パチモン・デザイナートイの悪党SUCKLORD 東京襲来

1997年からニューヨークのチャイナタウン、つまり偽物の聖地を濶歩してきたSUCKLORD は、スターウォーズやありとあらゆるポップカルチャーを改悪するアートシーンの嫌われ者だ。

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mar 25 2016, 8:31am

パクリの美学。清水アキラ、クラシック奏者、落語家、カバー歌手、ヒップホップ、DJ、フードチェーン店、佐野さん、ファッションスナップ、、、。オマージュ、サンプリング、元ネタ使い、モノマネ、伝統継承、大量生産、デザイナー、2次メディア。果たしてパクリは善なのか、悪なのか。面白いのか、つまらないのか。

トイメーカーの商売は一筋縄ではいかない。パチモンを生業とする者ならなおさらだ。1997年からニューヨークのチャイナタウン、つまり偽物の聖地を濶歩してきたSUCKLORD は、スターウォーズやありとあらゆるポップカルチャーを改悪するアートシーンの嫌われ者だ。彼の日本初個展を機に、会場となる原宿のGALLERY TARGETにおいて、自称「銀河系トップクラスの悪党」にデザイナートイの現状を問う。

あなたの伝説を知らない日本の人に SUCKLORD の誕生について教えて下さい。

スターウォーズ全盛期に生まれ、子供のころ、欲しがったフィギュアをなんでも親に買ってもらったが、そのうち収集するだけじゃ物足りなく感じてきたんだ。やっぱフィギュアで何かを創造しなきゃってね。
1997年にSTAR WARS BREAKBEATS*https://soundcloud.com/suckadelic
) を世に出して「スターウォーズをリミックスするヤツ」としてちょっぴり名が売れたが、そのうちフィギュアも同じようにリミックスするようになっちまった。
90年代にデザイナートイのブームが到来したとき、トイ作りにハマって少年時代を無駄にした俺は、このブームに便乗できると思ったが、誰も相手にしてくれなかった。あのKidrobotみたいなヤツでさえ大ブレークしたってのに。このとき自分でやるしかないと思い知らされたね。仲間外れにされた反動で悪党を装ってトイ・シーンの権威に立ち向かい、“FUCK YOU”をたっぷり込めたトイ作りに取り掛かった。それから10年。どいつもこいつもパチモンメーカーになりやがった。悪性のパチモンフィーバーだ。ってわけで日本に逃避してきた。

* スターウォーズの音源とセリフをヒップホップ風にごちゃ混ぜした無許可のリミックスアルバム。

パチモンを商品化するにあたって、チープさとクオリティ のバランスは難しいですか?

素材である金型が不完全だから、当然俺の創るものは不完全だ。色が違ったり気泡が発生したり、まあ問題アリアリ。手作りはそういうもんさ。やり始めたころなんて、例えば10個のフィギュアを作っても、売れるレベルのモノはひとつもなかった。「まあいいや、どうせろくなもんは出来っこない」と開き直って、自分の製品を「パチモン」と片付けた。SUCKADELIC* という俺のブランドのイメージはそこから生まれてきたんだ。出来損ない美学の商品化だ!
最近は出来のいいレジンフィギュアが結構ある。いや、むしろ完全無欠の出来すぎフィギュアだ。出来が良すぎて、パチモンの領域をはみ出ちまってる。不完全な部分に「闇」が潜み、ファンはその闇を求めてるんだ。

* SUCKは英語で「最悪」や「粗悪」の意味で、DELICは皆さんお馴染みのサイケデリックの略。

個展を開くきっかけについて教えて下さい。

タイミング的にバッチリだった、ってところかな。ずっと前から日本が大好きだった。子供の頃ゴジラやMicroman*https://www.youtube.com/watch?v=TBN43nN9hGA)やShogun Warriors** とかで遊んでたけど、当時は日本のものだとは知らなかった。そうそう、ぶっかけAVもけっこう思い入れがあるんだ。そんで俺の個展のタニマチになってくれるクレイジーなヤツが現れるのを待ってたってわけ。元がとれればいいけどね。

* 株式会社タカラが1974年に発売した「ミクロマン」シリーズのサイボーグ型のフィギュア。Micromanはアメリカ版の名前。半透明のボディとなよなよした造形に感化され、SUCKLORDは「Microsexuals」というコマ取りアニメに登場させた。ジャンルはドタバタホモホームドラマ。

** アメリカ版のジャンボマシンダー。スーパーロボットに詳しくない読者はグーグル先生が待ってます。

どうりで壁が埋め尽くされてるわけですね!

パッケージがすべてだ。フィギュア・イラスト・テキストの3点セットがドツボ。そういうフォーマットは昔のスターウォーズのフィギュアから拝借した。こんな「盛り方」だとアートっぽく見えるだろう?バカ高い勘違いアートに比べりゃ安いほうだよ、オレなんてむしろ赤字さ*。売れ残ったアートに何の価値があると言うんだ?

* あまり真に受けないように。

ファンを “suckers” (カモ)と呼んでいますが、どんな人が購入しますか?

収集する趣味なんて、やっぱ一種のビョーキだと思う。わりと無害のほうだけどね。コレクトすればするほど、どんどん「ヤバい」ブツが欲しくなっていく。まるでドラッグみたいだ。フツーのモノに飽きた連中は、刺激を求めてオレに群がってくる。版権的な意味で、かなりのスリルを味わうだろう?
「モノを創らない人」は「モノを買う人」になり、購入品とディスプレイ方法は自己表現だろう。とはいえ、結局いらないもんばっかだろう。買うお前が、アホ。ただ創る俺も同じぐらいアホだ。MAD マガジン* 育ちだから、セルフつっこみと自虐は大目に見てくれ。

* 1952年より発行された悪名高いパロディー雑誌。ポップカルチャーと政治家を容赦なくコケにするが、一番笑いものにされるのは購読者。

悪役を演じるのは難しそうですね。

確かにビミョーなラインだ。むやみに人を怒らせるわけじゃない。うまく怒らせれば、自問、そして悟りにつながることだってある。ポジティブな方向へ導く“FUCK YOU”だ。アメリカって国はもともと反乱者が築いただろう?そのアメリカの反逆者精神はみんなの憧れだと思う。あくまでもイメージだけどな。

2005 年からアンダーグラウンドのトイ・シーンを生き抜いて来られましたが、その変化とは?

ニューヨークは終わった。家賃がありえないくらい高くなったし、ブッ飛んだ文化が追っ払われた。CBGB、ビンテージショップ、レコード屋・・・もう全滅状態だ。街そのものがヘンなモノを求めなくなった。ただ俺は生まれ育ったニューヨークのイメージを死守したい、1ヶ月2500ドルもするスタジオにしがみついてまでもな。
パチモンまがいのモノが溢れかえってるせいでトイ市場は飽和状態だ。昨今じゃ、低俗なギャグばかり流行ってるが、俺はもうちょいハイレベルなモノを狙うのに苦労してる。
しかも消費者もすごく悲観的になってきた。投資のつもりで高く買ったトイをそれ以上高価な値で転売できなくなったからだ。
ただ、日本は違う、トイ・シーンがイイ感じに盛り上がってる。だから来たかったんだ!拠点を日本に移して生活できれば幸せだ。アメリカはまっぴらだ。

トイ・シーンにおいて、日本とアメリカの接点が多いですね。

俺も2回ぐらい日本のトイメーカーとカスタムショーでコラボしたことがある。ガーガメル、Koji Harmon、Datadubとか。ぜひMicromanかM.U.S.C.L.E.* のコラボをやってみたい。

* アメリカ版のキン消し。宇宙からやってきたミクロのレスラーという設定に変更されたが、果たして原作に近づいたのか離れたのかよく分からない、公式なのにパチモンのようなトイシリーズ。

個展のプロフィールの一部の日本語がひどい機械翻訳になっていますが、逆にパチモン感が出ていいですね。

ハハハ、別に意図的にそうしたわけじゃないんだけど結果オーライ。ドジらないとSUCKADELICの味が出ないよね。

自称悪党のわりに気さくな人ですね。

アメコミに登場する分かりやすい悪役とはわけが違う。何があっても自分の意思を貫き、さらなる高みを目指す。例えば根っからのいい人だとしても、腐った世の中に押しつぶされやり過ごすために悪行に手を染めざるをえなくなる。悪知恵に計画性を備え、自己利益を追求するヤツが本物のSUPER VILLAIN(超悪党)。ほとんどのヤツは自己中だけど、その醜い自分を自認する勇気があるヤツはほとんどいない。

SUCKLORD はマリファナ常習者だと伺っています。アメリカでは当たり前かもしれませんが、日本では悪役どころか重犯罪者扱いですよ!

退化的かつ無知な国策だ。まるで20年前のアメリカの亡霊のようだ。JUST SAY NO!* とかね。もし現代人がお酒とマリファナを同時に発見したら、マリファナは市民権を得てお酒は禁止になるだろう。危険性じゃなく世間体の問題だ。
マリファナは意識を拡大させるドラッグで、自分の心と向き合わされるんだ。権力者は自ら覚った市民を恐れ、弾圧する。

* 1971年に世界中で勃発した麻薬戦争のイカすキャッチコピー。「ダメ。ゼッタイ。」の原型だと引き合いに出される。

版権元はうるさくないですか?

幸い差し止めを食らったことがないんで断言できないが、おそらく商売仇じゃないからだと思う。ルーカスはゲイのストームトルーパーを出さないだろう?いや、出せない。あいつらができないことを代わりにやってあげてるんだ。
それに、「ゲイのストームトルーパーを差し止めた」って汚点を残したくないよね。

そういえば、ゲイのストームトルーパーが登場する GAY EMPIRE というトイシリーズで大ブレイクしましたよね。原作ではストームトルーパーはクローン人間だという設定ですが、どうしてゲイになったのでしょう?遺伝環境論争になりますが。

そこまで細かい設定は考えてなかった。まず一風変わったSTORM TROOPERを作りたいという思いつきだけがあって、じゃあピンク色にしようと。で、ピンクだからゲイだという意味かって?ご想像にお任せしよう。

スターウォーズのファンはどんな細かい設定でも熱く語りたがるのでつい・・・

そうそう、スターウォーズはファンの脱構築を受け入れるシリーズだ。アートもその感じ。曖昧で、解釈の余地を持たせる。だからスターウォーズとアートの相性が抜群なんだ。

SUCKPANEL GRANDE のパッケージに書いてあるフレーズ : “How the Fuck can you not like? Star Wars the Fucking Force Awakens Asshole!” (「フォースの覚醒」を観てワクワクしないクソ野郎の気が知れねぇ ! )。正直言って僕はあまり好きではなかったんですが、僕はクソ野郎ですか?

キミは哀れなヤツだな。別に説得する気はないけど、まあ確かに新三部作はキツかった。でもフォースの覚醒は完全にキマった。子供の頃から大切だったスターウォーズが、ノスタルジーの枠を飛び越え今現在でも話題を呼ぶなんて、最高に幸せだ。

日本でも大ヒットしましたね。やっぱりポップカルチャーには国境を越える親しみやすさがありますね。

俺にとって日本のAVは親しみやすかった。内容が不思議でしょうがない。だって、ビチグソを堂々と見せておきながら、マ○コをモザイクで隠してんだぜ?その矛盾を突き止めたい。それこそ日本人の心理を表してんだろう。
AVの細かいジャンル分けは収集癖と密接していると思う。その点をつなげれば、今度面白い作品ができそうな気がするんだ。

SUCKADELIC BOOTLEG TOY COMPANY COMES TO JAPAN!
場所:GALLERY TARGET
会期:2016年3月25日(金)から4月15日(金)
12:00~19:00(日・祝休廊)
住所:東京都渋谷区神宮前2-32-10
TEL:03-3402-4575

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