戦争の傷を癒し続けるバグダッドの医師たち

戦争により精神的に病む人や、環境汚染の悪化から感染症を抱える人、そしてテロ犠牲者など、患者は増え続ける一方、イラク政府はISとの戦闘資金に財源を確保するため、保健省の予算を削減した。不足する病院と医師。イラクの医療事情をレポート。

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16 April 2016, 3:55am

イラク共和国首都バグダッド。今年に入ってから、ISによる自爆テロ事件が相次いで起こっている。1月11日には、ショッピングモールなど4カ所で爆発があり、50人以上が死亡。2月28日には、北部サドルシティーで70人以上が死亡。さらに3月6日には、爆弾を積んだトラックが近郊の検問所に突っ込み、自爆して60人が死亡。また、3月25日には、バグダッドの南イスカンダリーヤのサッカー場で、1人の男が自爆。イスカンダリーヤ市長を含む30人が死亡した。それぞれの事件について、ISは犯行声明を発表。宗派が混在するバグダッドの中でも、スンニ派のISは、今後もシーア派地区の攻撃を続けると表明している。

3月6日、爆弾を積んだトラックが検問所に突っ込んで自爆した。Photo by Khider Abbas/EPA

この30年、バグダッドは常に戦争に振り回されてきた都市だ。1980年からのイラン・イラク戦争、1990年のクウェート侵攻と、それをきっかけに始まった湾岸戦争、そして2003年のイラク戦争とアメリカ軍の介入。2011年12月にアメリカ軍の完全撤収によって、オバマ大統領はイラク戦争の終結を正式に宣言したが、アメリカへの反発、複雑な宗教・民族構成、さらにISの台頭もあって、現在も政治は不安定であり、治安も悪化している。

イラク戦争後、アメリカは、イラクのライフラインの復旧と拡大を約束していたが、未だそれは十分に成されていない。特に病院、医師の不足は、早急に解決しなければならない問題であり、バグダッドは大変な窮地に立たされている。30年続いた戦争により精神的に病む人や、環境汚染の悪化から感染症を抱える人、そしてテロ犠牲者など、患者は増え続ける一方、イラク政府はISとの戦闘資金に財源を確保するため、保健省の予算を削減。さらに医療関係者の徴兵、医師への不当な扱いなどから、イラクを離れる医師も増え続けている。

フセイン前大統領は、自ら築いた医療制度を湾岸戦争で無駄にしたが、現政権も国民の健康を犠牲にしてISとの戦いを続けている。バグダッドの医師を訪ね、混迷を極める現在のイラク医療事情をレポート。

原題:DOCTORS IN BAGHDAD(2015)