「私は昔から、基本的に子どもが好きではないですし、母性本能というか、子どもを産んで育てたいという気持ちがあまりないんです。」

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女性に向いていない〈女性〉

「私は昔から、基本的に子どもが好きではないですし、母性本能というか、子どもを産んで育てたいという気持ちがあまりないんです。」

女性の社会的地位、格差についての議論が増えるのと同時に、〈女性が働きやすい職場〉〈女性が輝ける社会〉〈女性がつくる未来〉を目指し、女性を応援する制度や価値観を生みだそうとする動きが社会全体に広がっている。だが、ここでいう〈女性〉とは、果たしてどんな女性なのか。女性に関する問題について真剣に考えている女性、考えていない女性、そんなのどうでもいい女性、それどころじゃない女性、自分にとって都合のいい現状にただあぐらをかいている女性。世の中にはいろんな女性がいるのに、〈女性〉とひとくくりにされたまま、「女性はこうあるべきだ」「女性ガンバレ」と応援されてもピンとこない。

「いろんな女性がいるんだから、〈女性〉とひとくくりにしないでください!」と社会に主張する気は全くないし、そんなことを訴えても何にもならない。それよりも、まず、当事者である私たち女性ひとりひとりが「私にとって〈女性〉とは何なのか」本人独自の考えを持つべきではないのか。女性が100人いたら、100通りの答えを知りたい。

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ぽこ

「女性とは」と考えたことはありますか?

自分が女性であることについて、考えたことはないですね。 生理が始まったり、ブラジャーを付けないといけなくなったときに、自分が女性だということを少しは意識したかもしれないですけど、性別はもって生まれたものですからね。性別に違和感があれば意識するんでしょうけど、生まれつきのものとして、あえて考えたことはありませんでした。

当たり前のこととして、女性という性別を受け入れてきたということですね。

そうですね。でももし生まれ変わるとしても、女性がいいです。女性のほうが楽だから。私は働くのがあまり好きではないので、もし男性に生まれていたらもっと真面目に働かなくてはいけないじゃないですか。もし私みたいな考えの女性が大勢いたら、女性の社会進出は確実にダメになるでしょうね。

働くのが好きではないのはなぜですか?

なぜでしょうね。私の母はバリバリ働いて、同時に子育ても両立するようなひとでしたけど、私は働くよりも自分の好きなことをやりたいタイプです。昼寝したり、美味しいものを食べたり、ゲームをしたり。全然建設的じゃないですね。

小さい頃から、働いている自分は想像したことがなかったんですか?

子どものころは、漫画家になるのが夢でした。私がまだ幼稚園児だったときに、父が『少女フレンド』という少女漫画を買ってきたんです。当時はまだ文字が読めなかったので、おそらく絵を眺めるだけだったんでしょうけど、少女漫画にかじりつく姿をみた父は、新刊が発売されると毎回買ってくれるようになりました。高校生になってから本格的に漫画を描き始めて、自分でも結構自信作の漫画が、コンテストの最終選考まで残ったんです。でも結局落選してしまい、自分にはこれ以上の漫画は書けないだろうな、と急に冷めて辞めました。

漫画家という目標を失って、高校卒業後はどのような進路を希望したんですか?

高校時代は漫画も描きつつ、米国に住んでいた父のお姉さんの影響で英語に興味をもちはじめた時期だったんです。県下一斉の学力テストで、英語の成績が学年でいちばん良くて、英語をもっと勉強したいと考えました。

秀才だったんですね。

いや、そんなことないです。そのときの学力テストで、数学は0点でしたから。 褒められるとやる気が出るタイプというか、狭い世界ですけど、高校の漫画同好会のなかでは漫画も上手いほうでしたし、学力テストで良い点が取れたから変な自信がついてしまって、自分は翻訳家になれると思いこんだ時期もありました。

英語も途中で挫折したんですか?

留学もしましたけど、英語が役に立ったのはクイーン・エリザベス号の乗務員として働けたことくらいですね。私はとにかくズボラで、野心や向上心もなかったし、自分の生活のなかで満足しているタイプなんです。本当に行き当たりばったり、その瞬間自分が熱中できる道を突っ走るだけだったので、人生設計なんてまるでありませんでした。

女性だから、いざとなったら結婚して養ってもらえばいい、という考えがあったんですか?

いや、それはあまり考えていないですね。たとえ自分が男性だったとしても、ただその日を楽しく生きるという性格は変わらないだろうし、むしろ男性だったら、もっと悲惨でしょうね。定職もないし、きっと結婚もできなかったでしょうし。旦那さんと結婚できたという点においては、自分は女性で良かったです。

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旦那さんと結婚できたこと以外は、自身にとって女性とは意味のないことですか?

ないですね。生理も煩わしいし、物心がついた頃から太っていて、胸なのか肉なのかはわからないけど、胸が大きいことをからかわれたりするのが気持ち悪かったし、本当に苦痛でした。なのでなるべくダボダボな服を着て、女性らしいというか、体型が目立つ格好は避けて。社会進出を目指している女性は、女性だからと何かを諦めたり、損をした経験がすごくたくさんあるのでしょうけど、私はそれがない分、本当に身体的なことだけですね。改めて考えると、自分は女性に向いてない人間なのかもしれないです。

どういう意味ですか?

私は昔から、基本的に子どもが好きではないですし、母性本能というか、子どもを産んで育てたいという気持ちがあまりないんです。結婚した当初は子どもができたらいいなという想いもありましたけど、それもいつのまにかすーっと冷めました。自分が子どもを産んでいないので「女性は絶対子どもを産んで育てるべき」という価値観もあまりないですし、産みたいひとが産めばいいんでしょうけど、私はあまり女性に向いてないのかもしれないなと。かといって、男に向いているわけでもないんですけどね。

周囲から「子どもは?」と訊かれたときはどう答えていましたか?

結婚して数年は、やはり結構訊かれましたけど「まだなんですよ」とさらっと返してましたね。それよりも、ダボっとした服を着ていて妊婦さんと勘違いされることのほうが嫌でしたね。当時は顔もそんなに丸くなくて、胴体だけが太っていたので勘違いされたんでしょうけど、店員さんから「おめでたですか?」と話しかけられたりすることもしょっちゅうでした(笑)

〈女性は子どもを産み育てる〉も含めて、男性と女性それぞれ役割はあると思いますか?

ないですね。やはり私自身子どもを産んでいないので、子どもを産むのが女性の役割だとは考えたことがないし、女性もそうですけど男性も、役割から解き放たれて自由に生きられればいいですけどね。女性は仕事も育児も頑張って、と応援する社会は役割の押し付けといえばそうなのかもしれないですけど、実際子育ては大変だから、応援されるのだろうなと。私は経験していないので想像するしかないですけど。

やはり、自身が子どもを産んでいないということが大きいんですね。

それは大きいですね。今年から、ペットを飼いはじめたんですよ。同居している母の笑顔がすごく多くなったし、私自身も喜怒哀楽が激しくなったというか、この子と暮らすようになってから、嬉しくなったり怒ったり切なくなったり、感情をわっと出す局面が増えたんです。でも、飼いはじめたころは夜鳴きがひどくて、部屋じゅうに排泄されてしまったり、とにかく手がかかりました。子育てを経験していれば、もっとおおらかな気持ちでいられたのかもしれないな、と。

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かなり余裕のない状態だったんですか?

とにかく朝から晩までこの子のうんちの世話をして、飼ったことを毎日後悔していましたし、もうこの子を抱えて一緒に死んでしまおうと考えたこともありました。母も旦那さんも心配させたくなくて、ギリギリまでひとりで耐えて、そのうち食欲がなくなって頭痛がひどくなり、結局8kgほど痩せました。母は私が痩せたことに気づいてませんでしたけど(笑)

どうやって立ち直ったんですか?

自分の症状を調べたら〈育犬ノイローゼ〉といって、同じような症状に苦しむひとがいると知りました。思いきって旦那さんに打ち明けたら、5日間ほど会社を休んで、ずっと一緒にいて面倒をみてくれたんです。それから、この子の夜鳴きも徐々におさまりました。しばらく経ってから母に全部話したら「もっと頼っていいよ」といってくれて、私ひとりではなくて、旦那さんと母と3人で分担して育てていけばいいんだ、と安心しました。子育ては何十倍も大変でしょうから、命を預かるというのは本当に大変だことだと学びましたね。

子どもを産む、産まないに限らず、女性はどのような選択をすれば幸せに生きられるでしょうか?

やはり自分の好きなように生きないともったいないです。自分の好きなことができるのは、せいぜい60歳くらいまでだろうから。私がそういう価値観を抱いてしまっているのかもしれないですけど、男性はとりあえず大学を卒業して、できれば長く就職するのが良しとされるというか。今の社会では、まだ女性のほうが自分の人生を好きに生きやすい気がするんですよね。私は性別をただの〈分類〉としか受け止めていないし、私は女性に向いてないけど、〈女性らしくない〉道を選びやすいのも女性だからなんじゃないかな。