2015-2016
渋谷カウントダウンの愚行
Photos by Keisuke Nagoshi

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2015-2016 渋谷カウントダウンの愚行

2015年12月31日から2016年1月1日にかけて、渋谷を舞台に繰り広げられたカウントダウンの模様をフォトレポート。デモか暴動、あるいはテロでも起こるのではないかと感じさせるほど、帯びただしい数の警察官、機動隊が配備されている。そんななか集まった若者は、何を思い、何を考え、どのような行いのもと、新年を迎えたのだろうか?

2015年12月31日21時。明治通りを原宿方面から渋谷へと向かう。車の交通量、街行く人々、ネオン、物音。明らかに、いつもの渋谷とは異なる粛々とした光景に違和感を覚えながら、毎年様々なメディアで報じられるような出来事が今年も起こるのか、半信半疑のまま、スクランブル交差点に到着する。

警視庁の発表によると警察官、機動隊合わせて数百名ほどが配備されているとのことだが、いつもより歩行者が少ないこの場所で、テロや暴動、どのような恐ろしい事件が起こるのかと想起してしまうほどの物々しい警戒態勢。その人数も、おそらく500人から1000人は出動しているのではないかと感じるほど。もし、この肌感が正しければ、石垣市に自衛隊が配備された際の予定人数と同等か、それ以上になるから驚きだ。

22時、持ち込まれたバリケードとテープが貼り巡らされ、スクランブル交差点や、センター街の入り口など、徐々に封鎖地帯が広がっていく。駅に向かう人々も、スクランブル交差点から離れた地下鉄の入り口や、モヤイ像のある西口、東口などに迂回するしかない状態に。

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23時。スクランブル交差点付近には、異様な数の警察官と、報道関係者、そして通行禁止地域内にある店で働く従業員、そして、その地帯にある店に予約している人しか入れない状態となる。次第に通行を妨げられた歩行者の苛立ちが募っていく様子を感じながら、街を徘徊すると、センター街の中心くらいだろうか。カラオケ館、マクドナルド、ABCマートがある交差点にバリケードが貼られ、これより先、駅方向、ハチ公口には直接向かうことができない。別に何があるわけではないが、人が密集している。

23時半を過ぎたあたりだろうか。このセンター街の交差点に、ますます人が集まってくる。やがて、どこからともなく、奇声をあげたり、ゴミ箱の上によじ登る人々を中心に雄叫びをあげる者が見受けられる。おそらく大多数が10代後半から20代の地方出身者だろう、不良でも荒くれ者でもない極々普通の日本人と外国人観光客。しかも泥酔している様子はほとんどない。

その頃、テレビの地上波では、そんな若者には、ちぃっとも面白くないだろう時代遅れの番組が放映されている。初詣や初日の出は興味もないだろうし、後からでも行ける。また、各クラブで行われているカウントダウンのイベント、クラブミュージックの類にも興味がないのだろう。そもそも、なぜ渋谷なのか、他の街、例えば新宿の歌舞伎町や六本木などはおっかない大人が多いし、なんて思いを巡らせていると、群集の熱気が徐々に高まっていくのが感じられる。

正確な時間なんて関係ないのだろう。24時より数秒早く、または数秒遅れて、新年を祝う?雄叫びが所々から聞こえ、ある者はシャンパンをあけシャンパンファイトならぬ、1本のシャンパンを撒き散らし終了。爆竹がパパン、パパンと鳴り響くが、2、3発の軽音。

そこに1台、ポリスネイビーに塗装された警察車両が、この交差点に進入してくる。それに対して若者たちはグラングランと車を揺らし始めると、それを見た周りの群集はより一層盛り上がる。さらに一人の男性がそのバンの上によじのぼり、熱気は最高潮に達する。

警察官も熱くなっているのが感じられる。「こいつら全員確保だ」と意気込み怒号を発するものも出てきて、鎮圧に向かう。若者同士の1組か2組か軽い小競り合いを目撃するが、すんなり治まり大事には至らない様子。結果、警察と小競り合いを起こしたのだろう、5名の逮捕者が出る。約1時間ほどの暴動?お祝い?は、警察が制圧したこともあり収まっていく。

周辺に場所を移すと、人ごみを確認できるが、そこまで盛り上がってはいない。依然スクランブル交差点は閑散とした状態が続く。

やがて26時を過ぎると、スクランブル交差点の通行規制も解かれ、ゴミが路上を賑わす一方で、さきほどまで街を賑わせていた警察官、若者はどこに行ったのか、と思うほど落ち着きを取り戻しつつある。その後、時間が経過するごとに何事もなかったかのような穏やかな渋谷の街へと推移し、朝を迎えた。