現在の広報担当者も、VICE World NewsへのEメールで「TSBは物体の明確な特定はできていない」と認めた。エア・カナダやウェストジェットなど他の航空会社同様、ポーター航空も具体的な目撃レポートについてのコメントは控えている。

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我々が発見したCADORSの目撃情報のいくつかはベテランのパイロットが説明づけている。2019年12月26日の夜、エア・カナダおよびエア・カナダ ジャズそれぞれの航空機がブリティッシュコロンビア州上空で「自分の機体より高い高度で、最大24機にも及ぶ発光物体が1列に整列し、高速で移動していた」姿を目撃・報告。一見異常事態に思えるが(家路に着くサンタか?)、それはすぐに、比較的低軌道で一団となり周回するSpaceXのStarlink衛星だったと確認された。

しかし、なかなか説明がつかないものもある。例えば、2018年4月30日未明、ニューヨークからアラスカに向かうカリッタ・チャーターズのボーイング747貨物機が、ノースウエスト準州上空で遭遇した「上空およそ18000〜24000メートルを、マッハ4(音速の4倍)で散発的に飛行する物体」。世界最速の航空機として知られているのは〈ブラックバード〉と呼ばれるロッキード社のSR-71。最高速度はマッハ3.3だが、1999年に米国が使用停止した。ボーイング747の搭乗員が物体の飛行速度を測れたのか、という疑問もあるが、いずれにせよ、彼らが普通では考えられないものを目撃したのは確かだ。CADORSの目撃レポートは、通常、目撃した日から数日以内にアップロードされるが、本件は1年半後に掲載されている。

またCADORSには、空中に静止したり、高速で移動したり、点滅したり、形や色を変える光の目撃情報が寄せられている。例えば、2009年12月15日の朝、アルバータ州フォートマクマレーの航空交通管制官が目撃した「強くまぶしい光」は、「最初は南の方向に進んでいたが、東へと進み、朝日の中へ消えていった」。そのせいで、エア・カナダ ジャズの航空機が「離陸航路から当物体が遠く外れるのを待つために、出発が4分程度遅れた」。

宇宙人を探す巨大中華鍋

また2019年1月6日未明、医療航空輸送会社ヴァンガード・エア・ケアの乗務員が、マニトバ州北部の上空で「不可解なまぶしい光が、機体と同高度、同速度で後を追ってきた」と証言。当時は「周囲に航空機がいるとは報告されていなかった」という。VICE World Newsが以前の記事で公開した機密扱いされていない情報報告書は、民間のパイロットが確認できない飛行物体や光を目撃したさいは、カナダ軍に警報が送信されることを証明している。本記事で言及された11件の目撃レポートのうち、少なくとも7件において、航空管制官から軍へ伝達がされた。

カナダ空軍の広報担当者はVICE World Newsへの声明で、そのような報告を受けていることを認めた一方、「調査責任当局」はカナダ運輸省だとした。運輸省の広報担当者は、「未確認物体の目撃レポートが、その後フォローアップされることはまれです。言葉そのものが指し示すように〈未確認〉なので」と証言する。

これらの目撃レポートから、異星人がカナダ上空を飛び回っていると結論づけることはできない。現代におけるUFO目撃情報の多くは、ドローンやペーパーランタンだったことが明らかになっている。UFO話そのものが、外国の進歩した監視技術を隠すためのものだとする主張もある。米国でも、連邦航空局(Federal Aviation Administration:FAA)が同じような目撃情報を追跡調査しているが、大体、ドローンだったことが判明している。

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米国では、2021年2月21日の午後、ニューメキシコ州上空でアメリカン航空の乗務員が、航空管制官に「長い円柱状の物体が(中略)当機の真上で高速で動いている」と無線で報告した。FAAは声明で、「当該エリア内にはレーダーで捉えられるものは見当たらなかった」と述べている。

研究者/映像作家のマシュー・ヘイズ(Matthew Hayes)は、CADORS内の目撃レポートと、2019年に博士課程で冷戦時代のカナダのUFOの記録について論文を書くさいに彼が発見した目撃レポートのあいだに「非常に高い一貫性」がある、と述べる。

「カナダ人たちは、1940年代から変わらず、同じような物体の目撃情報を報告してきました」とヘイズ。「この話題についてカナダ政府に発言をさせるのは、昔から実に難しいんです。米国では高官たちがもっと前のめりに語ってくれるんですがね」

去年4月、米国海軍の戦闘機がとらえた3本のUFO映像について、国防総省が本物であると認めた。これらの映像はNew York Timesにリークされたものだ(ちなみに同紙は2017年、国防総省のUFO追跡プログラムについてのスクープ記事も発表している)。それ以来、上院情報委員会の現代表たちや、バージニア州選出の民主党上院議員マーク・ウォーナー(Mark Warner)、フロリダ州選出の共和党上院議員マルコ・ルビオ(Marco Rubio)など、名のある米国政治家たちが未確認航空現象(UAP)について率直な意見を述べてきた。2020年12月には、米国議会で今年中頃までに「高度な航空危機」についての報告書を提出するよう諜報・国防関係者に求める法案を通した。

ベテランのUFO研究者、クリス・ルトカウスキ(Chris Rutkowski)はこの30年、2万2000件にもわたるUFOレポートを収集してきた。彼の年刊カナダUFO調査には、以前よりCADORSのデータも含まれている。

「CADORSは、こういったタイプの出来事が、何万人もの乗客が移動する空域で日々起きていることを明示しています」とルトカウスキはVICE World Newsの取材に語った。「個人的にUFOを信じていようがいまいが、フライトの安全、公共の福祉という視点で見たとき、懸念点であることは確かです」

元RCAFパイロットのウィリアムズもその意見に同意する。

「こういった出来事を報告するのにパイロットは手間をかけている。なので、調査すべきだと思います」とウィリアムズ。「カナダではなかなか調査されませんが」

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