〈はじめて〉をなぜ顔に? ファーストタトゥーを顔に入れた理由

最初の決断はよくよく考えて。
〈はじめて〉をなぜ顔に? ファーストタトゥーを顔に入れた理由

ファーストキスや飛び込み台からの宙返りと同じで、フェイスタトゥーも青春時代にだんだん興味が湧いてくるもののひとつだ。最初は脇腹に歌詞や、ローマ数字で母親の誕生日を入れてみる。そして肌に永遠に残る模様を刻むことに慣れてくると、最終的に行き着くのが〈顔〉だ。

その証拠が、初心者から顔にタトゥーを入れたいと依頼されたらきっぱり断る、と主張するタトゥーアーティストが複数いるという事実だ。ブライトンのタトゥーアーティスト、ロブ・レイクは、ファーストタトゥーを顔に入れるべきではない理由はごまんとあると語り、「断固反対だ」と断言する(ちなみにロブは、眉間にルーン文字、右目の下には大文字で〈MADE IT(ついにやったぞ)〉と彫り込んでいる)。

「タトゥー業界全体に対して失礼です」と主張するのは、5つのフェイスタトゥーを入れたタトゥーパーラー経営者のメンフィス・モリだ。「それに将来や恋人との関係、キャリアが台無しになるかもしれません」

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今でこそ歩くフラッシュブック(※タトゥーの見本を集めた本)のようなリル・ザンやスモークパープ(Smokepurpp)などのSoundCloudラッパーも、スターに上り詰める前は、顔以外の場所を選んでタトゥーを入れていた。

それにもかかわらず、世の中には忠告や就職のチャンスを無視して、真っ先に顔にタトゥーを入れようとする稀有なひともいる。VICEは彼らを取材し、なぜ顔だったのかを訊いてみた。

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ジェイコブ(26歳) 米コロンバス在住

──そもそも、なぜ顔だったんですか?
思い切ったことをしたかった。2年前、ちょうどヘロイン依存の更生施設を出たばかりで、楽曲制作に力を入れてた。これは「今が踏ん張りどころ」っていうステートメントみたいなもの。当時聴いていた曲のアーティストはほとんどがフェイスタトゥーを入れていて、みんな音楽業界ですぐにブレイクしたから、フェイスタトゥーを入れればもっと多くのひとに注目してもらえると思ったんだ。友だちのタトゥーショップに行って、左目の下にパックジュースを入れてもらった。友だちも顔に入れるのは初めてだったから、僕たち双方にとって新しい挑戦だった。

──パックジュースを選んだ理由は?
子どもの頃からのあだ名だったんだ。スケボーをやってたとき、両親がいつもパックジュースとかゲータレードを送ってくれてたから、みんなにジュースって呼ばれてた。パックジュースは僕の全てで、成長した僕自身を表してる。ヘロインを絶ってから4年4ヶ月になる。音楽とタトゥーに救われたんだ。

──周りの反応はどうでした?
何人かにはバカなことをやったと思われたけど、今は彼らもありのままの僕を認めてくれてる。フェイスタトゥーは5個あって、最後に入れたのは右目の上の〈Eat Shit(クソ食らえ)〉。最初のタトゥーを入れたのは思い切ったことをするためだったけど、全部気に入ってる。永遠に僕の一部だし、できるだけそのままにしておくつもり。

@garbage_youth

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ジュリアン(18歳) オーストリア インスブルック在住

──フェイスタトゥーの裏話を教えてください。
入れたのは16歳になる直前のとき。僕が育った地域はかなり治安が悪かった。というか、元々は山の中の田舎育ちなんだけど、そのあと引っ越した先で悪い仲間に出会ってしまって。だから〈俺は誰の言葉も聞かないし、相手にしないし、口を聞かない〉っていう決意をみんなに示そうと思ったんだ。それが眉毛の上に入れたドットの意味。

──まだ実家暮らしだったんですか?
うん、家族もタトゥーを入れてるし、大したことじゃなかった。学校ではいつも顔や腕に絵を描いてた。顔で自分の気持ちを表現したくて。5ヶ月前に18になったばかりだからまだ母さんと住んでるけど、友だちと過ごしたり旅行に行くことが多い。

──SoundCloudで音楽を公開していますが、フェイスタトゥーはSoundCloudで成功を収めるには必須だと思いますか?
僕の音楽はタトゥーとは関係ない。米国ではフェイスタトゥーを入れたら影響力が強まったりとか、有名になれると思うひともいるみたいだけど。でも才能がなければ、フェイスタトゥーは何の役にも立たない。僕はタトゥーを入れる前から曲を作ってた。子どもの頃からいつもドラムで遊んでて、それから歌も歌うようになった。僕がずっとやりたかったのは自己表現なんだ。エドガー・アラン・ポーとか詩にも興味がある。

@saetre.frykt

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リー(31歳) イングランド オックスフォード在住

──どうして初めてのタトゥーをそんなに目立つ場所に入れようと思ったんですか?
別に目立ちたかったわけじゃない。当時は18歳で、親友が経営するタトゥースタジオで働いてた。僕は予約を管理してたんだけど、お客さんがタトゥーを入れるのは腕、足、胸ばかりだった。着るものとか見た目がひとと同じなのは嫌だったから、タトゥーアーティストに顔に小さいタトゥーを入れてもらうことにした。このコウモリは大好きな映画『バットマン』のロゴなんだ。

──フェイスタトゥーを入れるとモデルとしてのキャリアの妨げになるのでは、という不安はありませんでした?
むしろ、フェイスタトゥーはモデルの仕事に有利だと思う。あの頃は、写真で僕みたいな表現ができるモデルはいなかった。ブランドや雑誌の仕事もできたし、ヨーロッパのいろんな都市やロンドン・ファッションウィークでもランウェイを歩いた。素晴らしい快挙といえると思うよ。

──では、フェイスタトゥーで嫌な思いをしたことはありますか?
フェイスタトゥーがあると他人にジャッジされやすい。タトゥーはアートや自己表現の一種だって理解してくれるひとはほとんどいない。でも、どんな言動をしたってジャッジするひとは必ずいるんだから、それなら自然体で好きなことをするほうがいい。

@leesmithysmith

This article originally appeared on VICE UK.