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DASHBOARD CONFESSIONALが江盛バイバルについて語る

「カーボンコピーのカーボンコピーみたいなバンドもどんどん現われた。僕は、また同じことが起こらないよう望んでいる。今度もそうなってしまうかもしれないけど、今のところその可能性は低いようだね」

2010年頃からアメリカを中心にジワジワと盛り上がって来た「エモ・リバイバル」。でもスクリーモやらラウド・エモやらピコリーモ(笑!)やらに、散々落とされまくって来ましたから「エモ・リバイバル」なんつってもまったく信用しなかったワケです。でも聴いたらぶっ飛んだ!だって90年代~00年代前半まんまの音だったからー!「江盛バイバルさん」ハイ、ウェルカムです!で、現在も江盛さんたちはがっちり動いてます。欲張りせずに、等身大のまま活動しているのが功を奏しているのかもしれませんね。ただやっぱ「まんま」なところが不満といえば不満かなぁ。アメフトもミネラルも復活しちゃったんだから、ぜひともオリジネイターを越えるニュー・エモくんたちに出会いたいものです。

さてそんなオリジネイターの一人であるDASHBOARD CONFESSIONAL a.k.a. クリス・キャラバは、最近になってこの「エモ・リバイバル」に気付いたそう。そこで彼に現在のエモをまとめてレビューしてもらいました。相当お気に召したご様子です。

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DASHBOARD CONFESSIONALの広報担当からメールが届いた。「彼に何を見せたのですか?そのことばかりずっと彼は話しているし、更にあなたにもっと聞きたいことがあるようなんです」…やっぱりね。この日の午前、僕は自分のサイト「Washed Up Emo」用にパイオニアであるDASHBOARD CONFESSIONALことクリス・キャラバへインタビューを行なった。クリスは、彼のフォーク・プロジェクトであるTWIN FOLKSのプロモーション中だったのだけれど、インタビューの最後に少しだけ時間が余ってしまったので、将来有望なエモ・バンド、FOXINGのビデオを彼に観せることにした。するとクリスは確実にそのビデオに心を奪われた様子。最初のコーラスが流れると、彼の目は興味と驚きで輝き出し、僕を凝視しながらこう言った。「ちょっと待って!この手の音楽、また盛り上がって来てるの?」

21世紀に入ってエモというジャンルは、安直な言葉と共にマーケットに供給され続けた。結果、まったく別のものとして定着してしまったのだが、ここ数年、いわゆるオリジナル・エモを感じさせるシーンは、上品な大衆的ポップパンク・シーンからは意識して離れる動きを見せていた。そんな動きが2010年頃に本格的に始まった「エモ・リバイバル」である。インディペンデント・シーンに関わる多くの人間にとってこのリバイバルは、リアルに肌で感じることが出来る現在進行形のシーンだ。しかし、オリジナル・エモ・シーンの先駆者の一人であるクリス・キャラバは、このような状況に気づいていなかったのである。

僕は彼に「今聴くべきエモ・バンド」のプレイリストを送った。そしてクリスは現在のシーンに強く刺激され、再びエネルギーを吸収したようだ。

「本当に驚いたよ!神のお告げみたいだった!!」

ALGERNON CADWALLADER "SPIT FOUNTAIN"

この曲、僕は「ストリンギー」って呼んでる澄み切って張りつめたギター・スタイルと、ローファイなパーカッションのループから始まる。このイントロを聴いたとき、僕は初期THE PROMISE RINGの「Horse Latitudes」や、TEXAS IS THE REASON、RECESS THEORYなどを思い出した。僕はこの曲にこれらのバンドの魂を感じる一方、更に刺激と若者らしいスピリットを感じたよ。あとコナー・オバーストのCOMMANDER VENUSとかね。とにかくこの曲はシンプルでパワフルだし、何度も大音量でリプレイしたくなるね。

BALANCE AND COMPOSURE "REFLECTION"

イントロのギターはシューゲイザーのSLOWDIVE、そしてTHE STONE ROSESなどを思わせながら、JETS TO BRAZIL級のクオリティーを備えていて、最高の「loud quiet loud」バンドの一つであるHUMを想像させてくれた。見事に連携したベースとドラムが、この曲の緊密なまとまりをキープしている。ベースとドラムはリバーブに埋没せず、その結果ボーカルとギターは別世界の感覚を表現している。パワフルなのに濃密な曲。

EMPIRE! EMPIRE! (I WAS A LONELY ESTATE) “HOW TO MAKE LOVE STAY”

素晴らしいメロディー・センス。そして歌詞もリズムもこのメロディーに繋がっている。メロディーありきのバンドだ。ただ普通、この手の曲ならアコースティック・ギターがしっくり来ると思う。そうだったとしても僕は魅了されていただろう。ただ、その無秩序さが彼らの強い魅力だとも思う。それぞれのパートはナチュラルに抑制されているし、カオスに陥っていないところが僕はとても気に入っている。この曲は繊細ではないと思うけど、穏やかで美しいメロディーと歌詞が組み立てられていて、各パートでの小さな意志が楽曲のまとまりに繋がっている。ダイナミックさと、反復するメロディーとの不調和が非常にパワフルだ。

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EVERYONE EVERYWHERE "THE FUTURE"

この曲はドラムとベース、そして美しくエッジの効いたギターで始まる。このシンガーは、曲頭二つの単語「displaced」と「dreams」だけで僕の気持ちを掴んだ上に、最後までそれを離さなかった。彼の声は、強さと存在感を伴いながら軽快であり、当たり前のようにファンの心を掴んでいる。この曲は緩やかなアーチ状に構成されていて、それがターンする度に僕を引き込んで行くんだ。ギター・ソロも物凄く自然に展開しているしね。SONIC YOUTHを暗示していながら、独自のメロディックな側面も主張していると思う。もっと彼の声を聴きたくなる。

INTO IT. OVER IT. "DISCRETION & DEPRESSING PEOPLE"

彼らの音は、どんな時代においても僕が好きになる、すべての要素を備えている。素晴らしい歌詞には、ちょっとした悪意があるにしても、それは思考を刺激するものであってまったく問題ない。そして彼の声はそんな歌詞にマッチしている。各パートの旋律は、オーディエンスにクラウド・サーフをさせ、ステージに上げることを意識しているようだ。僕の中には、Into It. Over it.との相似が確かに存在している。だからこそ彼らとの繋がりを感じるし、だからこそ僕は大ファンになったんだ。ただし彼らが似ているから僕はファンになったのではなく、このバンドが恐ろしいほど最高なメンバーたちの集まりだってことは忘れないでね。

LA DISPUTE "SUCH SMALL HANDS"

絶望的な響きがある。それはなぜか心地良いんだけど。僕がSMALL BROWN BIKE、CURSIVE、mewithoutYouが好きなのも同じ理由からなんだ。今にも間違った方向に進んで行ってしまいそうな何か。しかも壮大な方法でね。彼らはそんな感情を響かせている。こんな経験に出会うことは、そうそうあるものではない。彼らの大ファンになった。

SNOWING "SO I SHOTGUNNED A BEER AND WENT TO BED”

素晴らしいドラムのループ。コード進行も通常のものではない。わずかに不釣り合いではありつつ幻想的でもある。シンガーの声には、僕の好きな…例えばTHE PROMISE RINGのデイヴィーと共通の質感がある。それに加えて、コンポーザーなら誰もが感じる「これだよ!とてもシンプルだけど完璧なフレーズの言い回し…こういうのを書いてみたかったんだ!」という感覚を与えてくれるんだ。この曲の一節「…a minor case, major depression」を聴いた僕は、プレイリストを止めて、暫くの間、自分のギターを手にしていたよ。SNOWINGは刺激に満ちている。

THE FRONT BOTTOMS "TWIN SIZE MATTRESS"

こいつらとは付き合いがあるし友達だから、僕の客観性が疑われることはわかっている。でもみんな落ちついて聞いて欲しい。彼らは音楽史上最高のバンドだ。今度彼らを観に行って、そこに売っているものすべてを買ってみて。

THE HOTELIER "THE SCOPE OF ALL OF THIS REBUILDING”

この曲を聴いて僕の髪の毛は逆立った…ま、元々そんな髪型なんだけど。この曲はパワーに溢れたハーモニーと荒々しいボーカルの最高傑作だ。本能的に反応をせざるを得なかった。うん、否定しようもない事実だ。SAVES THE DAYの「Can’t Slow Down」を何回も何回も聴き直したときのことを思い出した。そう、あの感覚。この曲の構造は裏表になっていて、僕はそれが非常に気に入っている。最初のパートに全ハーモニーが入っているなんて、通常では考えられないやり方だ。曲の最初から「俺たち全員で歌おうぜ」ってね。このリストの中では、確実に上位に入る曲だよ。

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THE WORLD IS A BEAUTIFUL PLACE AND I AM NO LONGER AFRAID TO DIE "HEARTBEAT IN THE BRAIN"

この曲は、即座に僕のフェイバリットになった。不思議な輝きに満ちている。奇妙なのに親しみやすい魅力を持っている。最初に聴いたときに数えてみたんだ。少なくとも5つのジャンルが融合されていると思う。その恐れのなさが本当に気に入った。PIEBALDもこの点では信じ難いようなバンドだったね。このバンドは非常に多くの音楽スタイルを愛していて、ひとつを選ぶべき理由が見つからなかったと思う。でもそれが正しいんだ。僕にとって特筆すべき歌詞は"When you hold me, I feel held”だ。僕は曲を止めて、このリリックの強さと、そこから僕が導き出せる数多くの意味について考えてみた。本当に僕はこの曲に圧倒されてしまったんだ。

YOU BLEW IT! “MATCH & TINDER”

この曲にはポスト・ハードコア・シーンのスピリットが息づいている。僕はこのボーカルと歌詞の勇気、荒々しさが気に入っている。このバンドはハードコアとポップパンクの間にあって、どちらにも偏ることなく、うまくバランスを保っている一方で、遥かにその上を行っていると思う。このバンドのグルーヴには、様々な面で大きな評価を得ているNEW FOUND GLORYの影響を感じさせるんだけど、単にそれをベースにしたバンドとするのは間違っている。確実にこの曲は、心臓の鼓動になっているんだから。

このリストは僕への問いかけでもあった。僕にとって意味があるものと、このリストにはどういう関わりがあるのだろう? 僕のキャリア、それを形造ってきたもの、音楽ファンとしての世界…他にもイロイロあるけど、全てが前進している。僕はこれまで、いろんなものから刺激を得て、曲を書いて過ごしてきた。すべての音楽がそうなんだけど、それは以前にあった何かをベースにしていない音楽なんてない。僕もその一部であったエモ創世記以来、僕が見てきたものと同じスピードで現在の状況は前に進んでいると思うんだ。

僕はスロー・ペースになることを望んでいる。僕のすぐ後の世代は速く進み過ぎたと思うんだ。独創的でもなく、説得力にも欠けていた。僕のすぐ後の世代にもFALL OUT BOYのような、力量のあるバンドもいた。でもカーボンコピーのカーボンコピーみたいなバンドもどんどん現われた。僕は、また同じことが起こらないよう望んでいる。今度もそうなってしまうかもしれないけど、今のところその可能性は低いようだね。