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PUBLIC ENEMY、NAS、ERYKAH BADUがヒップホップの歴史にもたらしたものとは?

'90年代を中心に'80年代から'00年代にかけて一世を風靡した彼らは、単に音楽シーンを代表するアーティストというだけでなく、ヒップホップ・シーンそのものにも大きな影響を与え、今現在に続くヒップホップ・シーンの歴史を作り上げてきた、超重要なキーパーソン達なのである。

9月20日(土)に千葉県幕張海浜公園にて開催される『StarFes.'14』にてメインアクトとして出演することとなったパブリック・エナミー、ナズ、エリカ・バドゥの3組。おそらくこの3組が同時に一つのイベントに出るのはアメリカ本国でも希(まれ)であり、'80年代、'90年代からアメリカのシーンを追ってきたヒップホップ・ファン(及びブラックミュージック・ファン)にとっては、夢の共演とも言えるラインナップであろう。

'90年代を中心に'80年代から'00年代にかけて一世を風靡した彼らは、単に音楽シーンを代表するアーティストというだけでなく、ヒップホップ・シーンそのものにも大きな影響を与え、今現在に続くヒップホップ・シーンの歴史を作り上げてきた、超重要なキーパーソン達なのである。

'70年代にニューヨークのブロンクスにて生まれたヒップホップというカルチャーの中で、ラップ及びブレイクビーツという音楽はレコードという媒体を通して'70年代後半から'80年代にかけて一気に全世界へ広がっていくことになる。その一翼を担ったのがリック・ルービンとラッセル・シモンズの二人によって設立され、現在も多数のヒップホップ・アーティストを擁するレーベル、デフ・ジャムであり、L.L.クール・J、ビースティ・ボーイズに続く同レーベルの看板アーティストとして'87年に1stアルバム『Yo! Bum Rush the Show』によってデビューを果たしたのがパブリック・エナミーである。 ボム・スクワッドという自らのプロデュースチームが作り出すノイジーでアグレッシブなサウンドに加えて、リーダーであるチャック・Dを軸に、フレイヴァ・フレイヴ、プロフェッサー・グリフという3人によるアジテーションのようなラップは、瞬く間に多くのファンを獲得。また、スパイク・リーが監督を務めた'89年公開の映画『Do The Right Thing』のテーマ曲としても使用された「Fight The Power」に代表されるように、彼らのリリックにはマイノリティであるアフリカ系アメリカ人としての社会的なメッセージが強く込められており、彼らの作品と存在そのものは大きくアメリカ社会に影響を与えた。 勿論、パブリック・エナミーの登場以前にも社会問題をテーマにしたラップは存在していたが、彼らの社会への影響力の大きさは群を抜いており、ヒップホップが政治的な力を持ち、社会を変えることが出来ることを世に知らしめ、黒人のみならず多くの若者の意識を変えた先駆者としての功績は非常に大きい。

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パブリック・エナミーが3rdアルバム『Fear Of A Black Planet』、4thアルバム『Apocalypse '91…』によって一つの頂点を迎えた'90年代前半、ヒップホップ・シーンはいわゆるゴールデンエイジ(黄金期)と呼ばれる時期を迎えることとなる。東ではトライブ・コールド・クウェスト、ギャングスター、ウータン・クランらがシーンを席巻し、西からはファーサイドやスヌープ・ドッグなども登場するなど、毎月のように様々なヒット曲とスターが生まれていき、シーンの無限の可能性をもった広がりは、同時にヒップホップ・シーンそのものにある種の混沌をもたらしていた。

そんな中、'94年にリリースされたナズのデビューアルバム『illmatic』は、ヒップホップそのものを改めて再定義した作品となった。言い換えればニューヨークこそがヒップホップ誕生の地であるという、ヒップホップというカルチャーの原点回帰というものをアルバム一枚によって見事に成し遂げたのだ。 ニューヨーク・クイーンズの“プロジェクト”と呼ばれる低所得者向け住宅にて育ったナズは、若干16歳にして'91年リリースのメイン・ソース「Live At The Barbeque」への客演で鮮烈なデビューを飾り、その3年後にはDJプレミア、ピート・ロック、ラージ・プロフェッサー、Q・ティップといった当時ニューヨークで活動する最高峰のプロデューサー勢を従えた'90年代ヒップホップの最高傑作『illmatic』を発表する。 80年代初期のブロンクスを舞台にしたヒップホップムービー『Wild Style』のテーマ曲からのサンプリングによるイントロ曲「The Genesis」によって幕を開ける『illmatic』は、各曲のトラックの素晴らしさは勿論のこと、自らのストリートライフを背景としたハードな世界観と同時にコンシャスな視点、さらに哀愁をも兼ね備えたナズのリリシストしての才能が爆発しており、全10曲、トータル約40分というサイズでは計り知れない大きな厚みを持ったこの作品は、当時のヒップホップ・シーン(特にアーティスト達へ)に大きな影響を与えた。 すでにアメリカ本国では<Rock The Bells>や<Coachella>といった大規模なフェスでナズによる『illmatic』のスペシャルセットは行なわれてきたが、アルバム発売20周年という大きな節目を迎えたこの年にナズが『StarFes.'14』のステージにてセットを披露することは非常に意義深く、日本のファンにとっても大きな意味を持つ体験となるだろう。

'90年代後半に入り、ヒップホップシーンはさらに拡大を続け、音楽産業の中で確固たる地位を築くまでになる。しかし、その一方で商業的な側面だけでなく、純粋に芸術としての強い方向性を目指すクリエイターも多数現われており、その象徴とも言えるのが、ザ・ルーツのクウェストラヴを中心にアーティストやプロデューサーによって結成された集団、ソウルクウェリアンズである。そして、ある種のムーブメントを生み出したソウルクウェリアンズに唯一女性として参加していたのがエリカ・バドゥである。

ザ・ルーツをプロデューサーとして迎えた'97年にリリースされたアルバム『Baduizm』によってにデビューを果たし、ディアンジェロらと共にネオ・ソウル(=ソウル/R&Bにヒップホップやジャズが融合されたジャンル)を象徴するアーティストとなった彼女だが、'00年リリースの2ndアルバム『Mama's Gun』ではソウルクウェリアンズのクウェストラヴ、J・ディラ、ジェームス・ポイザーらがプロデューサーとして参加し、結果、ディアンジェロ『Voodoo』と並ぶネオ・ソウルの最高傑作に数えられる作品となる。

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ちなみにエリカ・バドゥの最新2作『New Amerykah Part One(4th World War)』、『New Amerykah Part Two(Return of the Ankh)』ではクウェストラヴ、J・ディラに加えてマッドリブ、ナインス・ワンダー、サーラーといった面々がプロデューサーとして参加しており、作品を重ねるごとにそのヒップホップ濃度はますます濃くなっている。そして、残念ながら'06年に亡くなったJ・ディラが現在のLAを中心としたビートシーンのアーティスト達に多大な影響を与えたように、ソウルクウェリアンズの試みは今の音楽シーンにも脈々と引き継がれている。

そんな彼ら3組のアーティストによる、ヒップホップシーン/音楽シーンへの多大な影響と貢献という歴史も噛み締めながら、是非、『StarFes.'14』でのステージを楽しんで欲しい。

Nas/タイム・イズ・イルマティック

9月13日(土)より渋谷シネクイント、シネ・リーブル梅田ほか、全国順次ロードショー予定

監督:One9 / 脚本・製作:エリック・パーカー
出演:Nas、オル・ダラ、アリシア・キーズ、Q・ティップ、バスタ・ライムズ、ピート・ロック、DJプレミア、ファレル・ウィリアムス、他
2014年/アメリカ/カラー&モノクロ/74分/デジタル
(C)COPYRIGHT ILLA FILMS, LLC 2014
『Nas/タイム・イズ・イルマティック』公式サイト
レーベル公式サイト

NAS / Illmatic XX

ナズ / イルマティックXX Now On Sale! SMJ/SICP-4166-7/¥3,240(tax incl.) デジパック仕様/文ライナーノーツ訳/解説:小林雅明/歌詞・対訳付き/2CD Amazon/iTunes

StarFes.’14

2014年9月20日(土)@幕張海浜公園 StarFes.’14 特設会場(千葉県千葉市)
OPEN 9:30/START 10:30/CLOSE 20:00

LINE UP
NAS “illmatic 20th anniversary special set”
ERYKAH BADU
PUBLIC ENEMY
MARK FARINA
BOREDOMS
DJ KRUSH
the band apart
ZAZEN BOYS
and more…

TICKET
一般前売 1次 ¥8,000 SOLDOUT!
一般前売 2次 ¥10,000 各プレイガイド 及び 店頭にて発売中!
イープラス限定 VICE Tシャツ付き 13,000円 イープラスにて発売中!

イープラスローソンチケットチケットぴあ
クラベリアiFLYER E-TICKET(日本語/English)
TOWER RECORDS 渋谷/HMV record shop 渋谷/SHIBUYA TSUTAYA/岩盤/ディスクユニオン 渋谷クラブミュージックショップ/ディスクユニオン 新宿本館 6F インディ/オルタナティヴロックフロア/ディスクユニオン 新宿クラブミュージックショップ/ディスクユニオン 下北沢店/JET SET 下北沢店

注意事項
※当イベントは、20歳未満の方のご入場は一切お断りさせていただいております。チケットご購入の際は十分にご注意ください。
※当日、入場の際に全ての方にIDチェックをさせていただきますので、運転免許証・パスポート・住民基本台帳カード(写真付きのみ)・外国人登録証のいずれか(コピー不可)をご持参ください。
※出演アーティストの変更等による払い戻しは行いません。
※雨天決行・荒天中止
※会場に駐車場はありません。

主催 : TBS / Vice Media Japan 株式会社
後援:WOWOW / FOX / MTV / 千葉市

★チケット情報はコチラから
★StarFes.’14オフィシャルサイト
★VICE Japan「StarFes.’14」ページをチェック!

Text by Kiwamu Omae